文献情報
文献番号
201216011A
報告書区分
総括
研究課題名
重症虚血性心疾患に対する低出力体外衝撃波治療法の開発
課題番号
H24-被災地域-指定(復興)-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 健太(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 下川 宏明(東北大学 大学院医学系研究科 )
- 福本 義弘(東北大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国では、高齢化や生活の欧米化のため、従来の治療法では十分な効果が得られない重症例や複数の疾患を合併する症例が増えている。そのため低侵襲で身体的負担が少なく、かつ有効性の高い新しい治療法が期待されている。私達は、低出力(尿路結石破砕治療に用いる出力の約10%)の衝撃波を用いた侵襲性の低い血管新生療法を開発し、重症狭心症を対象にした基礎研究・臨床試験を行い、その有効性と安全性を確認し論文発表してきた。これらの成果をもとに私達が申請した「重症虚血性心疾患に対する低出力体外衝撃波治療法」は、平成22年7月に高度医療(第3項先進医療)として承認され、同年10月から高度医療としての治療(臨床試験)を行っている。今回の申請では、治験あるいは薬事承認申請に向けたデータ収集を加速することを目的とする。
研究方法
冠動脈カテーテルインターベンション(PCI)や冠動脈バイパス手術(CABG)の適応とならない重症安定狭心症患者、いわゆる『No-option症例』を対象に低出力体外衝撃波治療を行い、3ヵ月後に画像診断や運動負荷試験を行い、効果を評価した。治療は、低出力衝撃波(約0.1 mJ/mm2)を心筋虚血領域の約50ヵ所に1ヵ所当たり200発照射した。この治療を隔日で3回行った。予定症例数は50名とする。
倫理面への配慮として、臨床試験は、東北大学医学系研究科倫理委員会の承認を得た上で行っている。臨床試験の実施に際しては、十分な説明の上、全例から書面で同意を得ており、また、解析データは全て匿名化し、人権擁護上の配慮がなされている。
倫理面への配慮として、臨床試験は、東北大学医学系研究科倫理委員会の承認を得た上で行っている。臨床試験の実施に際しては、十分な説明の上、全例から書面で同意を得ており、また、解析データは全て匿名化し、人権擁護上の配慮がなされている。
結果と考察
平成24年度は重症狭心症症例6例に対して衝撃波治療を行い、平成24年度までの総数は15例となった。初期10例の自覚症状については、狭心症重症度分類であるCCSクラススコアは有意に改善し(2.6±0.2→1.9±0.2, P<0.01)、ニトログリセリン使用頻度は改善傾向を示した(4.5±1.6→1.2±0.3, P=0.05)。私達が既に論文報告をおこなっている2つの小規模臨床試験の結果と同様に、初期10例の成績から、低出力体外衝撃波治療の有効性が示唆された。低出力の体外衝撃波を用いたこの治療法は、麻酔や手術操作が一切不要で非侵襲性であること、必要ならば繰り返し実施可能であること、副作用がないこと、コストが安く医療費の大幅な削減につながること、など数多くの利点がある。本研究により、患者の肉体的・精神的負担の軽減や医療費の大幅な削減により、我が国の活力のある社会の実現に大きく貢献することが期待される。
結論
低出力体外衝撃波治療が、PCIやCABGの適応とならない、いわゆる『No-option』の狭心症症例に対する新しい治療法として期待される。今後、症例数を重ねてデータ収集を加速し、有効性・安全性についてさらに検証を行う。
公開日・更新日
公開日
2013-07-11
更新日
-