初発膠芽腫に対する新規放射線化学療法による有効治療法確立のための臨床研究

文献情報

文献番号
201215018A
報告書区分
総括
研究課題名
初発膠芽腫に対する新規放射線化学療法による有効治療法確立のための臨床研究
課題番号
H23-臨研推-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮武 伸一(大阪医科大学 医学部、外科学講座、脳神経外科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 小野 公二(京都大学原子炉実験所)
  • 切畑 光統(大阪府立大学,生命環境科学)
  • 黒岩 敏彦(大阪医科大学 医学部、外科学講座、脳神経外科学教室)
  • 川端 信司(大阪医科大学 医学部、外科学講座、脳神経外科学教室)
  • 淺井 昭雄(関西医科大学 医学部、外科学講座、脳神経外科学教室)
  • 有田 憲生(兵庫医科大学 医学部、外科学講座、脳神経外科学教室)
  • 加藤 天美(近畿大学 医学部、外科学講座、脳神経外科学教室)
  • 伊達 勲(岡山大学 医歯薬総合研究科、脳神経外科学教室)
  • 菊田 健一郎(福井大学 医学部、外科学講座、脳神経外科学教室)
  • 大畑 建治(大阪市立大学 医学部、外科学講座、脳神経外科学教室)
  • 森内 秀祐(市立泉佐野病院、脳神経外科)
  • 道上宏之(岡山大学 医歯薬総合研究科、生理学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
17,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
膠芽腫の根治は困難である。X線と新規アルキル化剤テモダール(TMZ)による放射線化学療法がようやく標準治療として認められてきたが、それとてもX線単独治療群の生存期間中央値(MST)12ヶ月にわずか2.5ヶ月の上乗せを追加したに過ぎない(Stupp R, et al, NEJM 2005)。われわれは化学療法の併用抜きでの新規診断膠芽腫に対するBNCT+X線追加照射でMST23.5ヶ月の成績を出し、単一施設での第2相臨床試験として、BNCTの治療効果を報告している(ハザード比0.399, p<0.004,)。
これに続くstepとして、BNCT+X線追加照射+TMZにより、新規診断膠芽腫に対する多施設による比ランダム化第二相臨床試験を行い、その治療効果を客観的に評価することを目的として、本臨床試験を行なっている。
研究方法
京都大学原子炉(KUR)および日本原子力機構研究4号炉(JRR4)を使用し、新規診断膠芽腫に対してBNCT plus X線分割照射(XRT)plus TMZによる化学療法併用の多施設共同第二相臨床試験のプロトコルを実施した。
ただし、JRR4は東日本大震災の影響を受け、実際には稼働し得なかったのでKURのみを用いた。プロトコルの骨子は、診断確定後の新規診断膠芽腫に対して、BNCT plus XRT plus chemotherapy の治療効果を検討解析することにある。具体的には、集積機序の異なる2種類の硼素化合物(BSH,BPA)を用いたBNCTをBPA-PETの結果をもとにした線量計画下に行った。その後X線による分割外照射を追加した。腫瘍の再発は腫瘍底部からが多く、放射線壊死の発生は脳表からが多いことを考慮し、適当な線量のX線 外照射を3層に分けてgradient をかけて照射する。すなわち、BNCTの中性子照射方向に直交する対向2門照射とし、GTV (術前腫瘍造影域)plus 2.5cmをclinical target volume (CTV)として設定し、脳表より、CTV最深部までを3層に分けた上multi-leaf collimator を使用して、上記線量をhalf-field technique を用いて照射した。本法により、放射線壊死、深部再発双方が減少すると予想される。BNCT直後より、外照射終了時までTMZ 75mg/m2の連日投与を行い、放射線治療終了後より、腫瘍再発が認められるまで、TMZ 150-200mg/m2の投与を5 days/28 days cycle で行う。治療効果の検討は全生存期間を以下の対照群と比較して行う予定である。すなわち2006年9月にTMZが保健医療として認められて以来の各施設で行われている、標準治療(いわゆるStuppのregimen, Stupp, et al.NEJM 352: 987-996,2005)を行った新規診断膠芽腫の治療成績をhistorical control として比較検討する。合わせて、予後別解析(RPA)をEORTCの報告(Mirimanoff, et al. J. Clin. Oncol. 24: 2563-2569, 2006)と比較して行う。
以上の臨床試験は大阪医科大学、岡山大学、近畿大学、兵庫医科大学、関西医科大学、市立泉佐野病院、大阪市立大学、福井大学を中心とした多施設共同研究として施行している。症例の登録等のデータマネージメントや臨床試験の進捗案内、統計解析等は臨床研究情報センター(TRI)に業務委託している。
結果と考察
1) 臨床試験の登録数
平成25年3月現在で30例に実施している。
総症例数は45例を予定しているので、平成25年度に総数15例の新規診断膠芽腫症例を本プロトコルで治療を行い、平成26年度を観察期間とし、その効果をそれぞれの施設で経験しているX線、TMZ併用治療群(historical control, HC群)との間に全生存の差異の検討を予定している。本年度の報告はTRIよりの別添資料を参照いただきたい。
2)登録症例の臨床経過と独立モニタリング委員会への諮問事項
臨床試験の性格上、いまだ各登録症例の経過は公表することはできない
本年度はSAEに該当する重篤な有害事象の発生は認めず、独立モニタリング委員会への諮問事項は無かった。
ただ、照射部位に一致した、脳血管の閉塞に起因下と思われる脳梗塞の報告を認めた。幸い無症候であり、SAEとは判定しなかったが、本臨床試験の参加施設には周知を行い、同様の症例の発生に備えるよう連絡を行った。
結論
臨床試験を安全に継続中である。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201215018Z