医療用具滅菌バリデーションに於けるバイオバーデン菌抵抗性の変動要因の究明

文献情報

文献番号
199800068A
報告書区分
総括
研究課題名
医療用具滅菌バリデーションに於けるバイオバーデン菌抵抗性の変動要因の究明
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
新谷 英晴(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 東隆夫(日本製薬(株)ライフテック部)
  • 三田泰弘(エーザイ(株)美里工場)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
滅菌バリデーション実施において生物指標の抵抗性(D値)の測定は滅菌保証を確保する上に於て重要である。D値測定に関しソイビーンカゼイン消化物液体培地(SCDB)あるいはソイビーンカゼイン寒天固形培地(SCDA)の何れを用いても良いとされている。それゆえ両者で得られたD値は同じでなければならないが、実際は異なる。それゆえ培地メーカーが異なることに拠りD値がばらつく原因の究明、ならびに現実的な再現性の得られる滅菌保証を達成する方法について検討した。
研究方法
培地として自作したSCDBならびに寒天の産地を変えて自作したSCDAを用いた。SCDB培地では3種類異なるカゼイン製ペプトン、3種類の異なる大豆製ペプトンから9種類のSCDB液体培地を調製した。生物指標(BI)は市販のペーパーストリップ型BI(Bacillus stearothermophilus ATCC 7953)を使用した。D値測定では蒸気加熱滅菌用BIERを用い、121.1oCで測定した。測定法はスタンボマーフィーコクラン法を用いた。滅菌後の培養温度ならびに培養期間は57.5+1oCで7日間とした。D値評価方法はISO 11138-1の規定に従い+0.5分の範囲とした。SCDAでは2種類の異なる純度の寒天からSCDAを調製した。同時に市販SCDA培地(X社、Y社製)についても試験した。BIならびにD値測定はSCDBの場合と同じだがSCDAの場合は生残曲線法を用いた。BIの初期菌数の測定は撹拌してろ紙と芽胞菌とを分離し、菌数を段階希釈し調製したSCDAで測定した。培養は57.5+1oCで5日間行った。評価方法は、D値の場合はラベル値の+0.5分を許容範囲とした。初期菌数に関してはラベル公称数のー50%~+300%の範囲とした。
結果と考察
今回調製したSCDB液体培地では有意なD値のばらつきは認められなかった。2種類の寒天を用いて調製したSCDA培地の内1種類の培地は公称数のー50%~+300%の範囲外製品であった。同時に市販SCDA培地での公称数の結果、X社製とY社製とで公称数に大きな差が生じ、Y社製は公称数のー50%~+300%の範囲外製品であった。寒天の純度の差に拠ってSCDA培地のD値は変動した。純度が高まるとD値は減少した。反対に純度が低いとD値は高く、ラベル公称値より1分以上高い場合もあった。X、Y社製SCDA培地の結果から両社での平均D値の差は1.02分あった。Y社製培地はラベルD値に近似するが公称数はISO 11138-1規格から逸脱する。つまりY社製SCDA培地は生育性能の良くない培地と言える。
結論
SCDB培地とSCDA培地を用いて得られたD値の間には有意な差が認められた。寒天の純度を変えたSCDA寒天固形培地のD値の間には有意な差が認められた。このことからD値のばらつきの原因が寒天に由来すると推察される。寒天のどの成分に拠るのかについての確定的なことは今後の研究をまつしかない。同時に今後大豆製ペプトン消化物メーカーあるいは消化時間を変えてD値ばらつきを確認する必要がある。自作SCDBと自作SCDAとでは得られるD値が1分以上異なる。ラベルD値を確認する必要がある場合はSCDB液体培地を用いスタンボマーフィーコクラン法でD値算出をすることを勧める。

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