東日本大震災時の地域母子保健活動の課題に関する調査研究

文献情報

文献番号
201219024A
報告書区分
総括
研究課題名
東日本大震災時の地域母子保健活動の課題に関する調査研究
課題番号
H24-次世代-指定(復興)-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
平野 かよ子(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 上林美保子(岩手県立大学看護学部)
  • 岸恵美子(帝京大学)
  • 福島富士子(国立保健医療科学院生涯健康研究部)
  • 中板育美(日本看護協会)
  • 横山美江(大阪市立大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災時に岩手県、宮城県、福島県の地域母子保健を担う市町村保健師及び保健所保健師はどのような母子保健活動を行ったのか、今後に残された課題は何か、平常時から求められること、今後に向けて検討することは何かを明確にすることを目的とした。
研究方法
1)グループインタビュー調査
 岩手県、宮城県および福島県の被災地の
市町村の母子保健担当保健師と保健所の母子担当保健師を対象とし、グループでインタビューガイドに沿って災害時に母子を対象として行った活動の内容と課題について半構成式のグループでインタビュー調査を行った。調査期間は平成24年8月から11月である。
2)アンケート調査
 他県から支援のために派遣された全国の保健所保健師と市町村保健師を対象として、被災地で母子を対象として行った支援活動の内容と把握した課題について、郵送による質問紙調査を行った。調査期間は平成24年12月から平成25年1月であった。
結果と考察
岩手県、宮城県および福島県の被災3県の沿岸部を中心に市町村の母子保健担当保健師(72名)と、3県の保健所保健師(15名)の計87名を対象にグループインタビューを計21回実施した。グループインタビューの結果から、被災地の被害の程度や地勢等より保健師が実施した母子保健活動は異なっていた。また自治体の災対本部等の行政の組織体制や保健師の活動体制、医療機関等との連携、さらに県と市町村の連携のあり方が、その後の母子保健活動や通常業務再開に向けた準備に違いを生んでいた。
災害時の母子保健活動は、災害の種類と規模、災害時の自治体の組織体制と保健師の活動体制、さらに関係機関との連携の程度により活動の展開に差があるものの、復興に向けた活動の展開過程は類似していた。しかし放射線による被災地域では、今だに母子保健対策の復興を困難としている。災害時の母子保健活動の課題としては、平時から保健師活動を見直すこと、災害に備えた健康教育・啓発活動、保健所との連携等であった。
今後の検討課題として、地域防災計画の見直し、防災マニュアルの定期的確認、災害を想定した広域連携、派遣支援のあり方、災害時の行政事務の柔軟化等、災害時の労務管理、国の放射線被ばくに対する対策を提示した。
結論
岩手県と宮城県および福島県の沿岸部自治体の母子保健担当保健師へのグループインタビュー調査と県外からの派遣支援保健師へのアンケート調査の結果を基に、災害時に保健師はどのような活動を行ったのかについて時系列で明らかにし、今後の保健師活動の課題として以下の3点を挙げた。
1)平時からの地区活動を勘案した保健師活動の見直し、2)災害に備えた健康教育・啓発活動、3)保健所と市町村の連携
また、今後の検討課題として以下の6点を挙げた。
1)保健部門が参加しての地域防災計画の見直し、2)防災マニュアルの定期的な確認、シュミレーション、訓練、3)災害を想定した情報報管理と支援物資の調達に関する広域連携、4)長期的派遣支援のあり方、5)災害時の行政事務の統一化と柔軟化、自治体の裁量権の拡大、6)災害時の職員の労務管理
 本研究で整理した知見を基に、今後の災害時母子保健活動の参考となる手引きを作成した。これらが全国の自治体で参考とされ、活用されることを期待する。

公開日・更新日

公開日
2013-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201219024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
災害後の母子保健活動の復興にかかわる要因といては、①災害の種類と規模、被災地の地勢、②保健師の行政内での位置づけ・役割、③市町村と保健所その他の関係機関との連携の3要因が基盤的要因で、さらに、保健センターなどの保健活動の機能の維持の程度、外部からの派遣支援の質と量、支援物資の量に影響されることが明らかにされた。
臨床的観点からの成果
被災地の保健師のインタビューにより災害時の岩手県、宮城県、福島県の母保健活動の実態と課題をフェーズ0:当日、フェーズ1:発災後3日、フェーズ2:当3月末(発災後3週間)、フェーズ3:4月~5月(発災後1~2か月)、フェーズ4:6月~9月(発災後4~6か月)、フェーズ6:10月以降(発災後7か月~約1年)に分け提示した。
ガイドライン等の開発
被災地の保健師のインタビュー結果と県外からの派遣支援保健師へのアンケート調査を基に「災害時の母子保健活動の手引き」を作成し、今後の災害の発生に備えるために全国の市町村と保健所、さらに都道府県本庁に配布した。

その他行政的観点からの成果
母保健活動に限らず災害時の行政活動としては、保健情報の管理や支援活動、支援物資の確保のためには、近隣自治体のみならず広域的な連携を図ることが重要であり、この視点で地防災計画の見直すこと、防災マニュアルの定期的確認、災害時の行政事務の柔軟化と裁量権の拡大、災害時の行政職員の労務管理、放射線被ばくに対する国の対策の確立が喫急の課題であることを提示した。

その他のインパクト
災害時母子保健活動の手引きは行政の保健分野のみならず、保育園や子そだて支援等の母子福祉をはじめ、民間企業とも共有され、多分野で連携を図った災害時対応がスムーズに展開することに資するものである。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
第72回日本公衆衛生学会に岩手県、宮城県、福島県の母子保健活動と県外からの派遣支援保健師の活動について示説発表を行う
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
災害時の母子保健活動の手引きを作成し、全国の市町村と保健所、県本庁に配布した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201219024Z