難治性小児がんに対する組織的・包括的取り組みに基づく臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見を活用した診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
201220010A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性小児がんに対する組織的・包括的取り組みに基づく臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見を活用した診断・治療法の開発
課題番号
H22-3次がん-一般-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
清河 信敬(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所小児血液・腫瘍研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 中澤 温子(中川 温子)(独立行政法人国立成育医療研究センター 病理診断部)
  • 森 鉄也(独立行政法人国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
  • 大喜多 肇(独立行政法人国立成育医療研究センター 研究所小児血液・腫瘍研究部 )
  • 林 泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 鶴澤 正仁(愛知医科大学 医学部)
  • 小川 誠司(東京大学 医学部)
  • 大平 美紀(千葉県がんセンター)
  • 福島 敬(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
16,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性小児がん、特に急速な進展や再発を繰り返す予後不良な亜型について、様々な手法を用いた網羅的-体系的な遺伝子・蛋白等のプロファイリングを行ない、その分子特性の新たな側面を明らかにし、得られた知見に基づいて有効な予後予測法を確立し、治療層別化法として臨床に応用することを目標とする。さらにその成果を発展させて、新規診断法や分子標的療法を開発することにより、難治性小児がんのQOL改善に貢献可能な治療モデルの提示を目指している。これまでに網羅されていなかった稀少疾患や、症例数が最も多い白血病の難治例などの臨床的に必要性が高い疾患を優先的に解析している。
研究方法
小児がん臨床検体に対しマイクロアレイ等による網羅的な発現遺伝子、ゲノム構造、エピゲノム解析を行った。先行研究の成果も含め、得られた分子情報に基づいてゲノム解析、定量PCR、フローサイトメトリー等による治療層別化法の開発や実用化を検討した。関連する倫理指針、法規を遵守し適切な倫理手続きを行ない実施した。
結果と考察
1) 分子MRD法による治療層別化法の標準化に関して、免疫受容体遺伝子再構成を利用した定量PCR法で90例、10カラーフローサイトメトリー法で143例、キメラ遺伝子を標的とした定量PCR法で31例のMRD解析を行い、それぞれの臨床的有用性を確認した。これらは、お互いに相補的な検査法であり、現在その相関性について検討を進めている。2) ALLの網羅的発現遺伝子解析で、キメラ遺伝子陰性症例の中に、各キメラ陽性群と類似する遺伝子発現プロファイルを示す症例を認め、特にBCR-ABL1陽性例に類似したPh-likeALLは無病生存率34.4%(全体は78.0%)と極めて予後不良であることを示し、遺伝子発現プロファイルに基づく層別化法への応用の可能性を示した。3) AMLのNUP98-NSD1陽性例とこれに類似した遺伝子発現プロファイルを示す症例が極めて予後不良であることを示して、治療層別化法としての可能性を見いだした。実際に時期AML治療プロトコールで層別化因子として採用されることが決定している。4) Early T-cell precursor-ALLの分子プロファイリングを進め、T-ALLとの鑑別においてCD5の発現の有無が予後予測に重要であることを示した。5) ゲノムプロファイリングに基づく骨肉腫の化学療法感受性予測システムの構築を目指し、1p21 gain、5p12 gain、3q13 loss、9q22 loss、10q23 loss、12q14 ampの6カ所の領域の異常を点数化することにより化学療法に対する感受性が予測可能であることを示した。今後、さらに症例を増やして解析を続け臨床への応用を目指す。6) 神経芽腫の新規予後分類として提唱されたゲノム分類とINPC病理組織分類、組織像との間に相関が認められることを明らかにした。染色体の部分増幅・喪失をみる群はUnfavorable Histology(UH)群が多く典型的な組織像を示すものが少なく、大型核を有する多形性の目立つ腫瘍細胞が特徴的と考えられ、染色体全体の増幅・喪失群では、Favorable Histology(FH)群が多く、典型的な神経芽腫の組織像を示すものが多くみられた。7) 小児腎肉腫のエピゲノムの特徴に基づく鑑別診断法の開発を行ない、THBS1遺伝子のプロモーター領域近傍のCpGアイランドのメチル化解析のみで、高い感度と特異度でCCSKを他の小児腎腫瘍から鑑別可能であることを示し、COBRA法による鑑別診断法を確立した。今後、臨床応用を目指す。8) 横紋筋肉腫のゲノム解析により、1検体につき平均8.3個の異常を検出し、RAS、p53など既知の変異に加えて、細胞増殖シグナル経路に関与する複数の遺伝子の異常を明らかにした。9)バーキットリンパ腫特異的な発現分子ZNF385Bがp53の機能調節によってアポトーシスに関与することを明らかにした。
結論
難治性小児がんで最も頻度が高いALLや、AMLの分子情報に基づく難治例層別化法の本邦での実用化を進め、その一部の成果は、全国統一多施設共同臨床研究においてすでに応用されており、その他のものについても提言を行なっている。骨肉腫や腎肉腫などの分子プロファイリングを行ない治療層別化や新規診断法への応用を試みており、横紋筋肉腫やバーキットリンパ腫についても分子解析を進めた。今後これらの成果の臨床応用を目指すとともに、さらに分子プロファイリングを継続し、新たな標的因子探索や治療開発研究への応用を視野に研究を行なう。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
22,000,000円
(2)補助金確定額
22,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 10,013,473円
人件費・謝金 1,652,790円
旅費 38,880円
その他 5,218,946円
間接経費 5,076,000円
合計 22,000,089円

備考

備考
銀行利子 89円

公開日・更新日

公開日
2015-10-14
更新日
-