文献情報
文献番号
201215020A
報告書区分
総括
研究課題名
ボルテゾミブによる成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)救援療法の医師主導治験
課題番号
H23-臨研推-一般-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石塚 賢治(福岡大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院)
- 日高 道弘(国立病院機構熊本医療センター)
- 石田 高司(名古屋市立大学医学部)
- 野田 慶太(福岡大学病院)
- 田村 和夫(福岡大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の予後は未だに不良で、治療成績向上は急務である。
プロテアソーム阻害薬ボルテゾミブの主作用はNF-κB活性化阻害と考えられ、多発性骨髄腫のほか、米国では再発・再燃マントル細胞リンパ腫に対し承認されている。
ATL細胞では恒常的に活性化したNF-κB経路が腫瘍細胞の生存と増殖に重要な役割を果たしている。ボルテゾミブのNF-κB阻害作用に着目し、本剤の抗ATL細胞活性が検討され、前臨床試験での有効性が報告されている。また国内外でボルテゾミブのATLに対する臨床使用例が報告され、有効性が示唆されている。
本試験ではボルテゾミブの再発・難治性ATLに対する有効性を検討する臨床第Ⅱ相試験を実施する。本剤の有用性が証明された場合には、製造販売承認事項一部変更承認申請(効能追加)ができるよう「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(GCP)を遵守した医師主導治験として実施する。
本試験はATLの治療成績の向上のみならず、製薬企業主導の開発治験に依存しないトランスレーショナル研究、あるいは既存薬の稀少疾患に対する適応拡大を目指すストラテジーとして、研究者主導型臨床試験の新たなモデルの構築・確立に大きく貢献すると期待される。平成24年3月からは、本研究の立案当初から参加していた2施設以外の施設が新たに参加しており、多施設で医師主導治験を実施する上での問題点とその解決策を明確にすることは、今後の研究者主導型臨床試験の体制整備に貢献する。
プロテアソーム阻害薬ボルテゾミブの主作用はNF-κB活性化阻害と考えられ、多発性骨髄腫のほか、米国では再発・再燃マントル細胞リンパ腫に対し承認されている。
ATL細胞では恒常的に活性化したNF-κB経路が腫瘍細胞の生存と増殖に重要な役割を果たしている。ボルテゾミブのNF-κB阻害作用に着目し、本剤の抗ATL細胞活性が検討され、前臨床試験での有効性が報告されている。また国内外でボルテゾミブのATLに対する臨床使用例が報告され、有効性が示唆されている。
本試験ではボルテゾミブの再発・難治性ATLに対する有効性を検討する臨床第Ⅱ相試験を実施する。本剤の有用性が証明された場合には、製造販売承認事項一部変更承認申請(効能追加)ができるよう「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(GCP)を遵守した医師主導治験として実施する。
本試験はATLの治療成績の向上のみならず、製薬企業主導の開発治験に依存しないトランスレーショナル研究、あるいは既存薬の稀少疾患に対する適応拡大を目指すストラテジーとして、研究者主導型臨床試験の新たなモデルの構築・確立に大きく貢献すると期待される。平成24年3月からは、本研究の立案当初から参加していた2施設以外の施設が新たに参加しており、多施設で医師主導治験を実施する上での問題点とその解決策を明確にすることは、今後の研究者主導型臨床試験の体制整備に貢献する。
研究方法
【患者選択基準】急性型、リンパ腫型、または予後不良因子を持つ慢性型ATLと診断後、1レジメン以上の化学療法を受け、再発あるいは再燃した20歳以上で、ECOG performance status 0~2の患者
【治療計画】ボルテゾミブ1.3mg/m2(体表面積)を週2回、2週間(1,4,8,11日目)静脈内に投与した後、10日間休薬(12~21日目)する。これを1サイクルとし8サイクル繰り返す。
【評価項目】主要評価項目;抗腫瘍効果(総合最良効果)、副次評価項目:安全性、抗腫瘍効果(部位別最良効果)、無増悪生存期間、血清LDH、血清可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)、末梢血HTLV-1 provirus DNA量
【目標症例数と設定根拠】25例(第1段階15例、第2段階10例)
[設定根拠]ボルテゾミブによる奏効率を25~30%と期待し、期待値を25%、閾値奏効率を5%と設定する。Southwest Oncology Group(SWOG)の2ステージデザインにもとづくものとし、閾値5%、期待値25%、α=0.055(片側)、1-β=0.9のもとで算出した。
【中間解析、最終解析の判断基準】登録例数が15例に達した時点で、症例登録を一時中断し、抗腫瘍効果および安全性に関する中間解析を行う。抗腫瘍効果に関する中間解析では、15例中奏効例が1例も観察されなければボルテゾミブ療法は無効であると結論する。
第1ステージでHAが棄却されない場合、第2ステージとして10例を集積し最終解析を実施する。奏効数が25例中3例以下に留まれば、ボルテゾミブは無効であると結論する。
【治療計画】ボルテゾミブ1.3mg/m2(体表面積)を週2回、2週間(1,4,8,11日目)静脈内に投与した後、10日間休薬(12~21日目)する。これを1サイクルとし8サイクル繰り返す。
【評価項目】主要評価項目;抗腫瘍効果(総合最良効果)、副次評価項目:安全性、抗腫瘍効果(部位別最良効果)、無増悪生存期間、血清LDH、血清可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)、末梢血HTLV-1 provirus DNA量
【目標症例数と設定根拠】25例(第1段階15例、第2段階10例)
[設定根拠]ボルテゾミブによる奏効率を25~30%と期待し、期待値を25%、閾値奏効率を5%と設定する。Southwest Oncology Group(SWOG)の2ステージデザインにもとづくものとし、閾値5%、期待値25%、α=0.055(片側)、1-β=0.9のもとで算出した。
【中間解析、最終解析の判断基準】登録例数が15例に達した時点で、症例登録を一時中断し、抗腫瘍効果および安全性に関する中間解析を行う。抗腫瘍効果に関する中間解析では、15例中奏効例が1例も観察されなければボルテゾミブ療法は無効であると結論する。
第1ステージでHAが棄却されない場合、第2ステージとして10例を集積し最終解析を実施する。奏効数が25例中3例以下に留まれば、ボルテゾミブは無効であると結論する。
結果と考察
治験実施において安全性や倫理上の問題点はなく、今後とも継続は可能である。開発業務受託機関(CRO)によるモニタリングは現在本研究に参加している4医療機関とも随時実施されているが、第二回目監査を慈愛会今村病院分院に対し2013年3月に実施し、GCPに準拠した品質の治験を実施していることを確認している。
当初の研究計画では、平成24年度中に第1ステージの15例を終了させ、抗腫瘍効果および安全性に関する中間解析を実施する予定としていたが、遅れが生じており、平成25年3月末現在10例に留まっている。 患者リクルートの遅れを克服するため、プロトコール改定(前治療後からの休薬期間の短縮や年齢上限の撤廃、同種移植後の再発患者の除外規定の撤廃)と参加施設追加を行ったが、十分な効果は見られていない。
平成24年5月に上市された新規治療薬 抗CCR4抗体モガムリズマブの投与対象となる患者が本治験と同一であるため、本治験の対象患者に対する治療においてモガムリズマブが優先されることも影響したと考えられる。しかしながら、ATLの治療成績向上のためには今後とも新規薬剤の導入が必要なことはますます明らかとなっており、施設数拡大と合わせ今後の症例リクルートの加速を期待している。
当初の研究計画では、平成24年度中に第1ステージの15例を終了させ、抗腫瘍効果および安全性に関する中間解析を実施する予定としていたが、遅れが生じており、平成25年3月末現在10例に留まっている。 患者リクルートの遅れを克服するため、プロトコール改定(前治療後からの休薬期間の短縮や年齢上限の撤廃、同種移植後の再発患者の除外規定の撤廃)と参加施設追加を行ったが、十分な効果は見られていない。
平成24年5月に上市された新規治療薬 抗CCR4抗体モガムリズマブの投与対象となる患者が本治験と同一であるため、本治験の対象患者に対する治療においてモガムリズマブが優先されることも影響したと考えられる。しかしながら、ATLの治療成績向上のためには今後とも新規薬剤の導入が必要なことはますます明らかとなっており、施設数拡大と合わせ今後の症例リクルートの加速を期待している。
結論
ボルテゾミブによる成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)救援療法の医師主導治験において、これまでに12例が登録され、10例に実施された。倫理上・安全上の問題点は生じていないが、患者リクルートと症例登録の促進が最大の課題である。
公開日・更新日
公開日
2013-08-27
更新日
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