文献情報
文献番号
201220011A
報告書区分
総括
研究課題名
がん化パスウエイネットワークが規定するがんの分子標的の解析並びに予後予測法の確立
課題番号
H22-3次がん-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 典子(東京大学医科学研究所 分子療法分野がん分子標的研究グループ)
研究分担者(所属機関)
- 野村 将春(東京医科大学 )
- 江成 政人(国立がん研究センター研究所 難治がん研究分野)
- 野口 昌幸(北海道大学遺伝子病研究所 癌生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
テーラーメイド医療を実現し、がんの罹患率及び死亡率を激減するには、個々の症例により異なる、複雑ながんの病態(個性)を統合的に解明することが重要である。がん病態の進行は、主だったがん遺伝子やがん抑制遺伝子を中心とする、いくつかのがん化パスウエイを構成する基本成分の、相互作用(ネットワーク)の動態変化ととらえることができる。本研究では、がん化パスウエイの基本成分として、EGFR/HER, K-Ras, p53, PI-3k-AKTパスウエイに焦点をあてる。細胞株やヒト癌組織を用いて、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、ゲノミクス解析に加えて、新規バイオインフォマティクスを組み合わせた解析を行い、がん化パスウエイを統合的に解明する。その過程で、予後予測、早期診断、抗がん剤感受性予測などに有用な新規バイオマーカー並びに個々の症例に合った分子標的候補を同定することを目的とする。
研究方法
p53失活に伴って誘導される膜蛋白質を多数見出し、その中で、肺がんの予後とも関連する因子の同定を試みた。Beta-actin promoter を用い、プロとオンコジンTCL1bを全身性に過剰発現する transgenic miceを作製した。手術により採取された肺癌切除組織、又はそこから培養された細胞を用いて様々な質量分析装置でタンパク質解析を行った。HERがん化パスウエイに含まれる分子から、血清早期がんマーカー候補分子を選別した。HER-PI3 kinaseがん化パスウエイ並びにHER-NFkBがん化パスウエイの詳細時系列トランスクリプトーム解析を行い、がん幹細胞シグネチャー、新規分子標的候補、がん早期、再発診断マーカー候補分子の抽出を行った。
結果と考察
p53失活に伴って誘導される膜蛋白質の中で、肺がんの予後とも関連する因子としてTSPAN2遺伝子を同定した。TSPAN2遺伝子は、4回膜貫通型蛋白質をコードしており、このファミリーに属する蛋白質は、がんの浸潤や転移といった腫瘍の悪性化に重要な役割を担っていることから、肺がん進展の過程でp53の不活化が起こり、TSPAN2遺伝子の発現が誘導され、肺がんを亢進させるモデルが考えられた。
TCL1bを全身性に過剰発現する transgenic miceを作製した結果、マウスは全例消化管由来の血管肉腫を発症し、8ヶ月以内に死亡した。TCL1bを特異的に認識するpolyclonal抗体を作製し、ヒトのがんの免疫組織染色を行ったところ、血管肉腫始め、各種上皮性由来の多くの悪性腫瘍において活性化されていることが明らかとなった。その結果、TCL1bがAKTを活性化することにより、ヒトの悪性腫瘍における各種の病態発現に関与している可能性が示唆された。
HERがん化パスウエイに含まれる分子から、FGL-1の濃度が、早期肺がん血漿中において有意に高かった。
イレッサ耐性の分子機構のひとつは、Wnt-beta-cateninパスウエイの活性上昇によることが明らかになった。
HER-NFkBがん化パスウエイ鍵分子として初期解析の結果得た71分子の解析を進め、いくつかについてがん幹細胞維持に重要な役割を果たすことを明らかにした。
TCL1bを全身性に過剰発現する transgenic miceを作製した結果、マウスは全例消化管由来の血管肉腫を発症し、8ヶ月以内に死亡した。TCL1bを特異的に認識するpolyclonal抗体を作製し、ヒトのがんの免疫組織染色を行ったところ、血管肉腫始め、各種上皮性由来の多くの悪性腫瘍において活性化されていることが明らかとなった。その結果、TCL1bがAKTを活性化することにより、ヒトの悪性腫瘍における各種の病態発現に関与している可能性が示唆された。
HERがん化パスウエイに含まれる分子から、FGL-1の濃度が、早期肺がん血漿中において有意に高かった。
イレッサ耐性の分子機構のひとつは、Wnt-beta-cateninパスウエイの活性上昇によることが明らかになった。
HER-NFkBがん化パスウエイ鍵分子として初期解析の結果得た71分子の解析を進め、いくつかについてがん幹細胞維持に重要な役割を果たすことを明らかにした。
結論
これまでにない形態での共同研究は、画期的な成果が出た。この成果は、国内国際学会での発表、招待講演、論文発表として世界へ発信されている。さらに、知的財産の獲得、実用化へと着実な筋道がつけられている。本研究をさらに加速、推進させることにより、21世紀の医療として注目されているがんの個別化医療へ着実に進めるものと考えられる。
公開日・更新日
公開日
2013-08-21
更新日
-