細菌感染により刺激応答性に抗菌剤を放出するデバイスの開発

文献情報

文献番号
199800056A
報告書区分
総括
研究課題名
細菌感染により刺激応答性に抗菌剤を放出するデバイスの開発
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 義久(京都大学大学院)
研究分担者(所属機関)
  • 西村善彦(京都大学大学院)
  • 谷原正夫(奈良先端科学技術大学院大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ポリビニルアルコール(PVA)に酵素切断性ペプチドを介して抗菌剤(ゲンタマイシン)を結合し、細菌と接触すると細菌が放出した酵素により抗菌剤が放出される創傷被覆材を研究している。PVAにペプチドを結合させるには、高分子鎖中にカルボキシル基が必要であるが、従来その導入方法として無水酢酸を用いたエステル化を検討してきた。しかし、結合させたペプチド中に含まれるグアニジド基により分子内求核置換反応を受け、エステル結合が切断されることが解った。本研究の目的はペプチド結合後も安定で、オートクレーブ滅菌にも耐え得る上記デバイスを提供することである。
研究方法
エステル結合に変わるカルボキシル基導入の方法として、p-ホルミル安息香酸を用いたアセタール結合の導入の可能性を検討した。さらに、同方法により作成したカルボキシル基含有PVAに対して、ペプチドリンカー、およびゲンタマイシンを結合させ、オートクレーブ滅菌前後のゲンタマイシン放出量を測定した。
結果と考察
(結果)PVAに対するp-ホルミル安息香酸の量を変化させ、DMSO中、90℃、1時間、p-トルエンスルホン酸を触媒として用いて、加熱撹拌することでPVA鎖中に任意量のカルボキシル基を導入することが可能であった。1.2mol%(対PVA中水酸基)カルボキシル基導入PVAを用いて、ペプチドおよびゲンタマイシンを結合させた本デバイスの酵素による放出量は282.1μg/gゲルであり、PBSによる非特異放出量は9.9μg/gゲルであった。また、オートクレーブ滅菌終了後の放出量は204.1μg/gゲルであり、PBSによる非特異放出量は2.0μg/gゲルであった。(考察)アセタール結合によりカルボキシル基を導入した原料を用い、ペプチドおよびゲンタマイシンを結合させた本デバイスは、ペプチド結合後も切断されることなく安定であった。オートクレーブ滅菌後も同様に安定であり、実用に近いデバイスを得たものと思われる。従来の抗菌剤含有型創傷被覆材は、創傷部に貼付すると同時に抗菌剤が放出されるため、耐性菌を発生させる危険性が高かったが、本デバイスは細菌が増殖を始めた場合にのみ抗菌剤が放出されるため、耐性菌発現の危険性は低いものと期待される。
結論
酵素によりペプチド部分が分解され抗菌剤が放出される機構を確認できた。放出量は実用に際して十分であり、非常に有用なデバイスである。また、非特異放出量は極めて少なく、細菌が増殖を始めた場合に飲み抗菌剤が放出されることが解った。

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