低出生体重児の予後及び保健的介入並びに妊婦及び乳幼児の体格の疫学的調査手法に関する研究

文献情報

文献番号
201219020A
報告書区分
総括
研究課題名
低出生体重児の予後及び保健的介入並びに妊婦及び乳幼児の体格の疫学的調査手法に関する研究
課題番号
H24-次世代-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 則子(国立保健医療科学院)
  • 栗山 進一(東北大学・環境遺伝医学総合研究センター)
  • 佐々木 敏(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 佐藤 昌司(大分県立病院総合周産期母子医療センター)
  • 瀧本 秀美(国立健康・栄養研究所 栄養教育研究部)
  • 堀川 玲子(国立成育医療研究センター 内分泌代謝科)
  • 頼藤 貴志(岡山大学大学院 環境学研究科)
  • 三宅 吉博(福岡大学 医学部公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
19,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年わが国では平均出生体重が減少し低出生体重児の割合が増えていることが、乳幼児身体発育調査や人口動態統計調査結果から示されている。その実態を検証して行くためには、妊娠中から出生、その後の経過の医学的所見、検査データ、観察記録を十分な量でプールし検討することで、低出生体重児が実際にどのような産科リスクを背負い、出生後どのような成長発達を遂げてゆくかを明確にする必要がある。本研究では、既存の調査統計やコホート研究のデータに基づいて妊娠期からの母子の課題を明らかするとともに、今後の妊婦及び乳幼児コホート研究における仮説設定から曝露情報収集・追跡にいたるまでの効率的な手法を開発し、将来の大規模コホート研究のための基礎を確立することを目的とする。
研究方法
(1)既存のコホート研究からの情報収集等による疫学的調査手法の開発、(2)公的調査統計および研究分担者が実施中のコホート研究等のデータに基づく出生体重の推移と関連要因分析、(3)保健的介入方法の検討の3つのテーマについて、分担して研究を進めた。
結果と考察
(1)Birthcohorts.netに登録されている各コホート研究の情報をダウンロードし、子ども用、母親用、父親の質問票、登録データと血液検体の内容・調査時期を集計した。PhenX toolkitの構成について検討し、今後の精査のスケジュールを決めた。エコチル調査宮城ユニットセンターでの追跡と採血検体の保存・解析を行った。成育母子コホート研究では、早産・SGA児を中心とし、コントロール群とハイリスク妊娠児を含めた追跡を進めた。今後児の生後成長や代謝系への関与をフォローしていくとともに、母体の糖代謝との関連についても検討する。これらにより、今後、目的に応じて、どの時期に、どの方法で、何を調査しているかを整理し、母子コホート研究においてコアとなる基本的な質問項目、疾患特異的な質問項目に分けて整理、翻訳してデータベース化し、最終的には、追跡方法の工夫点等も含めてデータベース化、マニュアル化し、今後の母子コホート研究の推進に役立てる予定である。
(2)出生体重の年次推移とその要因に関する海外の研究論文をレビューしたところ、ほとんどの国で出生体重増加の傾向が見られ、要因について様々な分析がされていた。韓国と米国において近年の出生体重減少が指摘されており、分娩誘発等の産科介入を原因とする報告もあった。わが国における出生体重減少の要因を1980年から2004年までの推移に関して検討したところ、妊娠期間、母親の年齢、出生順位、多胎妊娠の推移によって説明できる部分は約半分以下であった。
日本産科婦人科学会周産期登録データベースの分析から、出生体重の減少には胎児数、喫煙、初産、性別が女児であることが関与し、増加には妊娠前の身長、体重、BMI、体外受精、妊娠週数が関与しており、年次推移上の出生体重の減少にはこれらの諸要因が関与していること、体重減少の背景には必ずしも自然推移のみでなく多胎、不妊治療等を含めた人為的要因が関与している可能性があると考えられた。聖隷浜松病院の産科データベースの分析から、早産児、特に医療的介入を受けて産まれた早産児が増加しており、早産児の増加と低出生体重児の増加とも産科的介入の変化によって一番説明されていた。九州・沖縄母子保健研究のデータを活用し、妊娠中における母親の能動及び受動喫煙と出生時低体重との関連を調べたところ、妊娠中非喫煙に比較し、妊娠中通しての喫煙は有意にSGAのリスクの高まりと関連しており、母親の能動喫煙とpreterm birthの量・反応関係も有意であった。
(3)産科外来で実施される妊婦健診の機会を利用し、妊娠前の体格別に体重増加量をモニタリングしながら、栄養・食生活介入を行い、児の出生体重をはじめとした妊娠転帰への影響と、産後1か月時の産婦並びに児の健康状態への影響を調べ、保健的介入方法のあり方について検討した。研究参加者は282名に達しうち、58名が体重増加不足あるいは過剰で栄養教育を受けた。体重増加量不足者では過剰者よりも妊娠前「やせ」の割合が高かった。過剰者では不足者と比べエネルギーを始めて多くの栄養素の摂取量が低い結果であった。
結論
既存の調査統計やコホート研究のデータに基づいて妊娠期からの母子の課題を明らかするとともに、今後の妊婦及び乳幼児コホート研究における仮説設定から曝露情報収集・追跡にいたるまでの効率的な手法を開発し、将来の大規模コホート研究のための基礎を確立するための研究を開始し作業を進めた。

公開日・更新日

公開日
2013-06-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201219020Z