文献情報
文献番号
201220007A
報告書区分
総括
研究課題名
腫瘍脈管系を標的としたがん浸潤転移とがん幹細胞制御法の確立
課題番号
H22-3次がん-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 靖史(東北大学 加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
- 高倉 伸幸(大阪大学 微生物病研究所)
- 矢野 聖二(金沢大学 がん進展制御研究所)
- 渡部 徹郎(東京大学 大学院医学系研究科)
- 平川 聡史(浜松医科大学)
- 望月 直樹(国立循環器病センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
13,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
がん微小環境は、腫瘍脈管系(血管およびリンパ管)、浸潤する炎症細胞や線維芽細胞、細胞外マトリックスによって構成されるが、なかでも腫瘍脈管はがんの発育・遠隔転移、腫瘍リンパ管はリンパ節転移に直結している。 本研究の目的は、腫瘍脈管系を研究する国内のフロントランナーが集結し、それぞれが独自のアプローチで腫瘍脈管系を標的とすると共に、相互に連携することでがんの発育と転移を制御する革新的な治療法を確立することである。
研究方法
vasohibin ファミリー分子の細胞や癌組織における発現を解析する。特にがん細胞のVASH2発現をノックダウンし、腫瘍の発育と血管新生に与える影響を観察する (佐藤)。アペリンや血管新生抑制剤による腫瘍血管の成熟化と内皮細胞に発現するTie2の構造変化を解析する(高倉)。HGFによるゲフィチニブ耐性における血管新生阻害薬の効果を検討する(矢野)。血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞におけるBMPのシグナリングを解析する(渡部)。リンパ管内皮細胞におけるLYVE-1のSheddingの機能を解析する(平川)。細胞増殖におけるShp2の機能を解析する。
結果と考察
VASH2は多くのがん細胞で発現しており、その発現制御によりがんの発育を制御できる(佐藤)。腫瘍血管を成熟化すると血管透過性が改善し腫瘍免疫能が高まる(高倉)。HGFはMet/Gab1を介してEGFR変異肺がんのVEGF産生を刺激し、血管新生を促進することで相乗的にEGFR-TKI耐性を誘導する。MetとVEGFR2の阻害活性を有する薬剤(E7050)はGFによるEGFR-TKI耐性を効果的に制御しうる(矢野)。がん微小環境における血管とリンパ管の形成はBMP9シグナルによってそれぞれ誘導ならびに抑制される(渡部)。
LYVE-1 ectodomain sheddingは、ヒアルロン酸を基質とするリンパ管内皮細胞の遊走に重要な働きを持ち、リンパ管新生に関わることが明らかとなった。(平川)腫瘍細胞と腫瘍血管におけるShp2の機能について検討し、EphA2によるShp2のリン酸化とErkの活性化が重要であることを突き止めた。(望月)
LYVE-1 ectodomain sheddingは、ヒアルロン酸を基質とするリンパ管内皮細胞の遊走に重要な働きを持ち、リンパ管新生に関わることが明らかとなった。(平川)腫瘍細胞と腫瘍血管におけるShp2の機能について検討し、EphA2によるShp2のリン酸化とErkの活性化が重要であることを突き止めた。(望月)
結論
革新的ながん治療の開発に資する成果として、がん治療における新たな分子標的としてのVASH2、BMP9、Shp2(佐藤、渡部、望月)、腫瘍血管正常化のがん治療における意義(高倉)、薬剤耐性と血管新生との関連性(矢野)、リンパ管新生制御の新たなストラテジー(平川)を示す事ができた
公開日・更新日
公開日
2013-08-21
更新日
-