進行卵巣癌・卵管癌・腹膜癌に対する腹腔内化学療法確立のための研究

文献情報

文献番号
201215027A
報告書区分
総括
研究課題名
進行卵巣癌・卵管癌・腹膜癌に対する腹腔内化学療法確立のための研究
課題番号
H24-臨研推-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 恵一(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 道前 洋史(北里大学 薬学部)
  • 杉山 徹(岩手医科大学 医学部)
  • 紀川 純三(鳥取大学 医学部)
  • 吉川 裕之(筑波大学 医学医療系)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学 医学部)
  • 笠松 高弘(国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科)
  • 鈴木 光明(自治医科大学 産科婦人科)
  • 青谷 恵利子(北里大学 臨床薬理研究所)
  • 高野 忠夫(東北大学未来医工学治療開発センター 臨床応用部門)
  • 八幡 哲郎(新潟大学 医薬学総合研究科遺伝子制御部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、癌性腹膜炎を伴った卵巣癌・腹膜原発癌・卵管癌に対して、現在標準治療法である静注(IV)パクリタキセル(パクリ)+IVカルボプラチン(カルボ)の併用療法と比べて、カルボを腹腔内(IP)投与することによって予後を改善できるかどうかを検討するものである。
研究方法
開腹手術を行い、進行期II期~IV期と診断された上皮性卵巣癌、原発性腹膜癌、卵管癌患者で、十分な臓器機能を有したものとする。
標準治療の方法
レジメン I:ddTC-iv療法,レジメン II:dd-TCip療法
有効性及び安全性の評価
Primary Endpoint: Progression-Free Survival (PFS)
Secondary Endpoint: Overall Survival (OS)、奏効率、QOL調査および医療経済評価
安全性評価は、血液毒性および非血液毒性をNCI-CTC AE Ver 4.0を用いて評価する。
すべてのデータは、北里大学臨床薬理研究所臨床試験コーディネーティング部門にデータセンターを置き、独立したデータ管理と統計解析を行う。
本試験は、臨床研究に関する倫理指針に則り施行される。候補患者への説明は各施設の倫理委員会で承認された説明文を用い、文書で同意を得る。患者には、同意の自由、同意撤回の自由、本試験参加による利益、不利益を伝える。個人情報は適切に管理される。利益相反は各施設によって審査管理される。
結果と考察
平成24年度は、できうる限りの手段を講じて、登録症例数を増やすことを目指した。具体的には、年2回行われる日本婦人科腫瘍学会などの全国学会に、JGOGのブースを出展し、ポスター掲示を行うと共に、パンフレットを配布し、日本全国の腫瘍専門医に本治験の衆知を図り、症例紹介を依頼した。さらに、参加施設の関連病院、地域の研究会にも症例紹介依頼のパンフレットを配布した。
その甲斐あって、平成25年3月6日現在204例が登録できた。しかし、先進医療制度に基づく第Ⅲ相比較試験遂行体制整備に時間を要したため、前年度までの症例登録が進まなかったので、目標症例数を再計の結果685例とし、平成25年1月20日にプロトコル改訂した。高度医療評価制度下での臨床試験遂行には、通常の医師自主研究よりも高い品質管理が要求されるため、各施設が研究者への支援を適切に行う必要がある。そのため、厚労省の許可のもと、一症例あたり10万円の研究協力金を支払うこととした。具体的には、当班科研費管理責任者である埼玉医科大学学長と研究施設長との間で契約書を交わし、施設長が本試験データの品質を担保することを保証することを明記した。
 iPocc試験は海外からも注目されており、国際共同臨床試験として推進するために、英語プロトコルおよびAppendixを作成した。現在、シンガポールKK Women’s Hospitalとの研究契約は終了したので、来年度早々にも症例登録が開始されることが期待される。韓国KGOGでもKFDAの承認が得られ、KGOGとの契約締結作業が進んでおり、来年度には試験が開始される見込みである。オーストラリア Greenslopes Private Hospitalも試験参加に興味を示しており、来年度中には契約締結することを期待している。このように、本試験は我が国研究者主導の本格的な国際共同試験として運営されようとしている。一方、問題点も明らかとなった。まず、試験薬剤の無償提供なしでは比較試験そのものが成り立たない点である。今回は幸い、ジェネリックメーカーも含めた製薬企業の協力により、試験が開始できたが、極めて「幸運であった」といえる。今後は、高度医療評価制度で承認された薬剤の用法に関しては、保険償還を認める、というルールに変えなければ、せっかくの公的臨床試験審査システムが形骸化する可能性が懸念される。
結論
本試験は、現在世界中で行われている、三つの卵巣癌IP試験の一つである。他の試験と異なり、純粋にカルボのIP効果を検証できる試験として国際的な注目度が高い。
このような医学的重要性に加えて、本試験は我が国における医療制度上の新しい試みを実践している。すなわち、新薬開発治験になじまない保険未承認の新規治療法開発を行う目的で、高度医療評価制度の下で、大規模ランダム化比較試験を遂行するためのロジスティックを構築した。多数例に対する薬剤無償提供の交渉と保管運搬、臨床試験保険の契約など、施設との「研究協力契約」締結など、医師の自主研究としては我が国初の経験であったため、準備に時間を要したが、症例登録が開始された。この経験は、今後、同様のプロジェクトを行う上で重要な情報源となると自負している。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-12-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201215027Z