非小細胞肺癌に対するNKT細胞を用いた免疫細胞治療の開発研究

文献情報

文献番号
201216013A
報告書区分
総括
研究課題名
非小細胞肺癌に対するNKT細胞を用いた免疫細胞治療の開発研究
課題番号
H24-被災地域-指定(復興)-013
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
本橋 新一郎(千葉大学 大学院医学研究院(未来医療教育研究センター 兼任))
研究分担者(所属機関)
  • 吉野 一郎(千葉大学 未来医療教育研究センター 大学院医学研究院 呼吸器外科学 )
  • 中山 俊憲(千葉大学 未来医療教育研究センター 大学院医学研究院 免疫学 )
  • 花岡 英紀(千葉大学 未来医療教育研究センター 医学部附属病院 臨床治療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 原発性肺癌は発生頻度が高く、予後不良であり、新規治療法の開発が求められている。そこで千葉大学では強力な抗腫瘍効果を持つnatural killer T (NKT) 細胞とその特異的リガンドα-galactosylceramide (αGalCer)に着目し、体内でのNKT細胞活性化を目指すαGalCerパルス樹状細胞療法の開発研究を行っている。本研究では、切除不能進行期もしくは再発非小細胞肺癌に対するαGalCerパルス樹状細胞の静脈内投与に関する第Ⅱ相臨床研究を行い、その有効性や安全性、NKT細胞特異的免疫反応を検討することを目的とする。また、本臨床研究を適切に遂行していくため、ICH-GCP基準の臨床試験実施体制の整備を行い、これに基づく試験を展開する。
研究方法
 切除不能進行期または再発非小細胞肺癌の確定診断をにて、初回化学療法増悪の症例に対して同意取得後に成分採血を行い、3~4×10^9個の末梢血単核球を採取、決められた手順書に従って細胞培養を行った。投与のための最終検査(細胞数、生存率、エンドトキシンの測定)に合格したαGalCerパルス樹状細胞を培養7日目と14日目に点滴静注した。これを1コースとして計2コース施行した。主要評価項目として全生存期間、副次評価項目としてRECIST ver.1.1に基づく抗腫瘍効果の判定、無増悪生存期間、CTCAE ver. 4.0を用いた安全性の評価、NKT細胞特異的免疫反応の検出を行った。投与した培養細胞は表面抗原発現の解析を行った。また臨床試験の施行にあたり実施体制、モニタリング体制、監査体制およびデータマネージメントの整備を行い、これに基づいて試験を実施した。
 本研究の実施にあたり、千葉大学大学院医学研究院倫理審査委員会による承認を受けている。また全ての被験者に対し口頭ならびに文書によるインフォームドコンセントを得ている。
結果と考察
 2013年3月末までに9名を登録し、αGalCerパルス樹状細胞の調製を行った。その結果、実施した全ての培養において目標細胞数を投与可能であった。7名でプロトコール治療を完遂、1名は1コース終了時点で明らかな腫瘍の増大を認めたため本治療の無効例であると判断しstudy off、1名は進行中である。本臨床研究の主要評価項目である全生存期間は、1例において12ヶ月経過時点での原病死を認め、他の症例に関しては現在のところ生存が確認されている。今後プロトコールに沿って継続して追跡調査を行う予定である。プロトコール治療の終了した8例における臨床効果は、完全奏功(CR)0名、部分奏功(PR)1名、安定(SD)4名、進行(PD)3名であった。PDの1例では原発巣は治療後に55%の縮小を認めたが、新規病変出現のためPDと判定された。安全性の評価としては、1例で急速な原病悪化に伴うグレード3の癌性疼痛を認めたが、他の症例においてはグレード2以上の有害事象を認めず、安全に施行することが可能であった。
末梢血を用いた免疫モニタリングとして、樹状細胞投与により8例中5例で1.5倍以上の有意なNKT細胞の増加を認め、臨床効果がPRであった症例3においてのみ1コース目と2コース目の両方で有意な上昇が確認された。臨床効果を誘導するためには全身的なNKT細胞特異的免疫反応の誘導が重要であり、これらのモニタリングが細胞投与と臨床効果の関係を証明する手段となり得ると考えられた。また各症例の培養細胞における樹状細胞に関連する表面抗原は多様な発現率を示しており、これまでのところ末梢血NKT細胞の増加率ならびに腫瘍縮小効果との相関を認めていない。
 臨床試験の実施において、プロジェクトを管理する専任のスタッフを配置し進捗管理・有害事象の確認等を行った。また、モニタリング業務、システムを含めた監査、データマネジメント業務を実施した。専門性をもつスタッフと責任医師等の研究チームが形成され、モニタリング・監査・データマネジメント業務により試験の質の確保とデータの信頼性の向上が図られた。研究遂行にはチーム内の連携が不可欠であるため、本研究において今後効果的な方法を確立していく必要があると考える。 
結論
 非小細胞肺癌に対するNKT細胞を用いた免疫細胞治療の臨床研究をICH-GCP基準として実施するための体制整備を行い実施中である。これまでのところ進行・再発肺癌患者末梢血より、プロトコール治療に必要なαGalCerパルス樹状細胞の調製は可能であり、安全に施行できると考えられた。一部の症例においては有意な腫瘍縮小も認め、NKT細胞特異的免疫反応との関連も認められることから、本治療アプローチの有効性が示唆された。今後もプロトコールに沿って症例登録を継続し、データを蓄積していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201216013Z