文献情報
文献番号
201217010A
報告書区分
総括
研究課題名
先進的自立支援機器を用いた介護予防の効果検証
課題番号
H23-長寿-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 隆雄(独立行政法人国立長寿医療研究センター 所長室)
研究分担者(所属機関)
- 原田 敦(独立行政法人国立長寿医療研究センター 病院)
- 下方 浩史(独立行政法人国立長寿医療研究センター 研究所)
- 島田 裕之(独立行政法人国立長寿医療研究センター 研究所)
- 大渕 修一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 研究所)
- 吉田 英世(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 研究所)
- 金 憲経(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
27,964,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢者の老化に伴う移動能力の低下・障害は容易に要支援レベルとなるだけでなく、それ以降の障害を律速することから、移動能力の保持・機能向上は介護予防(介護の重度化予防)の基本であり、その予防対策は極めて重要となる。本研究では、この介護予防の根幹である移動能力の低下予防を最重要課題と位置づけ、各種の運動やトレーニングのみならず、近年著しい技術的進歩を遂げている先進的機器を用いた新たな介護予防のためのスクリーニング方法と介入プログラムの開発を目的としている。
研究方法
地域高齢者を対象としてRTCを用いた介入研究である。具体的には、地域在住高齢者を対象とした大規模スクリーニング検査を平成23年度に実施し、平成24年度は、抽出された虚弱高齢者に対する介入研究を実施した。平成25年5月に介入は終了し最終評価を実施していく。現在まで研究は予定通り進行しており問題はない。平成25年度は、要支援、要介護高齢者に対するリズム歩行アシストの効果検証を実施予定であり、介入施設の選定や人選を進めている。研究の最終年度である平成25年度には、いままでの研究の知見に基づいて地域在住の虚弱高齢者、要支援、要介護高齢者に対する先進的機器を用いた介護予防マニュアルを作成する予定である。スクリーニング指標の検討に関する研究は、愛知と東京の既存コホートのデータを用いた解析であり、研究の実施に支障なく進行できている。
結果と考察
平成24年度は、本田技術研究所が開発したリズム歩行アシストを用いて高齢者の運動機能向上に対する効果検証を実施した。また、虚弱高齢者のスクリーニング方法の検討を行った。介入研究の対象者は、平成23年度に実施したスクリーニング検査により虚弱と判定された232名とした。対象者はランダムに対照群、歩行群、アシスト群に割り付けられた。歩行群とアシスト群には、介入開始から3ヵ月間、1回90分の運動介入プログラムを週2回の頻度で実施した(計24回)。プログラムの内容は、準備・整理体操に関する指導や歩き方に関する指導、日常の身体活動増加を目的とした行動変容などから構成され、アシスト群はリズム歩行アシストを装着して歩行運動を実施した。対照群に対しては、3ヵ月の間に健康講座を1回開催した。その結果、歩行群とアシスト群において、運動機能、活動能力、疼痛緩和、生活の質が介入後に有意に良好な値を示したが、2群間での差は認められなかった。運動による効果は認められたものの、先進的介護予防機器が通常の運動と比較して有効であるかどうかは、短期間の介入では明らかとならなかった。リズム歩行アシストは、身体に負荷をかけてトレーニングするための機器ではなく、歩行時のリズムを整えて歩行効率を向上させるための運動学習に有効な機器であり、その効果は短期間では認められなかった可能性がある。今後も介入を継続してリズム歩行アシストの長期効果を検討していく必要がある。
結論
虚弱のスクリーニングに関しては、慢性疾患、体格、栄養状態、体力指標や膝関節動揺性、踵骨骨量が日常生活機能に関連することが明らかになり、高齢者の虚弱を捉える上で重要な指標になりうると考えられた。介入に関する知見については、平成25年に実施予定の最終評価の結果により、虚弱高齢者に対するリズム歩行アシストの有効性が明らかとなれば、現在厚生労働省で検討されている介護保険制度下での先進的機器の導入における候補機器として考えることが可能となる。また、スクリーニング方法に関する知見については、全国の自治体で実施されている介護予防事業等の対象者選定や効果判定指標の候補として周知、活用が可能である。
公開日・更新日
公開日
2013-07-16
更新日
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