重症低血糖発作を合併するインスリン依存性糖尿病に対する脳死および心停止ドナーからの膵島移植

文献情報

文献番号
201216012A
報告書区分
総括
研究課題名
重症低血糖発作を合併するインスリン依存性糖尿病に対する脳死および心停止ドナーからの膵島移植
課題番号
H24-被災地域-指定(復興)-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 満一(公立大学法人福島県立医科大 臓器再生外科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 昌史(東北大学未来科学技術共同研究センター)
  • 圷 尚武(国立病院機構 千葉東病院 臨床研究センター)
  • 安波 洋一(福岡大学 再生・移植医学講座)
  • 上本 伸二(京都大学大学院医学研究科 外科)
  • 伊藤 壽記(大阪大学大学院 生体機能補完医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳死または心停止後に提供された膵臓から分離された膵島組織をインスリン依存状態糖尿病患者に移植する膵島移植療法において、同種性膵島移植片に対する免疫反応制御のための新規免疫抑制療法の臨床効果及び安全性の評価である。
インスリン依存状態糖尿病患者の日常生活に著しい障害を来す血糖不安定性からの解放を目指し、血糖感受性にインスリン分泌を可能にする治療として、膵臓移植と膵島移植という移植医療が位置づけられている。臓器移植である膵臓移植は、1型糖尿病の治療の一選択肢としてすでに確立しているが、血管吻合を伴う難易度の高い開腹手術を必要とし、移植手術そのものに起因する合併症も少なくない。一方、組織移植に分類される膵島移植は、提供された膵臓から分離された膵島組織を、点滴の要領で門脈内に輸注する先進的な低侵襲治療である。しかし、これまでのプロトコールでは長期成績の改善が必要とされ、欧米を中心に新たな免疫抑制プロトコールが探索されている。
研究方法
血糖不安定性を持つ重症インスリン依存状態糖尿病に対して、新規免疫抑制療法による膵島移植を複数回(3 回まで)実施する。初回移植では導入時に抗胸腺細胞グロブリン(二回目以降はバシリキシマブ)、維持にタクロリムス(またはグラセプター)あるいはネオーラル、およびミコフェノール酸モフェチルを用いる。各回導入時には抗TNFα抗体も投与する。また、腎移植後の膵島移植例では維持療法は変更せず、導入療法のみを追加する。
結果と考察
これまで100例を超える待機患者に対して、臨床試験参加希望者を募った。そのなかで、適格と推測できる症例に対して、約1ヶ月の糖尿病の治療経過とともに、入院を必要とする詳細な登録前検査を行い、15名の一次症例登録が完了し移植待機の状態となっている。新規免疫抑制療法を用いるという臨床試験であることから、レシピエントの安全性を確保し本治療法の有効性を明らかにするために選択基準及び除外基準を厳格に規定し、それに基づきデータセンターとともに各参加施設で、基準に適合しているかどうかを詳細かつ確実にレシピエント登録を実施してきたため、これまでの登録作業には一定の時間を要した。平成24年6月1日よりドナーが発生時には臨床膵島移植が実施できる体制が整った。平成24年10月1日から3月31日までは、5件のドナー情報があり、膵島移植に向けて、膵島提供の説明および膵島分離の待機をおこなったが、経過中ドナーの状態が移植に適していないとの最終判断で膵島分離・移植には至っていない。臨床試験は平成29年4月末まで継続されるため、引き続きドナー情報の収集と、移植の実施を行う。
結論
膵提供数が想定より少ないが、この臨床試験が当初心停止ドナーを対象にしていたため、臓器移植法改正後の心停止ドナーの減少にともなう膵臓提供減少の影響を受けてきたことが一要因と考えられた。この状況を勘案し、ドナーソースの拡大を目的に、脳死ドナーから提供された膵臓で膵臓移植に適さない場合に、その臓器を膵島移植に用いることができるよう臨床試験のプロトコールを変更した。変更点については先進医療会議で審議され、平成25年3月1日に先進医療Bとしての承認の告示をいただいた。脳死ドナーを含めた膵島移植として臨床試験を実施することにより、平成25年度以降は、分離・移植症例数の増加が見込まれる。

公開日・更新日

公開日
2013-08-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201216012Z