文献情報
文献番号
201219017A
報告書区分
総括
研究課題名
人工妊娠中絶、妊産婦死亡の地域格差に関する研究
課題番号
H24-次世代-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
池田 智明(三重大学 大学院医学系研究科・生命医科学専攻・臨床医学系講座・産科婦人科学)
研究分担者(所属機関)
- 池ノ上 克(宮崎大学医学部附属病院)
- 岡村 州博(東北大学医学部・産婦人科)
- 金山 尚裕(浜松医科大学・産婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成22年から日本産婦人科医会と協力し妊産婦死亡の全数登録を開始し、正確な把握と短期フィードバックが可能な基盤が確立した。引き続き本事業を続けるとともに、より正確な死因解明法と効率的な発生予防を進める。またこれまで詳細な実情が不明であった、人工妊娠中絶術(人工中絶)に関して調査し、地域格差の検討を行うことを目的とする。
研究方法
日本産婦人科医会から匿名化された症例を、症例検討評価委員会を、小委員会は毎月、全体委員会は3ヶ月毎に開催し検討した。また、病理カンファランスを2回開催した。また、分娩取り扱い施設における産科危機的出血への輸血対応に関する調査、妊娠関連の悪性腫瘍に関する研究、周産期心筋症全国多施設前向き症例登録研究を行った。人工中絶に関して三重県と茨城県にてアンケート調査を行った。また各都道府県別中絶率と関連すると予想される因子との関連を検討し、原因解析を行った。
結果と考察
平成22年には51例、23年には40例、24年は60件、計151例の妊産婦死亡が報告された。平成25年7月には「母体安全への提言2012」を発刊予定である。また、「妊産婦死亡剖検マニュアルポケット版」を作成し配布した。産科危機的出血は1年に約1300件起こっていること、非周産期センターにおいて、輸血体制が不充分であることがわかった。妊娠関連の悪性腫瘍は、子宮頸癌が72%と最も多く、次いで卵巣癌7%、乳がん6%と続いた。周産期心筋症は、平成25年2月末で、39症例の登録を得た。また、人工中絶の手技に関して、三重県80施設、茨城県は34施設の結果から、妊娠12週未満の中絶手技はどちらも60~70%の施設が吸引法を用いており、予想より高かった。各都道府県あるいは各地方別の中絶率の検討では、関東・中部・近畿地方は全国平均より低く、東北・中四国・九州地方では高く、二極化現象が認められた。都道府県別の人工妊娠中絶率と県民所得、20歳代未婚女性・男性率、大学進学率、出産年齢との間に負の相関を認め、高校就職率とデキ婚率との間に正の相関を認め、社会的因子との強い関連が考えられた。
結論
妊産婦死亡の全例を登録し評価するシステムと剖検マニュアルが整備され、重要なインフラが整った。産科危機的出血、間接妊産婦死亡原因に関するより深い検討も行った。人工中絶率は地理的に中央部が低く、遠隔地が高いが、社会的因子との関連が深かった。また、吸引法が予想以上に多く使用されていた。
公開日・更新日
公開日
2013-05-21
更新日
-