肺胞蛋白症の吸入治療のための新規GM-CSF製剤の非臨床試験

文献情報

文献番号
201215023A
報告書区分
総括
研究課題名
肺胞蛋白症の吸入治療のための新規GM-CSF製剤の非臨床試験
課題番号
H24-臨研推-一般-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
田澤 立之(新潟大学 医歯学総合病院)
研究分担者(所属機関)
  • 中田 光(新潟大学 医歯学総合病院)
  • 湯尾 明(国立国際医療研究センター研究所 疾患制御研究部)
  • 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
  • 中垣 和英(日本獣医生命科学大学 獣医学部)
  • 内田 寛治(東京大学 医学部)
  • 井上 彰(東北大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
29,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肺胞蛋白症の9割は顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に対する自己抗体により生ずる.新規治療法としてGM-CSFの吸入投与による新治療が発案され,当研究グループによる日本国内の多施設第2相臨床研究で有効性と安全性が示された.本研究では,本邦未承認のGM-CSF 製剤を吸入薬として開発するため,CHO 細胞由来のGM-CSF 製剤(以下CHO-GMCSF))を開発中の企業よりラボレベル製品の提供をうけて薬理学的特性の解析と,哺乳動物を用いた吸入毒性試験の方法を検討し,非臨床試験の実際の項目内容と,動物吸入毒性試験の方法を立案することを目的とする.今年度は,CHO-GMCSFと既存のGM-CSF 製剤を用いて,①質量分析での評価,②コロニーアッセイでの検討,③好中球表面のCD11b 発現量およびSTAT5 のリン酸化反応の評価、④患者由来抗GM-CSF抗体を用いた免疫学的解析,⑤他の動物種の末梢血細胞への活性の評価,⑥カニクイザルでの吸入動物実験と気管支肺胞洗浄液採取による評価,の6 項目についての検討を実施した.
研究方法
CHO 細胞由来ヒトGM-CSFは日本ケミカルリサーチより提供された.他に酵母由来製剤 (Genzyme),大腸菌由来製剤 (Amoytop)を購入して使用した.質量分析は,ultraflex TOF/TOF (BrukerDaltonics)を用いて測定した.コロニーアッセイは,正常人由来のヒト骨髄血液細胞を作用対象細胞として、メチルセルロースを用いた半固形培地で実施した。好中球表面のCD11b発現量およびSTAT5リン酸化反応は,血液中にGM-CSF を各種濃度で加え、37℃30 分培養後各種抗体で染色混和して、氷冷し,溶血と白血球固定を行い、フローサイトメーターで定量した.肺胞蛋白症患者由来の抗体はELISA 法で測定した.Avidity の測定に8M urea 変性法を用いた。他の動物種の検討では,マウスおよびイヌの末梢血顆粒球への活性の評価は,採血後ヘパリン化し,氷上で各種濃度のGM-CSFを添加し,37 ℃15 分孵置して解析した.カニクイザルでの実験では気管内へのマイクロスプレー(PennCentury)による投与と,細径気管支ファイバースコープ(オリンパス BF Type XP60)による気管支肺胞洗浄液採取による予備実験を行った.各GM-CSF 製剤は,0.5mg/body の連日3 日気管内投与を行い,一般状態,血算,血液生化学,BAL液および,day12 の剖検で評価した.なお動物実験にあたっては,委託施設(イナリサーチ)の動物実験審査委員会ならびに新潟大学動物実験倫理委員会に実験計画書を提出し,審査を受け,指摘事項を修正して,承認を受けた(予備実験:新大研第295-2号,本実験:新大研第330号).
結果と考察
今年度は以下の結果を得た.CHO-GMCSFは,①質量分析では,既存の他製剤と比べ,分子量が大きく糖鎖修飾が多いこと,②コロニーアッセイでは,既存製剤と同様の十分な活性をもつこと,③好中球表面のCD11b発現量およびSTAT5のリン酸化反応の評価でも,既存製剤とほぼ同等の活性をもつこと,④患者GM-CSF自己抗体との結合量、avidityでは他製剤に比し若干劣るがTF-1細胞に対する生残率の他製剤に比べて高いこと,⑤マウス末梢血顆粒球への活性はないが,イヌ末梢血顆粒球のCD11bの発現増強がみられ,他のGM-CSF製剤の間に差はなかったことが明らかとなり,⑥カニクイザルでの気管支肺胞洗浄(BAL)による肺内環境の評価が可能であり,吸入投与したGMCSFの活性を血清で確認できることが分かった.興味深いことにCHO-GMCSFが低濃度でも,GM-CSF依存性細胞株TF-1 の生残率は高く,これはAnnexin5の解析よりapoptosis の抑制によると考えられた.この活性は,抗GM-CSF 抗体では完全に抑制できず,別のシグナル経路が示唆された.カニクイザルでの吸入実験ではGM-CSF投与 によるBAL中の細胞増加やGM-CSFの検出が可能なことも示され,GM-CSF吸入の肺内環境の評価の方法として,BALは剖検によらない有用な方法と考えられた.
結論
CHO-GMCSF は既存の酵母菌,大腸菌由来の製剤と比べて質量分析で分子量が大きく複雑な糖鎖修飾を受けているが,コロニーアッセイ,STAT5 のリン酸化反応,好中球表面の接着因子CD11b の発現量で生物活性の検討では有意の差はみられなかった.カニクイザルでのGM-CSF吸入実験と細径気管支ファイバースコープによるBAL での評価が可能であり,吸入したGMCSF による細胞増加効果や,GM-CSF 活性を確認できることが示された.

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201215023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
38,350,000円
(2)補助金確定額
38,325,000円
差引額 [(1)-(2)]
25,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,889,911円
人件費・謝金 4,968,745円
旅費 650,710円
その他 11,965,774円
間接経費 8,850,000円
合計 38,325,140円

備考

備考
人件費の誤りのため

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-