難治性SLEに対するボルテゾミブ療法の有効性・安全性検証試験

文献情報

文献番号
201216005A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性SLEに対するボルテゾミブ療法の有効性・安全性検証試験
課題番号
H24-被災地域-一般(復興)-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 良哉(産業医科大学 医学部)
  • 川上 純(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 山口 拓洋(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 石井 智徳(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 井上 彰(東北大学病院 臨床試験推進センター)
  • 石澤 賢一(東北大学病院 臨床試験推進センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SLEは、腎臓、皮膚、中枢神経、血管などを含む、複数の臓器の障害をもたらす自己免疫疾患の代表疾患であり、難治例は再発を繰り返し、長期にわたりステロイドの大量投与を余儀なくされる。にもかかわらず、関節リウマチと異なりSLEに対する新規薬剤の開発は滞っており、いまなお、ステロイドを中心とした従来の免疫抑制剤しか治療選択がない。この課題を解決するために、難治性SLEに対するボルテゾミブ療法の開発を目指し、医師主導治験を実施することが本研究の目的である。
研究方法
本研究は「難治性SLEに対するボルテゾミブ療法」の安全性・有効性を検証する医師主導治験である。平成24年度は、平成25年度の医師主導治験の開始に向け、1. プロトコール・患者説明同意文書および同意書・CRF (Case Report Form)作成・治験薬概要書作成。2. PMDA対面助言(治験相談)の実施。3. SLEモデルマウスに対するボルテゾミブ薬効の再検証、を行った。PMDAとの協議の結果、25年度-26年度の2年間で14例のSLE患者を対象にRCTのPOC試験を行うことで合意を得た。実施体制については、東北大学病院、長崎大学病院、産業医科大学病院の3施設による多施設共同治験とし、治験体制を構築した。現在、3施設におけるIRB承認を進めておりPMDAの治験届を経て、平成25年度前半に治験開始となる予定である。SLEモデルマウスでの薬効試験については、薬事戦略相談においても研究班でオリジナルのデータを持っているほうがよいという指摘があり、MRL/lprマウスを用いて解析を行った。具体的には5か月齢のMRL/lprマウスにPBS (コントロール)もしくはボルテゾミブを週2回皮下注射を行ない、5週間後に組織学的変化、血液データの変化を解析した。
結果と考察
平成24年度は、プロトコール作成と治験体制の構築、および自施設でのモデルマウスを用いた薬効検証実験を行った。本計画は形質細胞腫瘍である多発性骨髄腫に使われているボルテゾミブを自己免疫疾患に投与する計画であり、安全性を担保したプロトコールの策定、治験薬の十分な使用経験、対象疾患の診療実績が必要である。東北大学血液免疫科は、実臨床で数多くの多発性骨髄腫の診療を行っており、薬剤の特性について熟知しているだけでなく、多発性骨髄腫患者を対象とした同剤の多施設共同、ランダム化第II相比較試験(UMIN No.3472)を行っており、臨床研究の実績も有している。同時に、自己免疫疾患の診療では東北地方で最も多い治療実績がある。この血液・免疫両方の疾患の治療実績を有する東北大学血液免疫科が中心となり、日本における自己免疫疾患診療科として屈指の2施設である産業医科大学と長崎大学が行う本研究の成果は新たなSLE治療のエビデンスとなるものと思われる。治験計画の修正が必要であったこと、その確定に時間がかかったことから治験開始が予定より遅れる見込みとなったが、この実施体制であれば計画の期間内達成が可能であると考えている。本邦における医師主導治験はまだまだ少ないことを考えると、東北大学病院、長崎大学病院、産業医科大学病院の3施設において多施設共同医師主導治験の体制を構築しようとする試みは医療機関の連携実績として大きな成果を生む可能性がある。モデルマウスの薬効試験については、血中IgG、抗DNA抗体活性ともにボルテゾミブ投与群において低下し、また腎細動脈炎が両群で認められたものの、ボルテゾミブ投与群において炎症細胞浸潤の程度は軽い傾向にあり、その有効性が示された。
結論
本邦におけるボルテゾミブの適応・開発は現在、多発性骨髄腫やマントル細胞リンパ腫のような造血器悪性腫瘍に対象が限られているが、臓器移植後の拒絶予防効果が認められており、本治験で対象とするような難治性SLEにおいてもその有効性が期待されるところである。しかしながら、これらの疾患は希少疾患であるため製薬会社における開発優先順位は高くないと推察される。本研究で難治性SLEに対する新たな治療選択が提示できるようになれば、臨床的に大きな貢献となりものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2013-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201216005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
58,500,000円
(2)補助金確定額
58,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,598,629円
人件費・謝金 9,126,536円
旅費 685,340円
その他 22,589,495円
間接経費 13,500,000円
合計 58,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-