尿マーカーを用いた骨粗鬆症検診の有用性の検証と骨折予防効果に関する研究

文献情報

文献番号
201217021A
報告書区分
総括
研究課題名
尿マーカーを用いた骨粗鬆症検診の有用性の検証と骨折予防効果に関する研究
課題番号
H24-長寿-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
新飯田 俊平(独立行政法人国立長寿医療研究センターバイオバンク)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 清(京都女子大学家政学部)
  • 池田 義孝(佐賀大学大学院)
  • 田中 伸哉(埼玉医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
8,256,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は骨粗鬆症検診(骨検診)の普及・受検率向上に寄与する低コスト検診法の有効性の検証と骨折予防効果の予測を目的としている。わが国の大腿骨近位部骨折の年間推定発症件数は約15万件。社会の高齢化とともに国内の骨折数が右肩上がりにある中、欧米では骨折の発症率は低下に転じている。国内の、骨折予防のための骨検診受検率は極めて低い(約5%)。我々の調査では、検診率の低い理由は、検診コスト・実施方法(5年ごとの節目検診)・依然として存在する骨粗鬆症への無理解などが示された。我々の開発した尿γ-GTPによる検診は、コスト面はBMD検査の1/10。有病者発見を「効果」とした場合の費用対効果はBMD検査の5倍と推定された。そこで今回、健常者も含めた任意の一群について、腰椎・大腿骨のBMD測定等を行い、尿γ-GTP検査の有効性を検証する。また、検診のゴールである骨折予防を「便益」とした費用対便益を試算する。加えて、さらに費用のかからない問診による検診効果や自治体保健センターに1台は設置されている体組成計を用いた検診法などについて検討する。本検診法の科学的根拠については、生化学的な手法を用い、尿γ-GTPのソースと考えられる尿細管の細胞を用いた研究を行う。
研究方法
骨折予防による費用対便益を明らかにするには長期間の追跡が必要となるが、本研究では前回課題の調査研究で実施した骨検診受検者約5,600人のうち、二次検診の受検者のフォローアップ調査を行い、医療機関での診断結果・投薬の開始の有無などを調査する。それらの結果を基に、将来の骨折回避を便益としたγ-GTP検診の費用対便益を試算する。本年度は受検者からの聞き取り調査を主として行った。
検診の精度を評価するには、検診で「正常」と区分された者の骨密度の確認が必要となる。東浦町女性住民(45歳以上)ボランティア99人について、γ-GTP検診のほか、腰椎・大腿骨骨密度の測定、問診、レントゲン検査等を実施し、γ-GTP検診の評価を行った。また、γ-GTP検診の弱点は擬陽性の検出が多い点である。これまでの調査で、筋量の多い被験者が擬陽性になる傾向が示唆されたことから、今回体組成計の計測項目(体重・BMI・筋肉量など)から、擬陽性を補正する有効なパラメータの探索を行った。さらに、費用のかからない問診のみでの骨検診効果を検討した。
本検診法の理論を生化学的に検証するため、ヒト近位尿細管上皮細胞株HK-2細胞およびブタLCC-PK細胞を用い、Aキナーゼ阻害剤によるγ-GTP遊離の変化を検討した。
結果と考察
前課題で実施したモデル骨検診受検者のうち、要精査区分は2253人。うち742人(33%)が医療機関での二次検診を受けていた。それらのち、150人(20%)が骨粗鬆症、225人(30%)が骨量減少症と診断されており受診者の50%が罹患者あった。現在、将来の骨折予防効果を推定する目的で、罹患者の服薬情報などを調査している。尿γ-GTP骨検診の正診率を検証する目的で99人のボランティアの検診を実施した。このうち治療薬の服用のない87人について評価した結果、γ-GTP値は骨量減少症と相関することが示めされたが、骨粗鬆症との相関は低かった。しかし、検診は病気の早期診断を目的とするものであるから、この結果はむしろγ-GTP検診の有効性を支持するものと言える。
γ-GTP検診の弱点を補うパラメーターを体組成計の測定項目から検索した。しかしながら、γ-GTP値を補足する適当なパラメーターは見つからなかった。一方、問診での骨検診効果を評価した結果、簡易版FRAXが高い確立で有病者を検出し、若いときの身長から現在の身長を差し引く身長差検診も腰椎圧迫骨折を検出する有効な手段であることが示された。生化学的研究では、cAMPに依存する細胞からのγ-GTPの遊離があることが示唆された。
結論
1.尿γ-GTP骨検診がスクリーニングした罹患者は二次検診受検者の半数であった。
2.尿γ-GTP骨検診は骨量減少症のスクリーニングに有効である。
3.体組成計の測定項目に尿γ-GTP値を補正するパラメーターはなかった。
4.問診は有効な骨粗鬆症検診法である可能性が高い。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201217021Z