認知症の包括的ケア提供体制の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201218005A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の包括的ケア提供体制の確立に関する研究
課題番号
H22-認知症-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
鳥羽 研二(独立行政法人国立長寿医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 鷲見 幸彦(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 服部 英幸(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 遠藤 英俊(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 小長谷 陽子(認知症介護研究・研修大府センター)
  • 荒井 由美子(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 朝田 隆(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 秋下 雅弘(東京大学大学院医学系研究科)
  • 武田 雅俊(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部)
  • 櫻井 孝(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 木之下 徹(医療法人こだま会)
  • 山口 晴保(群馬大学大学院保健学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
12,130,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在約400万人とされ今後も増加が予測される認知症のケアに対する包括的かつ実効的な対策を確立する。
研究方法
1) 包括的診療施設の稼働開始:長寿医療研究センターにBPSD入院を含む、もの忘れセンターを開設し、中核症状、周辺症状、BPSD、IADL、BADL、身体合併症の重症度別頻度を調査する。(鳥羽、櫻井)
2) 認知症疾患センターの評価基準(MSD50)の作成を行い、これら用いて診療所の評価(平成23年度)、認知症センターの質の評価(平成24年度)を行う(粟田)
3) 地域包括支援センターの機能評価(CSD30)の開発(粟田)
   地域包括支援センターの相談調査(小長谷)
   介護保険サービスの満足度調査(荒井)
4) 周辺症状への対応方策の検討(服部)
5) 認知症サポートチームの試み(鷲見)
6) 認知症への偏見調査(木之下)  
   家族の認知症への理解を深める 家族教室と効果の研究(神崎)
7) 栄養と予防:認知症のリスクとして横断研究で発表した低下した食品摂取の多様性   を向上させるため、介護者の行動変容は有効か調査した(秋下)
   非薬物療法の効果をRCT(武田)
   近赤外線分光法を用い、ワーキングメモリーに対する反応研究
8) 地域での多職種連携への応用(山口)
結果と考察
老人性痴呆疾患センターと同じ評価項目を用いて比較を行った 
空床確保、救急対応、電話相談件数、面接相談件数、アルツハイマー型認知症の診断件数、他医療機関への紹介件数を用い、10点満点で診断。老人性痴呆疾患センターの調査は、0点が最も多く、全く活動していないで補助金を得ているところが大半であった。 今回は、4点の以下の活動性の低いセンターは、15箇所あったものの8点が最頻値で、センター機能は大幅に改善していた。 一方、診断件数においてはバラつきがあり、年間50件未満の施設も散見されるなど、認知症疾患医療センターの認可基準に疑問がもたれる. 認知症疾患医療センターが、精神病院の入院受け皿になっているという批判がある。認知症疾患医療センターの入院日数を比較すると、精神科病院のセンターでは、2ヶ月以内退院は26%(中央値)であり、総合病院は88%が2ヶ月以内に退院しており、在院機関は精神病院で有意に長かった(p<0.001)。BPSDの程度に差があるかどうかは、今後の検討課題。 精神科病院から紹介になった身体疾患患者の治療に関して、当院の認知症治療病棟で治療を行った結果、精神科病院への再入院を減らすことができた。
認知症疾患医療センターが介在すると精神病院からの早期退院促進の一助となる可能性がある.
在宅患者の生活自立度(ADL)、栄養評価、意欲等の総合的機能評価(CGA)について認知症の有無により比較検討した。この結果、認知症合併症例では低ADL、意欲低下、低栄養への対応がより重要であることが明らかとなった。
 認知症の進行に伴い低下するIADL、ADLの順序が判明した。また症状では、進行に伴い増加する老年症候群、減少する老年症候群(かゆみ、痛み)などが初めて明らかになり、ケアプラン策定に有用な所見を得た。
 認知症医療の評価基準(MSD50)を用いて診療所の評価を行い、サポート医師研修と対応力向上研修の著明な効果が明らかになった。一方地域における認知症患者が家族からも差別を受けている実態が判明した。
結論
#認知症ワンストップサービスモデル(もの忘れセンター)は、本研究班の全体像を具現化したもので、経済性、応需要性(患者数)、新規性(研修見学、実習依頼、取材)、科学性(論文、特別講演依頼)いずれをとっても、本邦随一であり、世界でも類を診ない意義深い成功。
#認知症の予防 介護者の食行動変容が、患者の食行動変容につながり、認知機能への好影響を与える実証研究に繋がる。
#ケア BPSDの初期対応の系統化、ガイドライン発刊は、類を見ない企画で評価を受けているが、今後これを用いた認知症サポートの効果をあげるかの研究に発展。
#介護負担 家族教室等により患者と家族を支援することで、介護負担が軽減する。 新しい介護負担評価方法の開発に発展性がある。
# 認知症の包括的ケアの知識は、認知症疾患医療センターの評価にとどまらず、国の認知症政策の一貫性や評価指標として有用なツールに発展可能である。

公開日・更新日

公開日
2016-09-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-12-18
更新日
-

文献情報

文献番号
201218005B
報告書区分
総合
研究課題名
認知症の包括的ケア提供体制の確立に関する研究
課題番号
H22-認知症-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
鳥羽 研二(独立行政法人国立長寿医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 鷲見 幸彦(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 服部 英幸(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 遠藤 英俊(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 小長谷 陽子(認知症介護研究・研修大府センター)
  • 荒井 由美子(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 朝田 隆(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 秋下 雅弘(東京大学大学院医学系研究科)
  • 武田 雅俊(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 粟田 主一(東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部)
  • 櫻井 孝(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 木之下 徹(医療法人こだま会)
  • 山口 晴保(群馬大学大学院保健学研究科)
  • 三浦 久幸(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
  • 北川 公子(茨城県立医療大学保健医療学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在約400万人とされ今後も増加が予測される認知症のケアに対する包括的かつ実効的な対策を確立する。
研究方法
1) 包括的診療施設の稼働開始:長寿医療研究センターにBPSD入院を含む、もの忘れセンターを開設し、中核症状、周辺症状、BPSD、IADL、BADL、身体合併症の重症度別頻度を調査する。
2) 認知症疾患センターの評価基準(MSD50)の作成を行い、これら用いて診療所の評価(平成23年度)、認知症センターの質の評価(平成24年度)を行う
3) 地域包括支援センターの機能評価(CSD30)の開発
   地域包括支援センターの相談調査
   介護保険サービスの満足度調査
4) 周辺症状への対応方策の検討
5) 認知症サポートチームの試み
6) 認知症への偏見調査 
   家族の認知症への理解を深める 家族教室と効果の研究(
7) 栄養と予防:認知症のリスクとして横断研究で発表した低下した食品摂取の多様性を向上させるため、介護者の行動   変容は有効か調査
   非薬物療法の効果をRCT
   近赤外線分光法を用い、ワーキングメモリーに対する反応研究
8) 地域での多職種連携への応用
結果と考察
BPSD入院を含むすべてのモデルを立ち上げ、横断調査を完了。認知症の進行に伴い低下するIADL、ADLの順序が判明。進行に伴い増加、減少する老年症候群などが初めて明らかになり、ケアプラン策定に有用な所見を得た。認知症医療の評価基準を用いて診療所の評価を行い、サポート医師研修と対応力向上研修の著明な効果が明らかに。認知症患者が家族からも差別を受けている実態が判明。家族の負担を軽減するため、家族の教育と支援に資する認知症の巣症状と生活機能の記述が進捗し、経過によるBPSDの変化も横断的データが得られた。これを生かした認知症サポートチームが稼動したが、一般病棟からのオーダーは少なく、ラウンド方式に変更した。介護保険のサービスに対する不安は強く、地域包括2448ヶ所調査でも、患者への対応がわからないという相談が多く、BPSD、ADL障害などへの対応マニュアルの整備向上が喫緊の課題。 介護者の行動変容が患者の食生活改善に役立つデータが得られた。 介護施設における非薬物療法の効果をRCTで示し、中等度以上に効果が強いことを示した。近赤外線分光法を用い、ワーキングメモリーに対する反応からMCIを鑑別できる成績を得た。 過去の老人性痴呆疾患センターの調査は、0点が最も多く、全く活動していないで補助金を得ているところが大半であった。 今回は、4点の以下の活動性の低いセンターは、15箇所あったものの。8点が最頻値で、センター機能は大幅に改善していた。 一方、診断件数においてはバラつきがあり、年間50件未満の施設も散見されるなど、認知症疾患医療センターの認可基準に疑問がもたれる.
認知症疾患医療センターの入院日数を比較すると、精神科病院のセンターでは、2ヶ月以内退院は26%(中央値)であり、総合病院は88%が2ヶ月以内に退院しており、在院機関は精神病院で有意に長かった(p<0.001)。 両者には、認知症診断名の内訳に差はなく、BPSDの程度に差があるかどうかは、今後の検討課題である。 精神科病院から紹介になった身体疾患患者の治療に関して、当院の認知症治療病棟で治療を行った結果、精神科病院への再入院を減らすことができた。
認知症疾患医療センターが介在する効果と考えることも可能であり、精神病院からの早期退院促進の一助となる可能性がある. 介護サービスに対する不安について、因子分析を用いて分類を行い、制度利用に対する不安と、サービス内容に対する不安の2因子が抽出された。




結論
#認知症ワンストップサービスモデル(もの忘れセンター)は、本研究班の全体像を具現化したもので、経済性、応需要性(患者数)、新規性(研修見学、実習依頼、取材)、科学性(論文、特別講演依頼)いずれをとっても、本邦随一であり、世界でも類を診ない意義深い成功。
#認知症の予防 介護者の食行動変容が、患者の食行動変容につながり、認知機能への好影響を与える実証研究に繋がる。
#ケア BPSDの初期対応の系統化、ガイドライン発刊は、類を見ない企画で評価を受けているが、今後これを用いた認知症サポートの効果をあげるかの研究に発展。
#介護負担 家族教室等により患者と家族を支援することで、介護負担が軽減する。 
# 認知症の包括的ケアの知識は、認知症疾患医療センターの評価にとどまらず、国の認知症政策の一貫性や評価指標として有用なツールに発展可能である。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-12-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201218005C

収支報告書

文献番号
201218005Z