文献情報
文献番号
201218015A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症一次予防のための多角的データ利用による縦断研究
課題番号
H24-認知症-若手-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
山岸 良匡(国立大学法人筑波大学 医学医療系社会健康医学)
研究分担者(所属機関)
- 磯 博康(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,451,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書（概要版）
研究目的
認知症は高齢者の介護を要する原因の11％を占め、高齢社会に達したわが国において認知症の一次予防に関するエビデンスの蓄積は重要な課題である。申請者は、平成21～23年度認知症対策総合研究事業の若手育成型として、認知症の新しい危険・抑制因子の探求を行った。茨城・秋田の2地区において、過去の健診データと介護保険データを突合したコホート内症例対照研究により、喫煙、血圧、糖尿病、血清総コレステロール、血清CRP、血清単価不飽和脂肪酸は認知症リスクと正の関連又は傾向を、血清n-3系多価不飽和脂肪酸と血清コエンザイムQ10は負の関連又は傾向を示すことを見いだした。本研究では追跡期間を延長して、過去の調査では例数の不足から不確定であった要因を確定するとともに、心電図、眼底、蓄尿、食事調査等の項目と認知症発症との検討を進める。
研究方法
対象は、茨城県及び秋田県の1981年以降の循環器健診の受診者（年間約5000名）のうち、1999年から2013年までに介護保険認定を受けた者と、その対照となる者で、合計推定約2000人である。このうち、約1250人（うち健診時年齢70歳未満は約半数）については先行研究課題により既に同定されており、追跡期間を延長することにより約750人を追加同定する。特に、70歳未満の時に健診を受診した者（推定約375人）を優先して同定する。介護保険データ（主治医意見書・認定調査票）を連結可能匿名化してデータベース化し、介護認定された認知症をエンドポイントとして、その時点において介護認定されていない生存者を対照として、健診受診者の中から、性、年齢、検診受診年を1：2でマッチさせて無作為に選び出す。エンドポイントとして、痴呆性（認知症）老人の日常生活自立度を用い、IIa度以上を認知症とする。この基準は先行研究において疫学研究としての利用妥当性が認められている（感度83%、特異度96%）。そして、－80℃で凍結保存されている血清を用いて、先行研究で認知症と関連する可能性が示されたものの、サンプルサイズ等の関係から有意な関連が検出されなかった血液項目や、先行研究では検討し得なかった検査・調査項目（心電図検査、眼底検査、蓄尿、食事調査等）と認知症発症との関連を分析する。
結果と考察
先行課題において明らかとなった問題点として、各リスクファクターと認知症との関連は、健診時年齢による交互作用が存在し、概ね健診時年齢が70歳以上となるとリスクファクター自体が年齢の影響を受けて関連が検出しにくくなることがあり、これを克服するため今後の対象者の集積に当たっては健診時年齢が70歳未満の者（目標対象数1000症例対照）を優先することとした。これに従い、平成24年度は、健診時年齢70歳未満の症例対照114例を追加同定し、新しいバイオマーカーの測定を行うとともに、これらと健診時のリスクファクターのデータを含む分析用データベースを整備した。そして、従来の健診項目と認知症との関連を中心とした分析を先行的に行い、喫煙、高血圧、糖尿病が認知症のリスクファクターとして同定された。また、降圧剤の服用や禁煙が認知症予防につながる可能性が示された。現在、若手研究者を中心としたライティンググループを組織し、新たに構築したデータベースを用いて、糖尿病、血清コレステロール、血清高感度Ｃ反応蛋白、血清脂肪酸分画について詳細な分析を行い、論文投稿に向けて準備を進めている。したがって、研究は当初の研究計画に従って、順調に進捗している。
結論
ベースライン時年齢70歳以下を中心とする分析データベースを整備し、従来の健診項目と認知症との関連を中心とした分析を行った。本データベースを核として、心電図や眼底、蓄尿、食事調査等のデータを用いて、新しい危険・抑制因子の同定を進める体制が整った。
公開日・更新日
公開日
2013-06-05
更新日
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