文献情報
文献番号
201215021A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト生来由来多能性幹細胞(Muse細胞)の再生医療への応用に向けた安全性・有効性の検証
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-臨研推-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
出沢 真理(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 浅田 隆太(京都大学 医学部附属病院)
- 藤澤 浩一(山口大学 医学部)
- 清水 忍(名古屋大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Muse細胞は成人ヒトの骨髄、皮膚、脂肪などの間葉系組織からヒトES細胞のマーカーであるSSEA-3と間葉系マーカーであるCD105二重陽性細胞として同定できる間葉系幹細胞の中のエリート細胞である。1細胞から自発的に3胚葉性の細胞に分化できる多能性幹細胞であり腫瘍性が無い。分化誘導せずにそのまま生体内に投与すると損傷部位に生着し、機能的細胞に分化して様々な組織再生をもたらす。本研究では誘導しないそのままのMuse細胞懸濁液を疾患部位に投与する「医薬品」としての開発を推進するために、検証のターゲット臓器として肝臓を選択し、①有効性検証の指標設定、②非臨床有効性試験(急性と慢性の肝疾患モデルを用いた有効性検証、用量探索、投与速度の最適化)、③細胞調製の最適化、④Muse細胞製剤の規格の設定、⑤非臨床安全性評価を実施する。さらに薬事戦略相談を適宜利用して早く臨床試験に移行する。
研究方法
・投与速度の最適化:ヌードマウスを用いて線維芽細胞2万細胞を30秒、5分、30分の速度でマイクロシリンジを用いて投与し、呼吸不全などの有害事象を観察し、3日間に評価した。
・肝障害モデルの作成: SCIDマウスの腹腔内に四塩化炭素を0.5, 1.0 1.5 mg/Kgの量で投与し、急性肝障害モデルを作製する。慢性モデルは週に2回、1.0 mg/Kg の分量を4週間にわたって投与し作成する。ヒトMuse、非Muse細胞は骨髄間葉系幹細胞から採取する。
・有効性評価、用量探索試験:尾静脈投与する細胞数は5千、2万、4万細胞を設定し、急性・慢性モデルに尾静脈から投与する。本年度は2万細胞を中心に実験を行った。経時的に血液生化学、全身状態、組織学的検討を行う。
・非臨床安全性評価:GLPを準拠しガイドラインに従い非臨床試験を行った。Lonza社より購入した健康成人に由来する骨髄間葉系幹細胞からautoMACS®を用いて分離したMuse細胞の核型検査を実施し、製造工程がMuse細胞の核型に与える影響を検討する。
・肝障害モデルの作成: SCIDマウスの腹腔内に四塩化炭素を0.5, 1.0 1.5 mg/Kgの量で投与し、急性肝障害モデルを作製する。慢性モデルは週に2回、1.0 mg/Kg の分量を4週間にわたって投与し作成する。ヒトMuse、非Muse細胞は骨髄間葉系幹細胞から採取する。
・有効性評価、用量探索試験:尾静脈投与する細胞数は5千、2万、4万細胞を設定し、急性・慢性モデルに尾静脈から投与する。本年度は2万細胞を中心に実験を行った。経時的に血液生化学、全身状態、組織学的検討を行う。
・非臨床安全性評価:GLPを準拠しガイドラインに従い非臨床試験を行った。Lonza社より購入した健康成人に由来する骨髄間葉系幹細胞からautoMACS®を用いて分離したMuse細胞の核型検査を実施し、製造工程がMuse細胞の核型に与える影響を検討する。
結果と考察
・投与速度の最適化:すべての条件において,有害事象はみられなかった。肺塞栓もみられなかった.従って本実験では30秒での細胞投与の速度を採用した。
・有効性評価、用量探索試験:ヒト骨髄由来Muse細胞、非Muse細胞をそれぞれFACSで分離した2万細胞を四塩化炭素投与2日目にSCIDマウス尻静脈より投与した。Muse細胞を投与した群では総ビリルビンの上昇がマイルドに抑えられた。lentivirus-GFPで標識したヒトMuse, 非Muse細胞の生着を移植30日後で評価したところ、非Muse細胞はほとんど肝臓組織内に残っていなかったが、Muse細胞は血管系を中心に細胞が生着し、Heppar1, ヒトアルブミン, ヒト抗トリプシンなど肝臓の機能的なマーカー陽性を示していた。移植した肝臓でhuman albuminのシグナルがRT-PCRで検出され、さらにマウスの末梢血を採取しWestern blotで解析するとhuman albuminが検出された。このことからMuse細胞は血管に投与されただけで障害肝臓組織に入り、肝細胞に分化する能力を持つが非Muse細胞にはそのような機能は持ち合わせていないことが示唆された。
・非臨床安全性評価:ヒト骨髄由来Muse細胞での染色体数分析、核型分析において、バンドパターンが正常なヒト女性染色体と一致し、欠失、転座、重複など確認できる異常は存在しなかった。
(考察)
間葉系幹細胞は肝硬変、心筋梗塞、脊髄損傷などの多岐にわたる疾患において世界中で臨床試験が展開されている。サイトカイン産生による保護効果の他に、投与したごく一部の細胞が損傷を受けた組織に生着して分化することによる再生効果が報告されている。ただサイトカイン効果は一過性であり、持続的な機能回復は再生効果が担う。再生効果を担う細胞の探索が世界中で進められていたが、今回間葉系幹細胞の数パーセントを占める多能性のMuse細胞が本体であることが突き止められた。
さらに核型検査によって製造工程がMuse細胞に与える影響においては異常が存在しなかったことは安全性の面から大きな結果である。
・有効性評価、用量探索試験:ヒト骨髄由来Muse細胞、非Muse細胞をそれぞれFACSで分離した2万細胞を四塩化炭素投与2日目にSCIDマウス尻静脈より投与した。Muse細胞を投与した群では総ビリルビンの上昇がマイルドに抑えられた。lentivirus-GFPで標識したヒトMuse, 非Muse細胞の生着を移植30日後で評価したところ、非Muse細胞はほとんど肝臓組織内に残っていなかったが、Muse細胞は血管系を中心に細胞が生着し、Heppar1, ヒトアルブミン, ヒト抗トリプシンなど肝臓の機能的なマーカー陽性を示していた。移植した肝臓でhuman albuminのシグナルがRT-PCRで検出され、さらにマウスの末梢血を採取しWestern blotで解析するとhuman albuminが検出された。このことからMuse細胞は血管に投与されただけで障害肝臓組織に入り、肝細胞に分化する能力を持つが非Muse細胞にはそのような機能は持ち合わせていないことが示唆された。
・非臨床安全性評価:ヒト骨髄由来Muse細胞での染色体数分析、核型分析において、バンドパターンが正常なヒト女性染色体と一致し、欠失、転座、重複など確認できる異常は存在しなかった。
(考察)
間葉系幹細胞は肝硬変、心筋梗塞、脊髄損傷などの多岐にわたる疾患において世界中で臨床試験が展開されている。サイトカイン産生による保護効果の他に、投与したごく一部の細胞が損傷を受けた組織に生着して分化することによる再生効果が報告されている。ただサイトカイン効果は一過性であり、持続的な機能回復は再生効果が担う。再生効果を担う細胞の探索が世界中で進められていたが、今回間葉系幹細胞の数パーセントを占める多能性のMuse細胞が本体であることが突き止められた。
さらに核型検査によって製造工程がMuse細胞に与える影響においては異常が存在しなかったことは安全性の面から大きな結果である。
結論
速度投与の最適化検証においては数万の細胞を30秒で投与しても肺塞栓を含めた有害事象は生じないことが明らかとなった。Muse細胞は3肝組織に残り生着し、肝細胞分化マーカーを発現し、機能的な分子を産生する能力を有するが、非Muse細胞の生着はほとんど認められなかったことから、間葉系幹細胞の再生作用はMuse細胞によるものでありMuse以外の細胞は寄与しないことが分かった。核型検査によって製造工程がMuse細胞に与える影響は無いことが明らかとなった。
公開日・更新日
公開日
2013-08-27
更新日
-