RET融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺癌に対する新規治療法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201216003A
報告書区分
総括
研究課題名
RET融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺癌に対する新規治療法の確立に関する研究
課題番号
H24-被災地域-一般(復興)-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 功一(独立法人国立がん研究センター 東病院 呼吸器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 葉 清隆(独立法人国立がん研究センター東病院 呼吸器内科)
  • 河野 隆志(独立行政法人国立がん研究センター研究所 ゲノム生物学研究分野)
  • 蔦 幸治(独立行政法人国立がん研究センター中央病院)
  • 土原 一哉(独立行政法人国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)
  • 石井 源一郎(独立行政法人国立がん研究センター東病院 臨床腫瘍病理分野)
  • 松本 慎吾(独立行政法人国立がん研究センター東病院 臨床開発センタートランスレーショナルリサーチ分野)
  • 大津 敦(独立行政法人国立がん研究センター東病院)
  • 山中 竹春(独立行政法人国立がん研究センター東病院)
  • 佐藤 暁洋(独立行政法人国立がん研究センター東病院 臨床開発センター 臨床試験支援室)
  • 大江 裕一郎(独立行政法人国立がん研究センター東病院 呼吸器内科)
  • 田村 友秀(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 )
  • 山本 信之(静岡県立静岡がんセンター)
  • 瀬戸 貴司(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター)
  • 西尾 誠人(公益財団法人がん研究会有明病院)
  • 里内 美弥子(兵庫県立がんセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
80,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成24年に新たに発見され、その頻度が肺癌の約1%と希少なRET融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺癌(RET肺癌)を対象に、国内未承認の医薬品であるRETチロシンキナーゼ阻害薬 Vandetanib(治験成分記号:ZD6474)の多施設共同非無作為化非盲検第II相試験を医師主導治験として実施し、Vandetanibの薬事承認申請を目指す。
研究方法
全国規模の遺伝子診断ネットワークLung Cancer Genomic Screening Project for Individualized Medicine in Japan (LC-SCRUM-Japan)においてRET肺癌のスクリーニングを行い、医師主導治験である「RET融合遺伝子陽性の局所進行/転移性非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象としたVandetanib(ZD6474)の多施設共同非無作為化非盲検第II相試験」へ登録する。プライマリーエンドポイントは奏効割合、予定登録数17例、登録期間2年、追跡期間1年とした。
結果と考察
【遺伝子診断ネットワークの構築】平成24年10月に「RET融合遺伝子陽性肺癌の臨床病理学的、分子生物学的特徴を明らかにするための前向き観察研究」の研究計画書を作成し、本研究に基づいたRET融合遺伝子陽性肺癌のスクリーニング組織として、Lung Cancer Genomic Screening Project for Individualized Medicine in Japan (LC-SCRUM-Japan)を組織し、2月7日より遺伝子スクリーニングを開始した。平成25年5月24日現在、LC-SCRUM-Japanには全国から98施設が参加し、現在、施設倫理審査委員会で承認された71施設において、臨床検体を用いた実際のRET融合遺伝子陽性肺癌のスクリーニングが進行しており、これまで154例の登録があり、129例の遺伝子解析を行った結果、9例のRET肺癌が発見されている。
【Vandetanibの医師主導治験】医師主導治験が実施可能な7施設(国立がん研究センター東・中央病院、がん研有明病院、静岡がんセンター、兵庫県立がんセンター、四国がんセンター、九州がんセンター)で治験実施組織を構築した。12月に「RET融合遺伝子陽性の局所進行/転移性非扁平上皮非小細胞肺癌患者を対象としたVandetanib(ZD6474)の多施設共同非無作為化非盲検第Ⅱ相試験」の治験実施計画書が完成した。11月19日にPMDAの薬事戦略相談を受け、平成25年1月29日に治験計画届けを厚生労働省へ提出し、2月21日に患者登録を開始した。現在までに、2例のRET肺癌が本治験に登録されている。
【コンパニオン診断薬の開発】本年度は、KIF5B/CCDC6-RET融合全8バリアントを検出するRT-PCRスクリーニング系および、RET座の再構成を検出するbreak-apart FISH及びKIF5B-RET融合を検出するfusion FISHスクリーニング系を構築した。更に、DNA試料を用いる新規アッセイ法として、RETおよび融合パートナー遺伝子(KIF5B, CCDC6)のイントロン領域を含む遺伝子配列を標的としたカスタムRNAベイトを設計し、野生型および融合遺伝子をゲノムDNAレベルで濃縮し次世代シーケンサー(イルミナMiSeq, HiSeqシステム)で解析するプロトタイプを作成した。併せてシーケンスリード中の遺伝子融合点を検出するプログラムの開発を行い、肺癌細胞株LC-2/adにおけるCCDC6-RET融合遺伝子の切断点を同定した。更にRET融合遺伝子が確認されている5症例の微量(50 ng)ゲノムDNAにおける遺伝子切断点の解析に成功した。これらの結果をもとに薬事法承認をめざす体外診断薬キットの開発を開始している。
結論
本研究では、平成24年3月に我が国で発見された肺癌の新規遺伝子異常であるRET融合遺伝子の臨床応用を目指している。平成24年度は、全国規模の遺伝子診断ネットワークであるLC-SCRUM-Japanを立ち上げ、実際に臨床検体を用いたRET肺癌のスクリーニングを開始するとともに、その治療薬であるVandetanibの医師主導治験を世界で初めて開始した。平成25年5月24日現在、RET肺癌9例が発見され、このうち2例が医師主導治験に登録され、順調に研究が進行している。



公開日・更新日

公開日
2013-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201216003Z