小児慢性特定疾患の登録・管理・解析・情報提供に関する研究

文献情報

文献番号
201219001A
報告書区分
総括
研究課題名
小児慢性特定疾患の登録・管理・解析・情報提供に関する研究
課題番号
H22-次世代-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松井 陽(国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 忠明(国立成育医療研究センター 成育政策科学研究部)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター 成育政策科学研究部)
  • 黒田 達夫(慶応義塾大学医学部小児外科)
  • 内山 聖(新潟大学医歯学総合病院)
  • 荒川 浩一(群馬大学大学院 医学系研究科 小児科)
  • 賀藤 均(国立成育医療研究センター 器官病態系内科部)
  • 横谷 進(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
  • 神崎 晋(鳥取大学医学部小児科)
  • 武井 修治(鹿児島大学医学部保健学科)
  • 杉原 茂孝(東京女子医科大学東医療センター小児科)
  • 伊藤 道徳(香川小児病院)
  • 小池 健一(信州大学医学部小児医学講座)
  • 有賀 正(北海道大学大学院医学研究科病態制御学専攻生殖発達講座小児科学分野)
  • 高橋 孝雄(慶応義塾大学医学部小児科)
  • 須磨崎 亮(筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻小児内科学分野 小児肝臓病学)
  • 山野邉 裕二(国立成育医療研究センター 情報管理部 情報解析室長)
  • 仁尾 正記(東北大学大学院医学系研究科小児外科学)
  • 中村 好一(自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門公衆衛生学・疫学)
  • 原田 正平(国立成育医療研究センター 成育政策科学研究部 成育医療政策科学研究室)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター 成育政策科学研究部 成育保健政策科学研究室)
  • 斉藤 進(日本子ども家庭総合研究所 研究企画 情報部 システム管理室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
27,885,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児慢性特定疾患治療研究事業の医療意見書の電子データを基に、登録者数やその治療等の現況を把握して医療関係者や患児家族へ情報提供をするとともに、母子保健行政に資する資料および当該事業の適正化のための基礎データを厚生労働省および地方自治体に提供する。
研究方法
平成25年2月までに、全国から厚生労働省に事業報告が行われた電子データを基に、全国的な疫学調査等を行った。平成10~23年度の当該事業の合計延べ1,571,987人の資料に関して、質問紙調査を含む各種の解析を行った。他の全国的疾患データベースとの比較解析も行った。
結果と考察
1) 平成10~23年度の小慢事業に登録された述べ約157万人分の電子データ(小慢データベース)を利活用し、疾患毎および疾患群毎に、専門的見地から分析することにより、本邦における小児慢性疾患の発症数、発症時期、転帰等の貴重な情報が得られた。ほぼ全実施主体からの報告が得られるようになり、事実上の全国規模のデータになったといえるだろう。
2) 小慢データベースの精度の検証では、小児がん登録では都市部において学会疾病登録データ数との乖離が生じており、他の医療費助成制度を利用するため、小慢データベースへの登録がなされないケースが少なくないことが改めて指摘された一方、多分野に及ぶ症例や、低身長、胆道閉鎖症など疾患では逆に小慢データベースの方が遙かに多くの登録を保持していることも明らかになった。これらの疾患群においては小慢データベースは極めて貴重な資料となっていた。
3) 医療意見書の病名記載については、慢性心疾患群のように複数の合併病名を記載する際に、医学的に適切に対応できない場合が生じているという課題が明らかとなった。今後の医療意見書の改訂において有益な情報が示された。
4) 血液・免疫疾患群他で非継続症例に対する二次調査が実施され、小慢事業を継続しなくなった患児の実態が一部明らかなった。また現行の小慢データベースでは、非継続となった理由が把握できていないことが、予後把握の面から課題の一つであることが改めて指摘された一方、小慢データを用いることにより、簡便かつ効率的に二次調査が実施できることも再認識された。
5) 膠原病疾患群では、治療方法と患者のQOLの検討を行い、生物製剤による治療を選択している群がそれ以外の治療を選択している群に比べ有意にQOLが改善していることを明らかにした。このような研究手法により、小慢疾患患者のQOLの評価を行い、小慢事業として包括的に患者のQOL向上を検討していくことの可能性が示された。
6) データの精度向上を図るため、最新のコンピュータ技術を積極的に取り入れた、新たなデータ登録・管理および積極的なデータの学術利用の必要性を検証した。今後の小慢事業における登録システムのあり方を検討する上で、有益な検討が得られたといえる。

結論
全国から提出された医療意見書の電子データを基に、慢性疾患を有する小児の症状や検査結果、それらに基づく治療による患児の予後・経過について解析を行い、医療水準の向上の助けとなる有益な所見を得た。

公開日・更新日

公開日
2013-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201219001B
報告書区分
総合
研究課題名
小児慢性特定疾患の登録・管理・解析・情報提供に関する研究
課題番号
H22-次世代-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松井 陽(国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 忠明(国立成育医療研究センター 成育政策科学研究部)
  • 森 臨太郎(国立成育医療研究センター 成育政策科学研究部)
  • 黒田 達夫(慶応義塾大学医学部小児外科)
  • 内山 聖(新潟大学医歯学総合病院)
  • 荒川 浩一(群馬大学医学部小児科)
  • 賀藤 均(国立成育医療研究センター 器官病態系内科部)
  • 横谷 進(国立成育医療研究センター 生体防御系内科部)
  • 神崎 晋(鳥取大学医学部小児科)
  • 武井 修治(鹿児島大学医学部保健学科)
  • 杉原 茂孝(東京女子医科大学東医療センター小児科)
  • 伊藤 道徳(香川小児病院)
  • 小池 健一(信州大学医学部小児科)
  • 有賀 正(北海道大学医学部小児科)
  • 高橋 孝雄(慶応義塾大学医学部小児科)
  • 須磨崎 亮(筑波大学医学部小児科)
  • 山野邉 裕二(国立成育医療研究センター 情報解析室)
  • 仁尾 正記(東北大学医学部小児外科)
  • 中村 好一(自治医科大学公衆衛生学)
  • 原田 正平(国立成育医療研究センター 成育医療政策科学研究室)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター 成育保健政策科学研究室)
  • 斉藤 進(日本子ども家庭総合研究所 研究企画・情報部システム管理室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患について、現在の医学知見を踏まえた技術的整理を行なうこと、対象疾患の四要件の該当性や診断基準及び治療指針の有無の調査を行なうこと等を目的とする。
研究方法
研究班分担研究者に加え、当該事業の対象疾患の診療に携わっている全国の専門家の協力を得て、最新の医学的知見に基づき検討を行なう。
結果と考察
対象疾患名については、現在の告示疾患(514+2)の包含関係等の技術的整理により227の大分類及び大分類の疾患に含まれ得る疾患を列挙した648の細分類とした。これらの技術的整理案について四要件の該当性、診断基準及び治療指針の有無の調査を行ない、研究班による技術的整理案(改定案)を提示した。
結論
本研究では、現行の対象疾患の範囲の中で見直しを行ない、その技術的整理案を提示した。この検討の過程で次のさらなる検討課題が明らかとなった。すなわち、①対象疾患の診断基準及び治療指針の整備、②対象基準の策定と適切性の検討、③追加検討候補疾患の情報整理、等である。本研究班では、当該事業の適正化、公平かつ公正な運用を目指し、引き続きこれらの検討課題について関係学会の協力を得て、取組んでいきたい。

公開日・更新日

公開日
2016-07-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201219001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班では、小児慢性特定疾患治療研究事業において全国の実施主体より毎年厚生労働省に提出される医療意見書データ(平成10~23年度分延べ約1,500万人分)を登録、データベース化し、対象疾患の状況を横断的かつ縦断的に集計・解析している。また、悪性新生物、先天性心疾患、慢性消化器疾患では、他の疾患データベースや調査研究との比較検討を行ない、小慢データベースの精度と改善点について検討した。さらに、内分泌疾患ならびに1型糖尿病において出生季節性解析等も実施した。
臨床的観点からの成果
内分泌疾患群、慢性呼吸器疾患群、血友病等血液・免疫疾患群等では、非継続症例についての二次調査を実施し、対象患者の転帰を把握すると共に登録が継続されなかった理由等を検証した。成長ホルモン治療疾患群では、電子データの解析に加え、関連学会での質問紙調査を実施し、対象疾患の治療状況の詳細を明らかにした。膠原病疾患群では、PedsQLを用いて患者の身体・精神機能の評価を行ない、患者のQOLの低下に関する影響因子を明らかにした。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
小児慢性特定疾患の登録・管理システム ver. 5.0を作成し、全国の実施主体に配布し、電子データの登録・管理の支援、ならびに厚生労働省への電子データ提出ファイル作成の支援を行なった。また、成果の一部が、厚生労働科学審議会児童部会 第1回小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会(第1回、2回、5回)の審議会資料、および厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会での検討の基礎資料、予算要求の基礎資料となった。
その他のインパクト
小児慢性特定疾患治療研究事業による医療費助成を受けている患者の数、疾患名、疾患の状況等を集計、解析し、研究報告書ならびにHP等にて公開することにより、小児医療施策に対する基礎情報の作成に寄与している。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
16件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
85件
学会発表(国際学会等)
30件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
7件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
村松一洋、村松礼子、荒川浩一、他
先天性中枢性肺胞低換気症候群の小児慢性特定疾患登録データによる疫学的動態の検討
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 ,  (23) , 8-14  (2012)
原著論文2
徳山研一、荒川浩一、乾 宏行、他
群馬県における気管支喘息児および保護者のQOLの実態 2001年から2008年にかけての変遷
日本小児アレルギー学会誌 ,  (25) , 682-691  (2012)
原著論文3
坂崎尚徳、丹羽公一郎、賀藤 均、他
本邦におけるEisenmenger症候群成人例の検討
日本小児循環器学会雑誌 ,  (27(3)) , 121-131  (2011)
原著論文4
草刈麻衣、加藤忠明、小池健一、他
小児慢性特定疾患研究事業における「血小板の異常をきたす疾患」の登録状況
日本小児血液学会雑誌 ,  (25) , 74-80  (2011)
原著論文5
田中敏章、横谷 進、他
高用量GH治療によるターナー症候群の治療効果 ターナー症候群GH治療共同研究(TRC)の7年間の治療経験
日本成長学会雑誌 ,  (17(1)) , 9-15  (2011)
原著論文6
金 基成、安藤和秀、賀藤 均、他
経皮的心肺補助(PCPS)導入の可能な当施設における小児急性心筋炎の予後
日本小児循環器学会雑誌 ,  (26(3)) , 227-233  (2010)
原著論文7
須磨崎亮
小児の劇症肝不全における劇症化の診断と予知に関する検討
日本小児科学会雑誌 ,  (114(1) ) , 64-72  (2010)
原著論文8
望月貴博、藤田敬之助、横谷 進
成人Turner症候群の長期フォローアップについて 本人・家族の会アンケートによる現状調査
日本小児科学会雑誌 ,  (114(1)) , 43-47  (2010)
原著論文9
Nakajima N, Mochizuki H, , Arakawa H, et al
Relationship between exhaled nitric oxide and small airway lung function in normal and asthmatic children
Allergol Int ,  (60) , 53-59  (2011)

公開日・更新日

公開日
2016-10-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201219001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,673,000円
(2)補助金確定額
30,673,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,900,789円
人件費・謝金 9,273,464円
旅費 1,738,167円
その他 10,972,580円
間接経費 2,788,000円
合計 30,673,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-07-21
更新日
-