文献情報
文献番号
201220019A
報告書区分
総括
研究課題名
低線量らせんCTを用いた革新的な肺がん検診手法の確立に関する研究
課題番号
H22-3次がん-一般-020
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中山 富雄(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター がん予防情報センター疫学予防課)
研究分担者(所属機関)
- 長尾 啓一(東京工業大学保健管理センター)
- 新妻 伸二(新潟労働衛生協会 プラーカ健康増進センター)
- 中川 徹((株)日立製作所日立健康管理センタ)
- 西井 研治(岡山県健康づくり財団附属病院)
- 岡本 直幸(神奈川県立がんセンター臨床研究所がん予防・情報学部)
- 佐藤 雅美(鹿児島大学医学部大学院医歯学総合研究科先進治療科学専攻循環器・呼吸器病学)
- 峯岸 裕司(日本医科大学内科学講座呼吸器・感染・腫瘍部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
低線量CTを用いた肺がん検診は、莫大な費用とマンパワーを要することもあり、安易に胸部単純X線検査の代替えとすることはできない。また、画像診断で早期に検出できない肺門部扁平上皮がんの発見のために喀痰細胞診が併用されてきたが、肺門部がんの罹患率の低下により、喀痰細胞診の併用についても再検討が必要な時期である。そこで、本研究では、1)低線量CT、単純X線、喀痰細胞
診の肺がん死亡率減少効果を測定すること、2)肺門部扁平上皮がんの罹患数の将来予測を行うこと、3)3つの検診手の特性を生かし、医療経済学的に最適化された肺がん検診システムを構築することを目的とする。効果が確立した検診を普及させるにあたっては、費用やマンパワーなどの経済的な問題を解決する必要がある。そこで性・年齢・喫煙状況などのリスク要因毎に各検診手法による肺がん死亡率を測定し、費用効果分析を行うことで、医療経済学的に最適化された対象者・検診間隔・各検診手法の組み合わせ方を明らかにすることができる。このことにより、限られた資本の範囲内で、効果を最大化させた肺がん検診システムを構築することが可能となり、高齢化の進行により更に増加すると予想される肺がん死亡の延びを食い止めることが可能になると考えられる。
診の肺がん死亡率減少効果を測定すること、2)肺門部扁平上皮がんの罹患数の将来予測を行うこと、3)3つの検診手の特性を生かし、医療経済学的に最適化された肺がん検診システムを構築することを目的とする。効果が確立した検診を普及させるにあたっては、費用やマンパワーなどの経済的な問題を解決する必要がある。そこで性・年齢・喫煙状況などのリスク要因毎に各検診手法による肺がん死亡率を測定し、費用効果分析を行うことで、医療経済学的に最適化された対象者・検診間隔・各検診手法の組み合わせ方を明らかにすることができる。このことにより、限られた資本の範囲内で、効果を最大化させた肺がん検診システムを構築することが可能となり、高齢化の進行により更に増加すると予想される肺がん死亡の延びを食い止めることが可能になると考えられる。
研究方法
(研究A,B)末梢性肺癌への低線量CTを用いた肺癌検診の評価研究のために作成したコホートを用いてコホート内症例対照研究を行った。肺癌死亡を症例とし、症例1に対して年齢・性・喫煙状況・地域をマッチさせた対照5を無作為に選択した。研究Aでは喫煙者/非喫煙者に分けてCT検診非受診者を基準としたCT検診受診による肺癌死亡オッズ比を求めた。研究Bでは喫煙者に限定した。各セットにおいて症例を全肺癌/扁平上皮癌に分けて喀痰細胞診未受診者を基準とした喀痰細胞診受診の肺癌死亡オッズ比を求めた。(研究C)研究1~2年度に作成したモデルを用いて、喫煙者を対象に、40-49、50-59、60-69、70-79歳の4区分についてCT検診と胸部X線検診の費用効果分析を行った。検診の回数は年1回と想定した。
結果と考察
(研究A)CT検診受診者の喫煙調整オッズ比は、喫煙者では確定診断前の受診を比較する期間を0-12ヶ月以内とした場合の肺がん死亡オッズ比は0.77(95%信頼区間:0.52-0.96)であり統計学的有意に23%の肺がん死亡率の減少を示唆した。しかし期間を0-24ヶ月に延長するとオッズ比は0.93(0.65-1.21)に上昇し、死亡率減少効果は確認されなかった。一方非喫煙者の場合、0-12ヶ月で確認されたオッズ比0.41(0.15-0.78)は、期間を0-24ヶ月、0-36ヶ月、0-48ヶ月と延長してもほとんど変化がなかった。(研究B)、喀痰細胞診のコホート内症例対照研究の結果を示した。喫煙者に限り、全組織型でみると、喀痰細胞診非受診者を基準とした受診者の肺がん死亡オッズ比は0.96(95%信頼区間0.62-1.45)と死亡率減少効果は示されなかった。症例が扁平上皮癌罹患で死亡が確認された98例に限定すると、オッズ比は0.83(0.65-1.14)と少し低下したが、統計学的有意差は得られなかった。(研究C)費用効果比はいずれの年齢階層でもCT検診の方が良好ではあったが、増分費用が1000万/1人救命を超え、現状のままではCT検診の導入は医療経済学的に困難と考えられた。
結論
低線量CT検診の効果は、喫煙者では年1回、非喫煙者では5年程度継続する可能性が示唆された。喀痰細胞診については、喫煙者・扁平上皮癌に限っても死亡率減少効果は確認できなかった。CT検診の費用効果分析は、喫煙者に限って行うと、費用効果比はいずれの年齢階層でも良好であったが、要精検率をもっと低下させないと増分費用が大きく、導入は困難と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2013-07-25
更新日
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