難治性神経芽腫の発がんと幹細胞性を制御する遺伝子の同定および解析とその臨床応用

文献情報

文献番号
201220004A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性神経芽腫の発がんと幹細胞性を制御する遺伝子の同定および解析とその臨床応用
課題番号
H22-3次がん-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中川原 章(千葉県がんセンター がん先進治療開発研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 上條岳彦(千葉県がんセンター 発がん研究グループ)
  • 大平美紀(千葉県がんセンター がんゲノム研究室)
  • 古関明彦(独立行政法人理化学研究所免疫アレルギー科学総合研究センター 免疫器官形成研究グループ)
  • 岩間厚志(千葉大学大学院医学研究院 細胞分子医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
26,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性神経芽腫に対する新しい治療戦略を構築することは緊急の課題となっており、本研究では、悪性度の高い神経芽腫のがん幹細胞やiPS細胞技術など、最新の技術を駆使した神経芽腫発がんの分子機構解明とそれに基づく新しい治療法開発の基盤研究を展開する。
研究方法
細胞レベルにおける各種遺伝子の機能解析には、標準的な分子生物学的実験手法を用いた。遺伝子の発現抑制にはsiRNAを用いた。蛋白質の細胞内局在は免疫蛍光法によった。低分子化合物のスクリーニングは、クラウドによるグリッドコンピューティングを用いた分子イメジング法によった。NCYMトランスジェニックマウスの作製は、TH-NCYM constructを用いた。
結果と考察
1)MYCNのcis-antisense large non-coding RNAであるNCYMが実は蛋白質に翻訳され、de novo gene productであることを明らかにした。MYCNとNCYMのダブルトランスジェニックマウスに発生した神経芽腫は強い転移性を有し、よりヒト神経芽腫に近いマウスモデルとして今後の抗がん剤スクリーニングに有用となった。2)治療用抗体の候補として、新規膜蛋白質NLRR1に対する増殖抑制性単クローン抗体を作製した。3)in silico screeningにより見いだしたTrkB阻害剤候補低分子化合物は、in vivoで抗腫瘍効果を示した。4)幹細胞様神経芽腫細胞株をiPC化し遺伝子プロファイルを解析したところ、難治性神経芽腫に特徴的な遺伝子発現の低下と予後良好マーカーの上昇が見られた。5)神経芽腫がん幹細胞マーカーCD133が転写因子CDX1によって直接誘導されることを見出した。6)MBLR/Pcgf6コンディショナル欠損ES細胞を作成し、USP7/HAUSP はPRC1とMBLR複合体に共有の触媒分子であるRing1機能の制御をすることを示した。以上より、NCYMも神経芽腫の幹細胞性を制御していることから、神経芽腫の発がんと幹細胞性を制御する遺伝子群の同定と機能解明が進み、さらに新薬開発の展開にまで到達できた。
結論
これまでのゲノム情報から同定した神経芽腫候補遺伝子の機能解析とそれらを標的とする治療薬の同定研究が具体的に進み、実用化への道が拓けた。また、がん幹細胞性および神経芽腫のリプログラミングに関するNCYMなど新規遺伝子が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201220004B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性神経芽腫の発がんと幹細胞性を制御する遺伝子の同定および解析とその臨床応用
課題番号
H22-3次がん-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中川原 章(千葉県がんセンター がん先進治療開発研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 上條 岳彦(千葉県がんセンター 研究局・発がん研究グループ)
  • 大平 美紀(千葉県がんセンター 研究局 ・がんゲノム研究室)
  • 古関 明彦(理化学研究所 免疫アレルギー科学総合研究センター)
  • 岩間 厚志(千葉大学大学院医学研究院 細胞分子医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児がんの中で最も難治性である神経芽腫の網羅的なゲノム情報解析に基づいて、個体発生と発がん・進展の分子機構を明らかにし、新しい臨床リスク分類の開発と治療の標的分子を明らかにして、新薬開発へ展開することを目的とした。
研究方法
細胞レベルにおける各種遺伝子の機能解析には、標準的な分子生物学的実験手法を用いた。遺伝子の発現抑制にはsiRNAを用いた。蛋白質の細胞内局在は免疫蛍光法によった。低分子化合物のスクリーニングは、クラウドによるグリッドコンピューティングを用いた分子イメジング法によった。NCYMトランスジェニックマウスの作製は、TH-NCYM constructを用いた。
結果と考察
1)NGF/TrkAシグナルの最下流ターゲットであるKIF1BβがミトコンドリアのYME1L1と結合して活性化し、チトクロムC放出を制御するOPA1を分解することによって神経芽腫自然退縮の分子基盤であるプログラム細胞死を誘導していることを明らかにした。また、ALKの新規結合アダプタータンパク質として、Shfを見いだした。神経芽腫の発生に、NGF/TrkA および ALK 経路が重要な役割を有している事が具体的に示された。2)MYCNのcis-antisense large non-coding RNAであるNCYMが実は蛋白質に翻訳され、de novo evolved gene productであることを明らかにした。MYCNとNCYMのダブルトランスジェニックマウスに発生した神経芽腫は強い転移性を有し、よりヒト神経芽腫に近いマウスモデルを創出した。NCYNの発見により、ヒト神経芽腫の特性が明らかになった。3)治療用抗体の候補として、新規膜蛋白質NLRR1に対する増殖抑制性単クローン抗体を作製した。4)in silico screeningにより見いだしたTrkB阻害剤候補低分子化合物は、in vivoで抗腫瘍効果を示し、さらに新薬開発へ近づいた。したがって、難治性神経芽腫の創薬シーズが得られた。5)幹細胞様神経芽腫細胞株をiPC化し遺伝子プロファイルを解析したところ、難治性神経芽腫に特徴的な遺伝子発現の低下、ならびに予後良好マーカーの上昇が見られた。神経芽腫のがん幹細胞性を明らかにするうえで、重要な知見であった。6)神経芽腫がん幹細胞マーカーCD133が転写因子CDX1によって直接誘導されることを見出した。7)MBLR/Pcgf6コンディショナル欠損ES細胞を作成し、USP7/HAUSP はPRC1とMBLR複合体に共有の触媒分子であるRing1機能の制御をすることを明らかにした。神経芽腫のエピジェネティック制御を知る上で重要な分子機構と思われた。
結論
ゲノム情報に基づく神経芽腫候補遺伝子の同定と機能解析が進み、それらを標的とする治療薬開発の基盤研究が大幅に展開した。また、がん幹細胞性および神経芽腫のリプログラミングに関するNCYMなど新規遺伝子が明らかになり、今後の展開に新しい道を示した。

公開日・更新日

公開日
2013-07-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201220004C

収支報告書

文献番号
201220004Z