治療抵抗性統合失調症に対する抑肝散の有用性と安全性に関する多施設共同二重盲検ランダム化比較試験

文献情報

文献番号
201215009A
報告書区分
総括
研究課題名
治療抵抗性統合失調症に対する抑肝散の有用性と安全性に関する多施設共同二重盲検ランダム化比較試験
課題番号
H22-臨研推-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
堀口 淳(島根大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠山 正彌(近畿大学 東洋医学研究所)
  • 澤 芳樹(大阪大学 医学系研究科)
  • 大門 貴志(兵庫医科大学 医学部)
  • 名井 陽(大阪大学 医学部)
  • 森 則夫(浜松医科大学 医学部)
  • 三辺 義雄(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 伊豫 雅臣(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 上野 修一(愛媛大学大学院 医学系研究科)
  • 宮岡 剛(島根大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合失調症の治療薬として臨床的に抑肝散が有用であるかを無作為化二重盲検試験で検討することを研究目的とする。
研究方法
治療抵抗性統合失調症患者における精神行動障害の改善を目的として、従来の抗精神病薬療法を中心とした統合失調症治療に抑肝散を併用投与する、統合医療の治療効果の臨床的有用性をエビデンスとすることである。全国多施設共同二重盲検ランダム化群間比較対象試験にて、抑肝散の可能性を客観的に評価し、日本発の独創的研究成果として国内外に発信していく。
結果と考察
実施医療機関34施設の先生方の尽力により、当初の予定よりも半年以上早く、目標症例である120例(平成24年度36例)に到達することが出来た。11月には症例固定を行い、12月にはキーオープンを実施、平成25年1月には解析を実施し、PANSS総点、PANSS陽性尺度、PANSS陰性尺度、PANSS総合精神病理尺度のいずれにおいても、抑肝散投与群がプラセボ群に比較し症状の改善傾向が高かった。更にG14「衝動性の調節障害」、G4「緊張」、N6「会話の自発性と流暢さの欠如」の下位項目では有意な有効性を示した。またプラセボ・実薬ともに重篤な副作用は認められなかった。
結論
本3ヶ年研究では、年度毎に達成課題を設定し研究を推進していたが、各研究協力施設の尽力により、当初の予定よりも半年以上早く、目標症例に到達することが出来た。また、関連部門の方々のご協力により、滞りなくデータクリーニング・症例固定・キーオープンを実施し、解析業務に取り掛かることが出来た。その結果、抑肝散が「衝動性の調節障害」、「緊張」、「会話の自発性と流暢さの欠如」の症状に対し有効であること、抑肝散が安全な薬剤であることを客観的に明らかにすることが出来た。我々の知る限り、精神神経疾患に対して、漢方薬の治療効果をプラセボ二重盲検試験で明らかになったのは、当研究が世界初であり非常に意義深い。今後は、本研究成果について、権威のある国際的なジャーナル及び学会において、研究成果を発表し、治療抵抗性統合失調症に対する抑肝散投与の臨床的意義を明らかにしていきたい。

公開日・更新日

公開日
2013-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201215009B
報告書区分
総合
研究課題名
治療抵抗性統合失調症に対する抑肝散の有用性と安全性に関する多施設共同二重盲検ランダム化比較試験
課題番号
H22-臨研推-一般-012
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
堀口 淳(島根大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠山 正彌(近畿大学 東洋医学研究所)
  • 澤 芳樹(大阪大学 医学系研究科)
  • 大門 貴志(兵庫医科大学 医学部)
  • 名井 陽(大阪大学 医学部)
  • 江副 幸子(大阪大学 医学部)
  • 森 則夫(浜松医科大学 医学部)
  • 三辺 義雄(金沢大学大学院 医学系研究科)
  • 伊豫 雅臣(千葉大学大学院 医学研究院)
  • 上野 修一(愛媛大学大学院 医学系研究科)
  • 宮岡 剛(島根大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合失調症の治療薬として臨床的に抑肝散が有用であるかを無作為化二重盲検試験で検討することを研究目的とする。
研究方法
治療抵抗性統合失調症患者における精神行動障害の改善を目的として、従来の抗精神病薬療法を中心とした統合失調症治療に抑肝散を併用投与する、統合医療の治療効果の臨床的有用性をエビデンスとすることである。全国多施設共同二重盲検ランダム化群間比較対象試験にて、抑肝散の可能性を客観的に評価し、日本発の独創的研究成果として国内外に発信していく。
結果と考察
実施医療機関34施設で本研究を実施した結果、当初の予定よりも半年以上早く、目標症例である120例に到達することが出来た。解析結果については、プライマリーエンドポイントであるPANSSの総点ならびに各項目(陽性尺度、陰性尺度、総合精神病理尺度)のいずれにおいても、抑肝散投与群がプラセボ投与群に比較し症状の改善傾向が高かった。特に、G14「衝動性の調節障害」、G4「緊張」、N6「会話の自発性と流暢さの欠如」の下位項目では有意な有効性を示した。また、プラセボ・実薬ともに重篤な副作用は認められなかった。
結論
本3ヶ年研究では、年度毎に達成課題を設定し研究を推進していたが、各研究協力施設の尽力により、当初の予定よりも半年以上早く、目標症例に到達することが出来た。また、関連部門の方々の協力により、滞りなくデータクリ―ニング・症例固定・キーオープンを実施し、解析業務に取り掛かることが出来た。その結果、抑肝散が「衝動性の調節障害」、「緊張」、「会話の自発性と流暢さの欠如」の症状に対し有効であること、抑肝散が安全な薬剤であることを客観的に明らかにすることが出来た。我々の知る限り、精神神経疾患に対して、漢方薬の治療効果をプラセボ二重盲検試験で明らかになったのは、当研究が世界初であり非常に意義深い。今後は、本研究成果について、権威のある国際的なジャーナル及び学会において、研究成果を発表し、治療抵抗性統合失調症に対する抑肝散投与の臨床的意義を明らかにしていきたい。

公開日・更新日

公開日
2013-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201215009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では抑肝散が有用であるかを無作為化二重盲検試験で検討した。その結果抑肝散が[衝動性の調節障害][緊張][会話の自発性と流暢さの欠如]の症状に対し有効かつ安全な薬剤であることを客観的に明らかにした。漢方薬の治療効果を明らかにしたのは世界初であり非常に意義深い。この成果は2013年以降国際学会等で報告し、さらに長期間(12週間)のプラセボを用いた小規模な探索的試験にて抑肝散が統合失調症の治療薬として有効かつ安全であるかを検討中であり、現在統計解析結果待ちである。
臨床的観点からの成果
この研究成果は、漢方製剤治療のエビデンス創出法の範となるばかりでなく、西洋医学の粋である抗精神病薬治療の限界を呈している治療抵抗性統合失調症例に対しての漢方薬併用の統合医療が確立される。また統合失調症の治療抵抗化に伴う医療資源・コストの節減につながり、患者とその家族の負担が軽減されるものである。さらに抗精神病薬の濫用を抑制し、その適正使用を推進することは、抗精神病薬によって誘発される副作用の減少にも寄与するものとなり、その医療経済的効果は極めて大きい。
ガイドライン等の開発
本試験はヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則、本試験実施計画書に遵守して実施した。抑肝散は安全性の確立した薬剤であるが、健康被害等に対する補償のため、臨床研究に関する臨床研究保険に加入した。また、本試験は臨床試験審査委員会による審査・承認を得て、同意説明文書を提示して十分なインフォームドコンセントを文書で得た患者に対して研究を実施し、「臨床研究に関する倫理指針」に基づき、「大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)」の臨床研究登録システムに本試験を登録した。
その他行政的観点からの成果
我が国においては、保険適応の漢方エキス製剤が多数あり、日常的に西洋医学と併用されていることから、西洋医学と漢方製剤の統合医療のエビデンスを形成できるのは我が国だけである。今回の研究は、統合医療分野においても、プラセボ薬による二重盲検ランダム化比較試験によって、その有効性を客観的に評価できた。
その他のインパクト
2012年2月25日(土)19:30~20:43放送、NHK「夜なのにあさイチ 漢方スペシャル」において「抑肝散」の効果について特集され、研究代表者がTV出演した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
39件
その他論文(和文)
48件
その他論文(英文等)
107件
学会発表(国内学会)
188件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Miyaoka T, Furuya M, Horiguchi J et al.
Efficacy and safety of yokukansan in treatment-resistant schizophrenia:a randomized,double-blind,placebo-controlled trial(a Positive and Negative Syndrome Scale, five-factor analysis)
Psychopharmacology  (2014)
10.1007/s00213-014-3645-8
原著論文2
宮岡 剛
治療抵抗性統合失調症に対する抑肝散の有効性
臨床精神薬理 , 17 , 1637-1643  (2014)
原著論文3
Miyaoka T, Furuya M, Horiguchi J et al.
Efficacy and Safety of Yokukansan in Treatment-Resistant Schizophrenia:A Randomized,Multicenter, Double-Blind,Placebo-Controlled Trial
Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine , 2-11  (2015)
原著論文4
Miyaoka T, Furuya M, Horiguchi J, et.al.
Efficacy and Safety of Yokukansan (TJ-54) in Treatment-Resistant Schizophrenia: A Randomized, Multi-center, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial.
Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine , 11-  (2015)
Article ID 201592

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-09

収支報告書

文献番号
201215009Z