H. pyloriの活性酸素代謝特性と遺伝子変異機構の分子論的解析

文献情報

文献番号
199800055A
報告書区分
総括
研究課題名
H. pyloriの活性酸素代謝特性と遺伝子変異機構の分子論的解析
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 英介(大阪市立大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 井上正康(大阪市立大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
唾液や野菜に含まれる多量の亜硝酸は酸性下で強い抗菌作用を示す一酸化窒素(NO)に変化するので、食物中の細菌の多くは強酸性胃液とNOにより有効に殺菌される。しかし、H. pyloriのごとく、酸性環境下でも生育して粘膜を障害する細菌もいる。高いウレアーゼ活性が本菌の胃内棲息に重要と考えられているが、NO抵抗性の分子機構は不明である。我々は、本菌が積極的にスーパーオキシドを産生して胃液中のNOを消去し、変異原性を有するパーオキシナイトライトが生ずることを見出した。本研究は、H. pyloriの活性酸素産生機構、本菌と胃粘膜細胞の遺伝子に対するその影響、本菌の形態および生化学的変化との関係から解明することを目的とする。
研究方法
H. pyloriの正常な桿状(Bacillari型)構造と長期培養により球状化した菌体(Coccoid型)を用いて解析した。活性酸素産生能は主にスーパーオキシドを検出する化学発光試薬MCLAとヒドロキシラジカルを検出するL-012を用いて解析した。タンパク質の酸化修飾体であるカルボニル化蛋白とペルオキシナイトライトの蛋白チロシン残基のニトロ化をウエスタンブロッテングにより検出した。DNAの酸化は電気化学検出器を用いたHPLC法により解析した。
結果と考察
1)H. pyloriの活性酸素産生能を主にスーパーオキシドを検出する化学発光試薬MCLAとヒドロキシラジカルを検出するL-012を用いて解析した結果、桿状菌は主にスーパーオキシドを、球状菌はヒドロキシラジカルを産生していることが判明した。2)タンパク質の酸化修飾体であるカルボニル化蛋白をウエスタンブロッテングにより検出した結果、球状化に伴い多量のカルボニル化蛋白が増加することが判明した。3)電気化学検出器を用いたHPLC法により解析した結果、球状化に伴いDNAの酸化指標である8-OH-G量が増加した。4)スーパーオキシドとNOの反応産物であるペルオキシナイトライトの蛋白チロシン残基のニトロ化をウエスタンブロッテングにより検出した結果、球状化に伴いニトロ化チロシンが増加していた。
結論
H. pyloriは、胃内の環境変化に伴い活性酸素代謝の性状が大きく変化すること予想される。遺伝子変異原性の高いペルオキシナイトライトやヒドロキシラジカルが増加して、菌体自体に酸化ストレスとなり遺伝子多型や宿主に対する癌原性の原因となる可能性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-