造血細胞移植における肝中心静脈閉塞症(VOD)に対する本邦未承認薬defibrotideの国内導入のための研究:第I 相および第II 相試験(医師主導治験)

文献情報

文献番号
201216006A
報告書区分
総括
研究課題名
造血細胞移植における肝中心静脈閉塞症(VOD)に対する本邦未承認薬defibrotideの国内導入のための研究:第I 相および第II 相試験(医師主導治験)
課題番号
H24-被災地域-一般(復興)-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
菊田 敦(公立大学法人福島県立医科大学附属病院 臨床腫瘍センター)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 和夫(国立大学法人浜松医科大学医学部附属病院 臨床研究管理センター探索的臨床研究部門(TR))
  • 堀部 敬三(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
  • 後藤 裕明(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 血液・再生医療科)
  • 福田 隆浩(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科)
  • 谷口 修一(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 血液内科)
  • 吉村 健一(京都大学医学部附属病院 探索医療センター検証部)
  • 木村 利美(東京女子医科大学病院 薬剤部)
  • 田中 千賀(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科)
  • 小川 千登世(公立大学法人福島県立医科大学附属病院 ふくしま国際医療科学センター医療-産業トランスレーショナルリサーチセンター)
  • 渡邊 協孝(独立行政法人国立がん研究センター東病院 臨床試験支援室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
99,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝中心静脈閉塞症(VOD)は肝の類洞内皮細胞障害による静脈閉塞性肝疾患で、重症の場合約80%が死亡転帰をとる致死性の高い造血細胞移植合併症である。現在の国内の治療法は有効性が限定的なだけでなく、副作用としての出血リスクが高い。安全に使用できる唯一の治療/予防薬とされるdefibrotideは欧米オーファン指定薬で、コンパショネートユース使用される標準薬で、2011年Lancetに予防投与有り無しのランダム化比較試験(EPP試験)での有効性が報告された。日本でも2010 年には『医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議』に学会から要望が挙がり、緊急薬として国内導入が強く望まれている。VODに対し、唯一の治療/予防薬で欧米では薬事承認間近であるオーファン薬のdefibrotideについて医師主導治験を実施し、日本人での薬物動態、安全性、有効性を検討し、薬事承認を含めた一般化を目指す。
研究方法
本薬剤はオーファン指定を前提に、ICH-E5 によるFDA 承認申請パッケージを利用して、日本人への臨床情報の外挿可能性を確保するための最小限の追加臨床試験実施による承認を目指す。PMDA事前面談をふまえ、海外健康成人で2010年に行われた52人の循環動態への影響+薬物動態試験でGrade2(CTCAE)以上の有害事象はなかったため、国内でも健康成人男性で薬物動態+安全性確認試験を行い(第I相)、次いで患者対象に連続投与での実行可能性を確認すると同時に、小児薬物動態および一定精度での有効性確認を行うことで“ブリッジ”する戦略とした(第II相)。第I相は薬事戦略相談対面助言で、第II相は後期第II相開始前相談で試験詳細の最終固定を行う。
結果と考察
本年度は、PMDAとの2回の事前面談を経て、平成24年7月13日にPMDAとの医薬品戦略相談対面助言を実施した。これに基づき、非臨床試験の必要性と初期臨床開発戦略の確定、健康成人第I相試験デザインの確定と治験計画書の作成、臨床薬理試験デザインの確定と薬物血中濃度測定系の確立、治験開始準備、第I相試験開始、第1コホート治験薬投与を終了した。当初の予定では第I相試験の第1コホート終了後、効果安全性評価委員会による第2コホート開始承認を受け、第2コホートの登録終了までを予定していたが、治験薬提供者からの治験薬搬入が遅れたため、第1コホートの治験薬投与終了までとなった。平成25年3月4日より第I 相試験第1コホートのスクリーニングを開始し、3月11日より治験薬投与を開始した。Defibrotide 3mg/kg投与においてにおいて、用量制限毒性は認められなかった。また、有害事象として、AST、ALTの軽度の異常変動(上昇)が認められ、治験薬との因果関係は否定できなかった。他の項目においては、有害事象は認められなかった。また、線溶・凝固系においては、TFPIの上昇が見られたが、他の因子はdefibrotideによる影響は見られなかった。薬物動態においては、血中濃度は検出限界以下であった。以上のことから3mg/kgにおいて、軽度の肝機能障害が認められたが安全性に問題ないと判断された。第I相試験第2コホート開始は5月となり、5月中に最終症例の観察を終了予定である。
 また、海外製造販売企業によるEMAへの承認申請の結果、2013年3月21日付で、現時点でのEPP試験による承認は困難であるというEMAからの回答を確認した。このため、戦略の変更と第II相試験のデザイン変更を余儀なくされており、現在、小児と成人も含めたVODハイリスク群を対象とし、有効性検証を目標とした国際共同治験としての実施を検討中である。今後、PMDAとの対面助言を経て、25年度中の第II相試験開始を目指す。
結論
VODの唯一の治療・予防薬であるdefibrotideの薬事承認を含めた一般化の目的のために国内開発計画を企画し、第I相試験を開始した。安全性が確認できれば、有効性検証を目標とした国際共同治験実施を予定している。

公開日・更新日

公開日
2013-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201216006Z