食道がん化学放射線療法後局所遺残再発例に対するタラポルフィリンナトリウム(レザフィリン)及び半導体レーザー(PDレーザ)を用いた光線力学療法の医師主導治験

文献情報

文献番号
201215032A
報告書区分
総括
研究課題名
食道がん化学放射線療法後局所遺残再発例に対するタラポルフィリンナトリウム(レザフィリン)及び半導体レーザー(PDレーザ)を用いた光線力学療法の医師主導治験
課題番号
H24-臨研推-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 学(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 達也(京都大学 医学部附属病院)
  • 矢野 友規(国立がん研究センター東病院)
  • 飯石 浩康(大阪府立成人病センター)
  • 西崎 朗(兵庫県立がんセンター)
  • 角嶋 直美(静岡県立静岡がんセンター)
  • 磯本 一(長崎大学病院)
  • 片岡 洋望(名古屋市立大学 医学研究科)
  • 中村 哲也(獨協医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、食道がん化学放射線療法(chemoradiotherapy, CRT)または放射線治療(radiotherapy, RT)後の原発巣遺残再発に対するタラポルフィンナトリウム(ME2906)及び半導体レーザ(PNL6405EPG)を用いた光線力学療法の医師主導治験を多施設共同第II相臨床試験として実施し薬事申請後承認を得ることである。
研究方法
食道がん放射線療法後局所遺残再発例に対するタラポルフィンナトリウム(ME2906)及び半導体レーザ(PNL6405EPG)を用いた光線力学療法の医師主導治験を多施設共同第II相臨床試験として実施する。対象は、50Gy以上のCRTまたはRT単独治療を施行され、原発巣に遺残再発が認められた症例。遺残再発病変の壁深達度は固有筋層まで。ME2906の投与量は20mg/kg。照射のタイミングは、ME2906投与後4-6時間後でPNL6405EPGの照射エネルギーは、100J/cm2とした。主要評価項目は、原発巣のLocal-confirmed complete response (L-cCR)とした。目標症例数は25例。非臨床試験として、食道がん細胞への有効性を示す。
結果と考察
治験実施に先立ち、治験実施計画書と症例報告書の最終確認と各分担施設における実施体制、モニタリング、データハンドリング、安全性情報の共有方法の確認のため平成24年5月27日に全体会議を実施した。治験責任医師の所属する京都大学の治験審査承認日は2012年9月21日で、同年9月25日に治験計画届けを行った。治験薬および治験機器の実施医療機関への搬入手順の確認も含め、最終的なキックオフミーティングを平成24年10月21日に実施した。なお、平成24年12月21日には全参加施設(兵庫県がんセンター、名古屋市立大学付属病院、国立がん研究センター東病院、長崎大学付属病院、大阪成人病センター、静岡県がんセンター)で治験審査承認が得られた。
 平成24年度中に10例が登録され、試験治療が実施された。
 ヒト食道癌細胞株に対するME2906とPNL6405EPGを用いた光線力学療法(PDT)の殺細胞効果をin vitroで検証した。ヒト食道扁平上皮癌細胞株として、TE5(未分化型扁平上皮癌細胞)、TE10(高分化型扁平上皮癌細胞)を使用した。各腫瘍細胞に以下の10群を設定し、各腫瘍細胞を96well マルチプレートに1ウェルあたり10x103 個ずつ播種後、レザフィリンを(0, 3, 10, 30, 100 g/mL)の濃度で添加し、24時間培養後、レーザ照射群には10J/cm2 照射し、48時間後の細胞生残量をWST1アッセイで評価した。
その結果、ME2906を3、10、30及び100 µg/mL添加しレーザを10 J/cm2照射したときの細胞生残率は、TE-5において104、52、14及び1%、TE-10において98、66、29及び5%であった。いずれの細胞においてもME2906濃度依存的に細胞生残率が低下し、30 µg/mL以上では強い殺細胞効果が認められた。一方、ME2906を添加してもレーザを照射しなければ細胞生残率に変化はなく、ME2906単独では殺細胞効果を認めなかった。
以上のように、ME2906を用いたPDTは、in vitroの実験系において、食道癌細胞に対し有効な殺細胞効果を発揮することが示された。
食道がんは、難治がんのひとつであり進行期(ステージII/III/IV)症例の予後は極めて悪い。化学放射線療法は食道がんに対する臓器および機能温存可能な治療法であるが、局所の遺残・再発率が高く予後の改善には救済治療が必要である。しかし、現在、救済治療として行われている外科手術は、術後合併症の頻度が高く治療関連死が10%を越えるため、リスクの高い治療であることは否めない。本研究により、根治的な化学放射線療法で食道がんが残存・再発した場合でも、臓器温存のまま根治が期待できる救済治療が確立できる可能性がある。 さらに厚生労働省の癌医療政策では、癌患者の5年生存率を20%向上させることを掲げているが、本研究成果で根治的な低侵襲治療が開発されれば、患者一人一人に根治の望みを与えるばかりか、癌医療政策に大きく貢献することが期待できる。
結論
食道がん化学放射線療法後の遺残再発に対する救済治療に関する医師主導治験を実施した。また、食道癌細胞に対する非臨床試験も実施し、有効性を示した。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201215032Z