介護予防事業の進捗管理と効果評価のためのデータ整備に関する研究

文献情報

文献番号
201217019A
報告書区分
総括
研究課題名
介護予防事業の進捗管理と効果評価のためのデータ整備に関する研究
課題番号
H24-長寿-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
辻 一郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,317,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自治体・社会環境(地域)・個人の3つの視点で、介護予防の進捗管理と効果評価を行うためのデータセットを確立し、その活用方策を提示する。自治体の視点では、介護予防のサービス提供量と要介護認定率・給付費の推移との関連を解析して、介護予防の効果と費用対効果を検証する。社会環境の視点では、地域における介護予防資源の需給バランスをGeographic Information System(GIS)分析で検討する。個人の視点では、地域高齢者のコホート研究をもとに高齢期の生活習慣・生活行動が要介護認定リスクに及ぼす影響を検討する。これらを通じて、介護予防事業の効果と効率のさらなる改善に資するエビデンスを提供する。
研究方法
自治体の視点:全国1,627ヵ所の介護保険者を対象に、公的統計データを用いて平成18~21年度の特定高齢者施策(二次予防事業)の平均利用率と平成21・22年度の高齢人口あたりの新規要介護認定の割合(新規要介護認定率)との関係をエコロジカル研究の手法で検討した。
社会環境の視点:仙台市における平成23年度の二次予防事業対象者11,835名に関する連結不可能匿名化データ(年齢、性、丁目・字レベルまでの住所、中学校区、基本チェックリストの該当分野)の提供を仙台市から受けた。既存の人口データを分母として、中学校区ごとの高齢人口あたりの二次予防事業対象者の割合を算出し、GIS分析によりグラフ化した。
個人の視点:大崎コホート2006研究(宮城県大崎市の65歳以上男女21,370名を対象に、平成18年にアンケート調査を実施し、生存状況と介護保険認定を追跡)を用いて、口腔ケアと日本食パターンが死亡リスク・要介護発生リスクに及ぼす影響を検討した。さらに、鶴ヶ谷10年後調査として、平成14・15年に仙台市鶴ヶ谷地区で実施した高齢者調査の参加者を対象に、心身の健康状態と生活習慣などを調査した。
すべての研究は「疫学研究に関する倫理指針」を遵守しており、所属施設の倫理委員会の承認を受けている。
結果と考察
自治体の視点:全認定区分の新規要介護認定率は、特定高齢者施策の利用率が高い群ほど有意に低かった。区分別にみると、有意な関連は軽度(要介護1以下)でのみ認められた。以上より、特定高齢者施策が軽度要介護認定者の増加を抑制する可能性が示唆された。
社会環境の視点: 仙台市全体での高齢人口あたり(65-89歳)の調整済み二次予防事業対象者割合は12.1%で、全国平均(9.4%)より高かった。中学校区別にその割合を比べると、同じ仙台市内でも、最低1.4%から最高23.9%と大きなバラツキがあった。特に宮城野区西部、仙台市西部、太白区中部で二次予防事業対象者割合が高かった。その要因を検討している。
個人の視点:(1) 口腔ケアと死亡リスクに関する研究=残存歯数の少ない者ほど、死亡リスクは有意に増加した。そこで、定期的な歯科通院の有無別に分析すると、多変量調整HR(95%CI)は、「10~19本かつ歯科通院あり」で1.02 (0.86-1.12)、「0~9本かつ歯科通院あり」で1.09 (0.95-1.26)と、残存歯数20本以上の者との間で有意差を認めなかった。一方、「10~19本かつ歯科通院なし」で1.42 (1.19-1.69)、「0~9本かつ歯科通院なし」で1.45(1.27-1.65)と、死亡リスクが有意に増加した。この関連は歯磨きや入れ歯でも同様だった。以上より、残存歯数が少ない者において、口腔ケアによる死亡リスクの増加抑制の可能性が示唆された。
(2) 日本食パターンと要介護発生リスクに関する研究=「米飯」「みそ汁」「魚類」「大豆類」「海草」「漬け物」「緑茶」を構成要素とした日本食パターン得点の最低4分位群を基準群とした場合、要介護発生の多変量調整ハザード比(95%CI)は、「3-4点」で0.84 (0.73-0.96)、「5点」で0.74 (0.63-0.87)、「6点以上」で0.64 (0.54-0.76)と、有意なリスク減少を認めた。以上より、日本食パターンの高い者ほど要介護発生リスクが減少することが示された。
(3) 鶴ヶ谷10年後調査の進捗=平成14・15年に高齢者総合機能評価を受けた当時70歳以上の高齢者1,445名のうち、住民票で所在が確認できた1,014名にアンケート調査を実施し、796名(88%)から回答があった(平均年齢83.1歳)。平成14・15年の結果と平成24年回答とを比較検討した。
結論
自治体・社会環境(地域)・個人の3つの視点で、介護予防の進捗管理と効果評価を行うためのデータセットを確立し、上記の結果を得た。本研究班の進捗は予定通りであり、阻害要因もない。

公開日・更新日

公開日
2013-07-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201217019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,712,000円
(2)補助金確定額
14,712,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 622,503円
人件費・謝金 5,566,402円
旅費 89,890円
その他 5,038,205円
間接経費 3,395,000円
合計 14,712,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
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