「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」における訪問拒否等対応困難事例への支援体制に関する研究

文献情報

文献番号
201219010A
報告書区分
総括
研究課題名
「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」における訪問拒否等対応困難事例への支援体制に関する研究
課題番号
H22-次世代-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
益邑 千草(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所 母子保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 敬(大正大学名誉教授)
  • 吉田弘道(専修大学人間科学部)
  • 三橋美和(京都府立医科大学医学部看護学科)
  • 堤 ちはる(日本子ども家庭総合研究所 母子保健研究部 )
  • 佐藤拓代(大阪府立母子保健医療センター)
  • 中板育美(日本看護協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,830,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳児家庭全戸訪問事業における訪問拒否等対応困難事例への支援体制のあり方の検討であり、支援体制の整備を支援することによる同事業の実施効果の充実である。
研究方法
1.手引きの作成
全市区町村に対して実施した、本事業の実施状況に関する実態調査(平成22年度)、ガイドライン解説書の骨子(案)に関する調査(23年度)、各研究分担者が市区町村を訪問して実施した聞き取り調査等の結果を詳しく検討した。
2.分担研究
各分担者が市町村への訪問調査を実施した。
3.倫理面への配慮
質問紙調査及び聞き取り調査において対象者に対し調査の趣旨、目的、結果の扱い等につき書面・口頭により十分に説明し同意を得た。結果の分析・公表では、組織や個人が特定できないようにする等プライバシーに十分配慮した。研究内容は日本子ども家庭研究所の倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
1.手引きの作成
訪問拒否等対応困難事例への対応とそのような事例の発生防止について対応の手引きを作成した。
2.分担研究
1)本事業の実施状況に関する全国調査(第3報)(代表者:益邑千草)22年度の調査結果につき事業運営に重要な部分を検討した。
2-1)アンケート調査における短期事業結果を表す指標に影響を与える要因に関する分析(分担者:中村敬)22年度の全国調査から短期の事業評価を表すと思われる指標と各質問項目との関連を検討した。
2―2)Healthy Families Pinellas(HFP)プログラムの紹介(分担者:中村敬、協力者:石井栄子)HFPはフロリダ州ピネラス郡で1992年に開始された新生児から5歳までの子を持つ家族を対象とした家庭訪問プログラム。本事業及び養育支援訪問事業等とHFPとを比較し内容を検討した。
4.訪問者の研修内容について-特に心理面の援助に関して-(分担者:吉田弘道)訪問員の研修について非看護職の定例会における発達臨床心理学の講演に対する質問内容を整理した。母親をゆったりさせる秘訣、赤ちゃんの上手なあやし方等、素朴で実践的な内容が寄せられた。これらの知識は母親に助言・指導するためではなく、訪問員が余裕をもって母親と接するために必要である。
5.非専門職訪問者による本事業の意義と効果的な実施のための工夫-中核市へのヒアリング調査の結果から-(分担者:三橋美和、協力者:堀井節子)訪問者に非専門職を含む自治体は3割を占めるが、22・23年度の研究から専門職に比べて玄関先の訪問が多く訪問が受け入れられにくく訪問率が低い等多くの課題がある。非専門職による訪問について大規模自治体も含めて訪問受入れ向上を図るための対策の検討と、非専門職訪問者による訪問の意義と効果的な実施のための工夫について検討した。
6.本事業につなげる出産前からの母親の食生活支援について(分担者:堤ちはる)食生活は習慣性が強く、出産後、急な改善は困難を伴うことが多いため、出産前の妊娠期から食生活に関わることは重要である。妊娠期からの食生活支援は、母子のよりよい食習慣を身につけるために、また対象者と保健センター等との関係性の構築にも役立つ。良好な関係性における母親への食生活支援は困難事例件数の減少につながる可能性がある。
7.訪問困難事例に対する対応方法に関する研究(分担者:佐藤拓代、協力者:千代みどり)本事業の訪問率と乳幼児健診の受診率が高い地域で、本事業の状況と乳幼児健診受診者の保護者の子育て感を検討した。事業開始前後の比較では、開始後、4か月の「不安が多い」と1歳6か月の「イライラする」が有意に減少し、本事業の効果と考えられた。1歳6か月の「たたきたくなる」は有意に増加し、乳児期早期の支援に加え乳児期後半から幼児期の支援が必要と考えられた。訪問拒否を防ぐには訪問前の調整の必要性と、ゆっくり話を聞き母親の支援を行うことを伝えることが重要である。
8.本事業における訪問拒否等対応困難事例への対応の検討(分担者:中板育美)
平成22年度の全国調査で対応が困難な例として挙げられた事例を検討した。専門職が対応しても対応が困難な事例は、既に基本的な対応は試みられていると考えられるが、困難な原因を整理し対応を見直すことで、対応の糸口を発見できる可能性がある。
結論
平成22・23年度の全国調査、各分担研究の結果をもとに、訪問拒否等対応困難事例への対応と、そのような事例の発生防止について対応の手引きを作成した。強引な対応をして対象者との関係を壊すべきではないが、支援すべき機会を逃さないためには、ソフトな対応を多方向から試みることが必要である。
本事業において、訪問拒否等対応困難事例が発生していないかどうか、訪問の実施状況を常時把握し、困難事例に的確に対応して支援につなげるためには、一連の対応を支える体制の整備が必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201219010B
報告書区分
総合
研究課題名
「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」における訪問拒否等対応困難事例への支援体制に関する研究
課題番号
H22-次世代-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
益邑 千草(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所 母子保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 敬(大正大学名誉教授)
  • 吉田 弘道(専修大学人間科学部)
  • 三橋 美和(京都府立医科大学医学部看護学科)
  • 堤 ちはる(日本子ども家庭総合研究所 母子保健研究部 )
  • 佐藤 拓代(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 中板 育美(日本看護協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究の目的は、「乳児家庭全戸訪問事業」における訪問拒否等対応困難事例への支援体制のあり方の検討であり、支援体制の整備を支援することによる同事業の実施効果の充実である。
研究方法
1.手引きの作成
全市区町村に対する質問紙調査として実施した、本事業の実施状況に関する実態調査(平成22年度)、ガイドライン解説書の骨子(案)に関する調査(23年度)、各研究分担者が市区町村を訪問して実施した聞き取り調査等の結果を詳しく検討した。
2.分担研究
各研究分担者が市町村への訪問調査を実施した。また研修会の講師を務めた。
3.倫理面への配慮
質問紙調査及び聞き取り調査において対象者に対し調査の趣旨、目的、結果の扱い等につき書面・口頭により十分に説明し同意を得た。結果の分析・公表では、組織や個人が特定できないようにする等プライバシーに十分配慮した。研究内容は日本子ども家庭研究所の倫理委員会の承認を得た。
結果と考察
乳児家庭全戸訪問事業における訪問拒否等対応困難事例への支援体制のあり方を検討した。
平成22年度は、本事業の実施状況を把握するため、全国の市区町村に対して実態調査を実施した。
平成23年度は、全国調査及び分担研究の結果をもとに、本事業に関する厚労省のガイドライン解説書の骨子(案)を作成し、全国調査の報告書と併せて全市町村に送付し、意見を聴取し、ガイドライン解説書の骨子を作成した。
平成24年度は、訪問拒否等対応困難事例への対応と、そのような事例の発生防止について検討し、対応の手引きを作成した。主な内容について自治体の研修会等で解説した。
専門職が対応しても対応が困難な事例は、既に基本的な対応は試みられていると考えられるが、困難な原因を整理し対応を見直すことで、対応の糸口を発見できる可能性がある。
本事業において対応が困難となった事例への対応を検討することは、本事業だけでなく、本事業以外の母子保健事業並びに子育て支援事業等、乳幼児を持つ家庭への対応が必要な事業の実施に当たって準備すべき体制を検討することに連動する。すなわち、対応が困難な事例に対応するための手段と人材、支援を必要とする家庭が把握できたときに支援につなぐ場を用意することなしに事業を展開することはむずかしい。精神疾患等、母親の健康状態や、両親の日本語の理解が十分でない場合など、専門家の助言を得られる機会を設けたり、各国語の説明文書を用意するなど、当該市町村だけでなく、広域での支援体制の検討が課題である。
全国調査及び手引きの作成と並行して、各研究分担者がそれぞれの専門分野で分担研究を進めた。
1.総括及び対応困難事例への市町村行政上の対応について(研究代表者:益邑千草)
2.全国調査結果の数量的分析と本事業の実施体制の検討(研究分担者:中村 敬)
3.育児不安・親子関係・心の健康問題に重点を置いた心理相談からの対応のあり方(研究分担者:吉田弘道)
4.こんにちは赤ちゃん事業の訪問者に関する研究―非専門職訪問者による効果的な実施のための工夫―(研究分担者:三橋美和、研究協力者:堀井節子)
5.対応困難な事例に対する食生活相談からの関わり方(研究分担者:堤ちはる)
6.訪問困難事例に対する対応方法に関する研究(研究分担者:佐藤拓代)
7.事例検討からみた対応困難な事例に対する対応のあり方(研究分担者:中板育美)
8.全国調査 における重要項目の分析(研究協力者:齋藤幸子)
結論
乳児家庭全戸訪問事業について、事業の実施状況を把握するため、全国調査を実施し、本事業における訪問拒否等対応困難事例への対応について、市町村の意見を聴取した。またできるだけ対応が困難とならないようにするための方策を検討し、訪問拒否等対応困難事例への対応の手引きを作成した。
強引な対応をして対象者との関係を壊すべきではないが、支援すべき機会を逃さないためには、ソフトな対応を多方向から試みることが必要である。
本事業において、訪問拒否等対応困難事例が発生していないかどうか、訪問の実施状況を常時把握し、困難事例に的確に対応して支援につなげるためには、一連の対応を支える体制の整備が必要である。

公開日・更新日

公開日
2013-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201219010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
市町村における「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」の実施状況について質問紙による全国調査、および訪問調査を実施し、実態を把握した。
臨床的観点からの成果
「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」における訪問拒否等対応困難事例について多角的に検討した。
ガイドライン等の開発
「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」における訪問拒否等対応困難事例への支援体制について検討し、「乳児家庭全戸訪問事業における訪問拒否等対応困難事例への対応の手引き」をまとめた。
その他行政的観点からの成果
「乳児家庭訪問事業における訪問拒否等対応困難事例への対応の手引き」をまとめ、全市町村に配布した。
 新潟県健康対策課が実施した「妊娠期からの児童虐待防止関係者研修会」(平成26年9月16日(火)新潟県自治会館)において、市町村及び県における母子担当者等を対象に「乳児家庭全戸訪問事業における訪問拒否等対応困難事例への支援体制~母へのあたたかな手当~」の講演を担当した。
その他のインパクト
平成23年度健やか親子21全国大会 母子保健関係者研究集会(平成23年11月9日福井市地域交流プラザAOSSA)にて講演「『子育て家族を地域で応援』~新しい母子保健活動と小児科医~」:本研究の内容を紹介。
「県民福井新聞」(23.11.10)に「乳児家庭訪問課題探る」(5段)という記事が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
佐藤拓代
"産じょく期・新生児期からの家庭訪問の実際 ―乳児家庭全戸訪問事業の現状と課題"
世界の児童と母性 , 70 , 23-26  (2011)
原著論文2
佐藤拓代
妊娠期からの虐待予防
チャイルドヘルス , 14 (9) , 1562-1565  (2011)
原著論文3
佐藤拓代
"保健機関による子ども虐待予防 ―ポピュレーションアプローチからハイリスクアプローチへ―"
小児科診療 , 74 (10) , 1563-1566  (2011)

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201219010Z