デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエクソン53スキップ治療薬による早期探索的臨床試験

文献情報

文献番号
201215030A
報告書区分
総括
研究課題名
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエクソン53スキップ治療薬による早期探索的臨床試験
課題番号
H24-臨研推-一般-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 永田 哲也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
  • 岡田 尚巳(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
  • 小牧 宏文(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経診療部)
  • 立石 智則(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター 臨床研究支援部)
  • 村田 美穂(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院 神経内科診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
致死性の遺伝性筋疾患であるDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)については長らく根治的な治療法の開発が待ち望まれてきた。アンチセンス・オリゴヌクレオチド(AO)を用いたエクソン・スキップ治療はDMDに対する新規治療法として開発が先行している。我々はこれまでモデル動物での有効性を示し、また対象患者数が最多のエクソン51スキップについては既に治験が開始されている。次いで対象患者が多いとされるエクソン53スキップについて、我々は企業との共同研究を経て有効なモルフォリノAO配列を決定し、当該配列について国産初のアンチセンス医薬品としての承認を得るべく開発を進めている。本配列の治験薬としての安全性と有効性について早期に理解を得ることは、今後の開発を進める上で重要であることから、我々は第Ⅰ相試験の初期に医師主導による早期探索的臨床試験を計画した。本研究は、特に核酸医薬品をはじめとした極めて新規性の高い医薬品の開発、及びDMDなど希少疾病に対する医薬品の開発において共通して生ずると考えられる課題について検討し、当該臨床試験の円滑な推進を目的として実施するものである。
研究方法
1. 本治験薬が核酸医薬品であること、および対象が希少疾患のDMDであることを踏まえた、核酸医薬品の非臨床安全性評価に関する最近の動向について、ガイドラインや文献などから調査した。
2. 先行するエクソン51スキップの臨床試験成績、及び本治験薬について得られた非臨床試験成績から、本治験薬に関する早期探索的臨床試験のプロトコールを検討した。
3. 本治験薬の標的配列に一塩基多型(SNP)が存在する場合、その有効性に影響を及ぼす可能性があることから、本治験薬の標的配列であるエクソン53におけるSNPの探索を行った。
4. 組み入れ可能な被験者数推定のために、現在の国立精神・神経医療研究センターにおける対象患者の通院状況、並びに今後の被験者リクルートの方策について症例集積性向上の観点から検討した。
5. 希少疾患であり症例数が限定されることに起因する試験デザイン上の制約について取り組むため、これまでのDMDに対するエクソン・スキップ治療薬の開発動向について調査し、開発早期から検証的試験に至るまでの考え方について検討した。
6. 歩行可能なDMD患者のみならず、歩行不能な患者も臨床試験に組み入れる場合には、前提として薬物動態が共通している必要があることから、両群の薬物動態について文献的な検討を行った。
結果と考察
1. 現時点では、第Ⅰ相試験開始に必要な非臨床試験項目およびその実施時期について明確な指針は示されておらず、個々の試験内容と規制当局の対応を注視するとともに、医薬品医療機器総合機構(PMDA)との対面助言等のプロセスを踏むことが重要と考えられた。
2. 現時点での非臨床試験の結果、単施設で組み入れ可能な症例数、及び想定される最長投与期間・最高投与量などを考慮し、先行する類薬の臨床試験結果等も参考にプロトコールが作成された。
3. 本治験薬の標的配列領域に、pre-mRNAとの二重鎖形成を阻害する可能性のあるSNPが報告されていることが判明した。出現頻度は非常に稀とされているが、治験薬の有効性評価の解釈が困難となることから、組み入れ除外基準としてSNPの存在を設定した。
4. 本センター病院に通院中のDMD患者に占めるエクソン53スキップ対象者の割合は9.9%であった。希少疾病に対する治験を行うには、患者登録、施設ネットワークなどを通した症例集積性の向上が必要と考えられた。
5. 希少疾病医薬品の有効性の検証方法のあり方については、無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験を念頭に置きながらも、類薬の開発状況や新たに得られるエビデンス等を踏まえ、新たな試験デザインの可能性を常に模索することが重要と考えられた。
6. 歩行可能/不能DMD患者間における類薬の薬物動態データを解析した結果、薬物動態に関しては、歩行可能者と歩行不能者を一元化して評価することが可能と考えられた。
結論
エクソン53スキップの早期探索的臨床試験を実施する上で、事前に求められる非臨床試験の動向、及び希少疾患に対する臨床試験のデザインのあり方、並びに組み入れ・除外基準を策定する上で考慮すべき、対象患者数の割合、標的領域のSNPの存在、及び歩行可能/不能DMD患者間の薬物動態の違いについて検討を行い一定の成果を得た。これらの検討や別途実施した非臨床試験の結果を踏まえ、平成24年度内に実施したPMDAとの薬事戦略相談を経て、早期探索的臨床試験のプロトコールを作成した。平成25年度内には同試験の開始を予定しており、プロトコールの概要は臨床試験登録サイトにおいて公開される予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201215030Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,000,000円
(2)補助金確定額
39,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 19,328,815円
人件費・謝金 7,588,039円
旅費 1,027,589円
その他 2,055,557円
間接経費 9,000,000円
合計 39,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
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