認知機能低下高齢者への自立支援機器を用いた地域包括的システムの開発と評価

文献情報

文献番号
201218008A
報告書区分
総括
研究課題名
認知機能低下高齢者への自立支援機器を用いた地域包括的システムの開発と評価
課題番号
H23-認知症-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 細井 孝之(国立長寿医療研究センター)
  • 亀井 智子(聖路加看護大学老年看護学講座)
  • 渡辺 修一郎(桜美林大学大学院老年学研究科)
  • 植木 章三(東北文化学園大学大学院健康社会システム研究科)
  • 稲葉 陽二(日本大学法学部)
  • 松本 真澄(首都大学東京大学院・都市環境科学研究科)
  • 田中 千晶(桜美林大学健康福祉学群)
  • 野中 久美子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
  • 深谷 太郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
12,023,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 急増する独居の認知機能低下高齢者の自立生活を支援するためには、多様なリスクをより早期に発見し、健康障害や生活機能低下を予防することが重要である。地域包括ケアシステムにおいて、独居高齢者の孤立を予防し、安心・安全な自立生活を支える仕組みとして、(1)社会活動への参加の促進によるネットワークづくり、(2)近隣や友人、別居家族との交流を通じたネットワークによる声かけ・見守り、(3)行政や民間サービスによる異変察知・緊急通報システム等ハード面の整備、を地域自立生活支援のための三層のディフェンスラインを仮定する。本研究は(3)に着目し、予防的支援機器を開発・導入することで、地域包括支援センターや介護事業者等(以後、地域ケア機関)が効果的・効率的に1)対象者の日常行動パターンを把握し、2)通常パターンからの逸脱を早期に察知し、生活・健康障害の予防に活用できるシステムを呈示することを目的としている。
研究方法
 本システムは、赤外線人感センサー(以後、見守りセンサー)により対象者の行動をモニタリングし、行動変化を定量的に捉えるアルゴリズムを開発し、変化信号をコールセンターに提供する。コールセンターから地域ケア機関、家族等に必要な情報を提供する。本研究を大別すると、データの利用を図るプロセス研究としての【第1部】と、データを解析して地域ケア機関にフィードバックする基礎情報作成の【第2部】に分けられる。本年度は、【第1部】としては見守りセンサーを用いた地域包括支援システムの1年間にわたるパイロット試験のプロセスと対象者や地域ケア機関職員による評価を示した。【第2部】では、見守りセンサーにより把握すべき、トイレ使用、就寝・起床や室内・室間移動についての基礎的分析を行った。
結果と考察
 【第1部】からは、パイロット試験対象者に1年後第二回調査を実施し、対照群のHDS-Rが有意に低下し、見守りセンサーへの抵抗感は、設置後6か月で低下した。心理的健康指標はいずれも対照群で増悪、介入群では維持・改善傾向を示すことがわかった。地域ケア機関担当者は、介入群の対応事例については、見守りセンサーのデータおよび月次レポートで示される外出頻度、夜間のトイレ回数、または全体のセンサー検知回数(一日総活動量)により日常生活のパターンや実態を的確に把握できた。更に、本人・家族の生活情報、ニーズアセスメント、生活上の課題、モニタリング内容のアセスメント、モニタリング内容を判断するためのアルゴリズム、成果の評価等で構成するJ-DASH (ver.1)(42項目)を作成した。施設高齢者を対象に、見守りセンサーで検知したデータと介護記録の照合結果からは、身体的な健康状態や夜間の精神的な症状を把握できる可能性が示された。
【第2部】からは、トイレ回数が個人間変動、季節変動、日内変動に有意に関連した。起床時間は約50%、就寝時間は約20%把握可能であった。また、家の中に寝室空間がある人ほど、就寝時間を把握しやすかった。第一居室での滞在時間は介護度や可動面積との間に一定の関係が見られた。更に部屋間移動の所要時間の緩やかな季節変動を長期変化から抽出できた。
 パイロット試験において、地域ケア機関担当者は、総活動量などセンサーからの主要情報により高齢者の日常生活のパターンや実態を的確に把握できた。それにより、地域ケア機関担当者は、高齢者の健康課題の実態を把握し的確かつ迅速に対応することができていた。さらに、生活リズムを把握することにより、高齢者の体調悪化や認知症症状の進行のリスクの有無をモニタリングすることもできていたと考えられる。
 多忙な地域ケア機関職員が、これら支援機器を信頼し、有効活用するには本見守りセンサーの機能の信頼性の担保と利用範囲について精査することが求められる。本見守りセンサーで検知したデータと介護記録の照合の結果から、データの信頼性を確認したところ、身体的な健康状態や夜間の精神的な症状・行動は把握できる可能性が示唆された。
結論
 1年間のパイロット試験を通して、見守りセンサーとコールセンターを介したシステムの安定した運営が可能になった。
 独居の認知機能低下高齢者における本人の心理的評価は概ね可能であるが、認知・生活機能の評価については、容易ではない。むしろ、体系化された評価バッテリーを開発して、地域ケア機関職員を中心としたアセスメントを行うことが有効である。
また、認知機能低下高齢者の状況を客観的に把握するために、トイレ使用、睡眠状況、室内・室間の移動についての評価方法が一部示された。

公開日・更新日

公開日
2013-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201218008Z