ゲノム・遺伝子解析に基づく、胃がん・肺腺がん高危険度群の捕捉、及び予防標的分子の同定に資する研究

文献情報

文献番号
201220016A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム・遺伝子解析に基づく、胃がん・肺腺がん高危険度群の捕捉、及び予防標的分子の同定に資する研究
課題番号
H22-3次がん-一般-017
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
椙村 春彦(浜松医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 坂本 裕美(国立がん研究センター研究所)
  • 河野 隆志(国立がん研究センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胃がんや肺がんの原因については、喫煙習慣、ヘリコバクター感染などの外的要因がよく知られているが、遺伝性彌慢性胃がんを極型としてこれらの外的要因と独立あるいは相関して遺伝的素因の存在が従来から想定されてきた。本研究班は分担研究者の全ゲノム領域をカバーする胃がんや肺がんの相関研究、研究代表者の家族集積性胃がん例の解析をもとに、ゲノム・遺伝子解析により胃がんや肺がんとくに肺腺がんの高危険度群を抽出することを目的とする。
研究方法
[既存の家族集積例、若年発症例からのアプローチ] 家族集積例、あるいは若年発症で組織像がsignet ring cell typeの症例を引き続き、内視鏡医などの協力を得て収集した。文献にあるコンソーシアムの基準に必ずしも合致しない例でも見つかることがあることを周知せしめて、たとえば家族歴のまったくない症例なども検索の協力を要請した。
[GWASからのアプローチ] 500例の肺腺がんについての網羅的解析により、クロマチン修飾遺伝子などの多型が新たに見つかっており、一部はNature Geneticsなどに発表しているが、後述の極めて稀な若年肺がんのエクソーム解析所見とあわせて、検討をはじめた。
[エクソーム解析からのアプローチ]  アジレントSureSelectを用いエクソンDNAを濃縮し、イルミナの次世代シークエンサーHiSeq 2000を用い、全エクソンの塩基配列解析(Whole exon sequence, WES)を行った。Bioinformaticsの面からの分析として、WESのpair-endのread dataをBWAでhg19+ decoy 5にマップし、PCR duplicate疑いをsamtoolsで削除。既知のindel周辺のrealign, Q-valueの付け替えをGATKで実施。 ゲノムコホート192人と当班の53人(家族性胃がんと若年性肺がん)をまとめ、GATKのUnifiedGenotyper を用いてmultiple sampleでbaitターゲット領域内のmutation callを実行した。また更にsensitivityをあげるために個別にsingle sampleでも同様のcall を行い、Cancer Gene Censusに登録されている遺伝子領域においてmultiple sampleではcallされなかった変異を追加した。そのうち、PhyloP, SIFT, PolyPhen2, LRT, Mutation Tasterなどにより、deleteriousと判定された変異(多型)を、さらに、胃がん例、肺がん例で有意に頻度の高いものを検出していった。
結果と考察
[若年性家族性胃がん例] CDH1の生殖細胞系列のうち機能差のありそうなものとして、ミスセンスバリアントが4つ、ナンセンスバリアントが1つ、フレームシフトバリアントが1つ、5’ UTRのバリアントが2つ遺伝性びまん性胃がんおよびびまん性胃がんの若年孤発例で見つかった。MLPA法では、遺伝性びまん性胃がんおよびびまん性胃がんの若年孤発例で5つのコピー数変化が見つかった。1例については家族内の構成員の検索が可能であり、その結果、コピー数変異がある世代で新たに生じ、次の世代にうけつかれていくものであることを確認した。
[肺がんのGWASと若年肺がんのエクソーム] 肺腺がんのGWASにより、従来いわれていたlocus 以外に、クロマチン修飾に関わる遺伝子座など新たなものも見いだし、さらにこれらの遺伝子群についてエクソームデータとあわせて注視している。
[エクソーム解析] single sampleの解析でcallされた変異および多型は47134種類であった。これらのうち胃がん例のみで見つかり、PhyloP, SIFT, PolyPhen2, LRT, Mutation Taster, GERP++すべてでdeleteriousと判定された変異および多型は187種類であり、その多くは、Cancer Gene Censusに登録されていない新規なものであった。
結論
 ゲノム解析によるデータは、胃癌や肺癌の高リスク群の同定に極めて有用であり、とくに塩基変異ばかりでなく、copy numberの変異や、家族歴の有無に関わらない遺伝的リスクの存在を明らかにできる。胃癌や肺癌は早期に発見されると非常に予後が良い疾患になっている現状を考えると、若年や壮年におけるこの疾患による死亡をふくめた重篤な損失を防ぐことができる基礎的知見であると思われる。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201220016Z