文献情報
文献番号
201216004A
報告書区分
総括
研究課題名
PAI-1阻害に基づく新規放射線障害治療薬の臨床開発
課題番号
H24-被災地域-一般(復興)-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 敏男(東北大学大学院 医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 分子病態治療学分野)
研究分担者(所属機関)
- 段 孝(東北大学大学院 医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 分子病態治療学分野)
- 市村 敦彦(東北大学大学院 医学系研究科 附属創生応用医学研究センター 分子病態治療学分野)
- 安藤 潔(東海大学 医学部 血液内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
放射線障害は重篤な組織障害をもたらし、震災後の社会的喫緊の課題であるが、有効な治療薬は未だ無い。放射線治療における正常組織障害を防止する観点、東日本大震災を契機とした原発事故や防除作業に伴う障害治療や予防の観点から、治療薬が世界的に切望されている。本研究では、PAI-1阻害薬の放射線障害治療薬としての有効性を臨床試験で証明する。このアカデミア発の創薬は、震災地域の課題を震災地域のシーズで解決するものであり、「日本再生・被災地復興」のシンボルとなりうる。
放射線照射では、正常細胞・組織では、造血幹細胞が最も感受性が高く、次に皮膚や粘膜、消化管等の上皮細胞が影響を受けやすい。そこでは酸化ストレス(ROS)による細胞障害(PAI-1発現)からマクロファージ浸潤を伴う炎症を経て線維化に進行する。申請者らは、血栓や組織線維化に関わるPAI-1経口阻害薬TM5509(あるいは後継化合物)が、①マクロファージ遊走阻害、②放射線照射による骨髄抑制後の幹細胞移植で造血再生促進、③薬剤誘発ROS依存性の腸炎や肺炎モデルで効果、④虚血に伴う血管修復を促進などの知見を見出し、PAI-1阻害薬が放射線照射による組織障害を防御、治癒する画期的な医薬品になる可能性を一連の動物試験で実証した。
TM5509は申請者らが開発した化合物であり、ヒトPAI-1のX線構造解析を元にデザインした新規400化合物から、有効性、安全性、薬物動態で評価選択し、ヒト血漿での作用を確認している。平成24年3月に医薬品戦略相談を行い、GLP安全性試験を施行した。
本研究では、H24年度(2012年度)に第I相試験の準備を完了し、H25年度(2013年度)には第I相試験での安全性確認を行い、H26年度(2014年度)にはI/II相で患者にブリッジする。H27、28年度(2015,16年度)には、第II相試験でTM5509の①全身照射前処置幹細胞移植に対する効果と、②頭頸部癌での放射線照射口内炎への効果でPOC(治療効果の証明)を取得する(全て医師主導治験)。
また、PAI-1阻害薬の用途として複数の適応症(難治性疾患等)が考えられ、TM5509の後継化合物であるTM5614は、TM5509のバックアップ化合物としての役割だけではなく、TM5509の臨床開発が成功した暁にも別適応での開発が考えられる。
本研究後には企業に導出し、共同開発で承認までつなげる。
放射線照射では、正常細胞・組織では、造血幹細胞が最も感受性が高く、次に皮膚や粘膜、消化管等の上皮細胞が影響を受けやすい。そこでは酸化ストレス(ROS)による細胞障害(PAI-1発現)からマクロファージ浸潤を伴う炎症を経て線維化に進行する。申請者らは、血栓や組織線維化に関わるPAI-1経口阻害薬TM5509(あるいは後継化合物)が、①マクロファージ遊走阻害、②放射線照射による骨髄抑制後の幹細胞移植で造血再生促進、③薬剤誘発ROS依存性の腸炎や肺炎モデルで効果、④虚血に伴う血管修復を促進などの知見を見出し、PAI-1阻害薬が放射線照射による組織障害を防御、治癒する画期的な医薬品になる可能性を一連の動物試験で実証した。
TM5509は申請者らが開発した化合物であり、ヒトPAI-1のX線構造解析を元にデザインした新規400化合物から、有効性、安全性、薬物動態で評価選択し、ヒト血漿での作用を確認している。平成24年3月に医薬品戦略相談を行い、GLP安全性試験を施行した。
本研究では、H24年度(2012年度)に第I相試験の準備を完了し、H25年度(2013年度)には第I相試験での安全性確認を行い、H26年度(2014年度)にはI/II相で患者にブリッジする。H27、28年度(2015,16年度)には、第II相試験でTM5509の①全身照射前処置幹細胞移植に対する効果と、②頭頸部癌での放射線照射口内炎への効果でPOC(治療効果の証明)を取得する(全て医師主導治験)。
また、PAI-1阻害薬の用途として複数の適応症(難治性疾患等)が考えられ、TM5509の後継化合物であるTM5614は、TM5509のバックアップ化合物としての役割だけではなく、TM5509の臨床開発が成功した暁にも別適応での開発が考えられる。
本研究後には企業に導出し、共同開発で承認までつなげる。
研究方法
平成24年度計画の達成目標は、臨床第I相試験準備の完了である。そのために以下の検討を進めた。
1. 治験薬(錠剤)製造検討:
2.ヒト代謝物の同定とヒトPK試験測定系の確立
3.薬理薬効試験の追加
4.PMDA医薬品戦略相談実施(臨床試験開始前相談)
5.治験薬概要書と臨床試験プロトコールの作成
6.治験届提出
7.後継化合物TM5614の非臨床予備試験
1. 治験薬(錠剤)製造検討:
2.ヒト代謝物の同定とヒトPK試験測定系の確立
3.薬理薬効試験の追加
4.PMDA医薬品戦略相談実施(臨床試験開始前相談)
5.治験薬概要書と臨床試験プロトコールの作成
6.治験届提出
7.後継化合物TM5614の非臨床予備試験
結果と考察
1.当初計画に従い、製剤化検討を富士薬品に委託実施した。非臨床成績から、TM5509のヒトでの薬効量は10~30 mgと推定され、投与量1~100 mgの第I相試験を計画している。そのため、治験薬錠剤としては、1,10および50 mg錠を作製することとした。対応するプラセボ錠も含めて、製剤化の検討を実施し、安定性試験も含めて、治験薬錠剤の条件が確立できた。現在、第Ⅰ相試験に向けて必要量の錠剤を委託(富士薬品)にて製造中である。
2.ヒト代謝物の同定とヒトPK試験測定系の確立:
当初計画に従い、ラベル化合物による非臨床代謝試験とヒト薬物代謝測定系(LC/MS/MS)を委託(積水メディカル)にて確立した。
3.薬理薬効試験の追加:
臨床試験でのPD項目を設定するために、カニクイザル伏在動脈(PITモデル)におけるTM5509の有効性評価試験(浜松ファーマ)を追加実施した。
4.PMDA医薬品戦略相談の実施(臨床試験開始前相談)
当初計画に従い、「TM5509の非臨床試験成績の評価及び第I相試験計画」について事前面談(H24.10.16)ならびに本相談(戦P39、H25.10.18)を実施し、TM5509 30mg単回までの臨床試験が承認された。
5.治験薬概要書と臨床試験プロトコールの作成:
臨床第Ⅰ相試験(医師主導治験)の実施機関である浜松医科大学と協力して治験薬概要書と臨床試験プロトコールの作成を行った(東北大学)。
6.治験届提出:
試験実施期間を平成 25 年4 月22 日~平成25 年10 月31 日で治験届を提出し、受理された。
2.ヒト代謝物の同定とヒトPK試験測定系の確立:
当初計画に従い、ラベル化合物による非臨床代謝試験とヒト薬物代謝測定系(LC/MS/MS)を委託(積水メディカル)にて確立した。
3.薬理薬効試験の追加:
臨床試験でのPD項目を設定するために、カニクイザル伏在動脈(PITモデル)におけるTM5509の有効性評価試験(浜松ファーマ)を追加実施した。
4.PMDA医薬品戦略相談の実施(臨床試験開始前相談)
当初計画に従い、「TM5509の非臨床試験成績の評価及び第I相試験計画」について事前面談(H24.10.16)ならびに本相談(戦P39、H25.10.18)を実施し、TM5509 30mg単回までの臨床試験が承認された。
5.治験薬概要書と臨床試験プロトコールの作成:
臨床第Ⅰ相試験(医師主導治験)の実施機関である浜松医科大学と協力して治験薬概要書と臨床試験プロトコールの作成を行った(東北大学)。
6.治験届提出:
試験実施期間を平成 25 年4 月22 日~平成25 年10 月31 日で治験届を提出し、受理された。
結論
以上のことから、臨床第I相試験に移行する準備は完了でき、平成24年度の達成目標は100%達成できた。
UMIN登録;試験ID:UMIN000010686
試験名:TM5509 第I相試験 -健康成人男性を対象としたプラセボ対照単回経口投与試験-
UMIN登録;試験ID:UMIN000010686
試験名:TM5509 第I相試験 -健康成人男性を対象としたプラセボ対照単回経口投与試験-
公開日・更新日
公開日
2013-09-02
更新日
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