精神・神経・筋分野における治験・臨床研究の推進のための基盤整備に関する研究

文献情報

文献番号
201214002A
報告書区分
総括
研究課題名
精神・神経・筋分野における治験・臨床研究の推進のための基盤整備に関する研究
課題番号
H22-臨研(機関)-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中込 和幸(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナルメディカルセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 武田伸一(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
  • 後藤雄一(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
  • 村田美穂(国立精神・神経医療研究センター 病院 神経内科診療部)
  • 松岡 豊(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナルメディカルセンター 臨床研究計画解析室)
  • 中川敦夫(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナルメディカルセンター 臨床研究支援室)
  • 山田光彦(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神薬理研究部)
  • 米本直裕(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神薬理研究部)
  • 立石智則(国立精神・神経医療研究センター 臨床研究支援室)
  • 福田昂一(国立精神・神経医療研究センター 臨床研究支援室)
  • 近野健一(国立精神・神経医療研究センター 病院 治験管理室)
  • 玉浦明美(国立精神・神経医療研究センター 病院 治験管理室)
  • 太幡真紀(国立精神・神経医療研究センター 病院 治験管理室)
  • 功刀 浩(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第三部)
  • 伊藤弘人(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健部)
  • 大森 崇(同志社大学文化情報学部)
  • 橋本亮太(大阪大学大学院医学系研究科情報統合)
  • 川嵜弘詔(九州大学大学院医学研究院精神病態医学)
  • 小牧宏文(国立精神・神経医療研究センター 病院 小児神経診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
68,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、精神・神経・筋分野における治験・臨床研究の推進のための基盤整備に関する研究の最終年度として、1)臨床研究に携わる人材育成のプログラムの整備、2)医師主導治験および多施設共同臨床研究の支援および病院での実施体制の整備、3)IRBおよび倫理委員会の機能強化、4)治験の症例集積性を目的とした疾病のレジストリーと連携した臨床試験ネットワークの稼働、以上を今年度の本研究の目的とした。
研究方法
1)臨床研究に関する人材育成では、臨床研究研修制度として、入門講座、実践講座、倫理講座の3つの構成とし、若手研究グループでは、週1回のペースでプロトコル作成、研究実施、解析、論文作成等の実質的な指導と支援を行った。
2)治験・臨床研究支援・実施体制構築では、TMC臨床研究支援室による医師主導治験、早期探索的臨床試験の支援状況、CRCによる医師主導治験支援整備、治験事務局によるOHRPおよびFWAへの登録、以上の支援内容を振り返り、評価できる点と課題を抽出した。
3)倫理審査と臨床研究及び治験審査委員会の運用の効率化を目的とした、倫理審査申請システムの開発およびiPadによるIRB審査資料の電子化実施についてデモンストレーションを実施した。
4)治験の促進を目指した希少疾病の臨床試験ネットワークのモデル事業の展開、また精神疾患臨床研究ネットワークの構築に向けた検討、パーキンソン病に関する患者データベースに作成および患者臨床研究支援チームを検討した。
結果と考察
1) 臨床研究に関する人材育成
若手育成グループからは、平成25年1月31日時点で原著海外論文4編、日本語総説論文3編、書籍分担1編が発表された。CRT‐Webは、平成23年4月1日に一般公開を始め、平成25年1月31日時点の登録者は996名となった。
2)治験・臨床研究支援・実施体制構築
a) 医師主導治験・早期探索的臨床試験の準備・実施等の体制整備
国際共同機関主幹の医師主導治験(ケース1)では、2012年6月13日に必要な治験薬2剤を関東信越厚生局を通じて輸入し、2012年7月から治験開始され、6名実施中である。
自施設開発新規医薬品の医師主導早期探索的臨床試験(ケース2)は、2012年9月治験計画届出を行い、治験薬は自施設で製造し、 11月より健常成人を対象としたSTEP1が開始され、来年度患者を対象としたSTEP2が開始される。
自施設開発新規医薬品の医師主導早期探索的臨床試験(ケース3:治験薬提供者あり)では、PMDAの薬事戦略相談を重ね、プロトコル検討を行い、プロトコルが立案された。2013年3月には対面助言、来年度4月IRB、治験計画届出後、秋から開始の予定。
病院では、First in human試験の実施体制を確立するため、医師を中心とした関連部署への治験に関する教育・救急体制の構築およびトレーニングを実施した。
3) 治験・臨床試験ネットワークの準備・構築
2012年12月21日に全国27施設の加盟となる筋ジストロフィー患者レジストリーと連携した筋ジストロフィー臨床試験ネットワークが発足した。施設調査によって、5000例を超える希少疾病である神経筋疾患患者が把握できた。
パーキンソン病では、今年度院内の患者を対象に臨床研究・治験を支援するレジストリーを構築し、情報発信を開始した。来年度は、医療連携先の医療機関とネットワークを構築する予定である。精神科臨床研究ネットワークでは、全国12施設の大学病院等と連携して精神疾患に対する早期第2相試験の企業治験を実施またICH-GCP準拠の臨床研究を開始する予定である。
4)治験審査委員会審査資料の電子化実施
 平成24年度第10回IRB(H24.1.24開催)より、臨床研究・治験支援クラウドサービス「CT-Portal」を活用してタブレット端末(iPad®)によるIRB審査資料の電子化を開始した。
結論
この3年間の基盤整備により、精神・神経疾患および希少疾患の臨床研究ネットワークモデルの構築、神経・筋分野の希少疾患治療薬の日本初の画期的新薬創出に貢献することの目標に近づく事が出来たと考える。
来年度以降は、希少疾病・難治、神経疾患、精神疾患の臨床研究の中核施設としての新たな整備を開始する。具体的には、1.ICH-GCP準拠の臨床研究を円滑に実施できる支援体制、2.難病・希少疾病に対する医師主導治験による出口戦略まで含めた開発モデルの提供、3.精神・神経・筋・発達障害分野における高度専門医療研究センター病院である特色を生かし、当該分野のAROとして他施設の臨床研究を積極的に支援していくことを目標とし、引き続き基盤整備を行っていく。

公開日・更新日

公開日
2013-08-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201214002B
報告書区分
総合
研究課題名
精神・神経・筋分野における治験・臨床研究の推進のための基盤整備に関する研究
課題番号
H22-臨研(機関)-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
中込 和幸(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナルメディカルセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 武田伸一(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
  • 後藤雄一(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
  • 村田美穂(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
  • 松岡豊(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
  • 中川敦夫(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナルメディカルセンター )
  • 山田光彦(国立精神・神経医療研究センター  精神保健研究所 精神薬理研究部)
  • 米本直裕(国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナルメディカルセンター生物統計解析室 )
  • 立石 智則(国立精神・神経医療研究センター  トランスレーショナルメディカルセンター 臨床研究支援室)
  • 福田 昂一(国立精神・神経医療研究センター  トランスレーショナルメディカルセンター 臨床研究支援室)
  • 近野 健一(立精神・神経医療研究センター  病院 治験管理室)
  • 玉浦 明美(立精神・神経医療研究センター  病院 治験管理室)
  • 太幡 真紀 (立精神・神経医療研究センター  病院 治験管理室)
  • 功刀 浩(国立精神・神経医療研究センター  神経研究所 疾病研究第三部)
  • 伊藤 弘人(国立精神・神経医療研究センター  精神保健研究所 社会精神保健部)
  • 大森 崇(同志社大学文化情報学部)
  • 橋本 亮太(大阪大学大学院医学系研究科 情報統合医学講座精神医学教室)
  • 川嵜 弘詔(九州大学大学院医学研究院精神病態医学)
  • 中林 哲夫((前)国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナルメディカルセンター)
  • 小牧 宏文(国立精神・神経医療研究センター 病院 小児神経診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神・神経・筋分野の治験・臨床研究の質・量の向上、さらに希少疾病治療の新薬創出へつなげる為に、1)治験/臨床研究のための人材育成、2)治験/臨床研究の支援・実施体制の強化、3)治験/臨床研究の質および信頼性の向上を実現するための基盤整備を目的とした。
研究方法
1)臨床研究に関する人材育成では、教育研修プログラムとして臨床研究倫理講座、臨床研究基本・専門セミナー、若手研究者育成のためのフェローシップ体制、臨床研究に対するe‐learning、LDM育成プログラムの構築を行った。また、臨床研究の申請及び実施において、研究課題の科学性を確保し、公正性を高めるため、①研究の公正性確保のための体制整備、②研究倫理に関する教育・研修を実施した。
2)臨床研究支援・相談支援体制の構築を目的として、開発戦略薬事グループが中心となり、コンサルテーション「臨床研究相談窓口」⇒臨床研究計画の立案⇒規制当局対応⇒研究審査申請支援⇒研究実施⇒報告書作成、以上の支援機能の検証を行った。国際共同/医師主導治験、早期探索的臨床試験の整備では、①FIH試験開始に向けた医師・CRC・コメディカルを対象とした試験デザイン等に関する知識の習得および救急時の訓練、②データの信頼性保証を行うための、モニタリングおよびデータマネジメント体制を構築、③バイオマーカーを解明し新規治療への応用のための生体試料レポジトリーの整備を行った。臨床研究ネットワークモデルの構築を目的として、患者レジストリーと連携した臨床試験ネットワークの準備・検討を行った。
3)治験/臨床研究の質および信頼性の向上を目的とする倫理審査を効率化し、進捗管理を行うための、倫理審査申請のオンラインシステムの開発および治験業務や治験審査の効率化をはかるためiPadによるIRB審査資料の電子化実施を図る。
結果と考察
1)臨床研究に関する人材育成
①若手育成グループからは、平成23年4月~平成25年1月31日時点で原著海外論文7編、日本語総説論文5編、書籍分担1編が発表された。CRT‐Webは、平成23年4月1日に一般公開を始め、平成25年1月31日時点の登録者は996名となった。
②「研究倫理に関する研修受講記録制度」に定める倫理講座は、平成24年度は1回の「新規受講者講習会」と、3回の「更新対象講習会」が開講され、当センターの内外より、のべ280名の受講者が参加した。
③平成24年7月より事前審査委員会オブザーバシップ制度を実施し、神経研究所、精神保健研究所、病院から合わせて10名の研究者及び医療者が事前審査委員会における審議を経験した。
2)治験を含む臨床研究の支援・実施体制の強化
①臨床研究支援・相談支援体制の構築
医師主導治験3プロトコルに取り組み、センター初のシーズをヒトに初めて投与する早期探索的臨床試験の準備から実施に至る支援および実施体制を構築した。特に、モニタリング部門・監査部門を稼働させ、モニターおよび監査担当者を育成し医師主導治験を実施、またCRCと連携したローカルデータマネジメント体制を確立しセンター内のデータの品質管理・保証体制を確立した。バイオリソース及び付随する臨床情報を集約した。また6ナショナルセンターバイオバンクネットワーク事業と連携して、既提供試料の登録、運用に関する情報を公開するとともに、精神疾患患者からの情報/試料の登録を開始した。
②臨床研究ネットワークモデルの構築
平成24年12月21日に全国27施設の加盟となる筋ジストロフィー患者レジストリーと連携した筋ジストロフィー臨床試験ネットワークが発足した。施設調査によって、5000例を超える希少疾病である神経筋疾患患者が把握できた。
3)治験/臨床研究にかかる質および信頼性の向上
①平成24年度第10回IRB(H24.1.24開催)より、臨床研究・治験支援クラウドサービス「CT-Portal」を活用してタブレット端末によるIRB審査資料の電子化を開始した。
②平成22年11月より「倫理審査申請システム」運用を開始し、573件の倫理申請課題を管理しているが、現在に至るまでシステムの大きな問題は発生していない。
結論
我が国における精神・神経・筋分野の治験・臨床研究を質および量的な向上の為の基盤整備を行った。今後は精神・神経医療研究センターを中心としたオールジャパン体制でイノベーションを促進させていく。

公開日・更新日

公開日
2013-08-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201214002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
精神・神経領域の臨床研究に関わる研究者の育成および神経・筋分野の希少疾病薬剤のシーズの実用化に向けた早期探索的臨床試験を実施により、日本発の画期的新薬創出に貢献する為の第1歩へとつながった。
臨床的観点からの成果
臨床研究に対するe-learningの開発は、他施設向けにも利用できるシステムとすることで、精神・神経領域の臨床研究に関わる研究者の育成の教材として活用出来ると考える。疾患レジストリーと連携し臨床試験ネットワークを構築した筋ジストロフィーに関して、希少疾患ネットワークのモデルとするのみならず、他の希少疾患および精神・神経領域にも応用して、我が国の当該領域における治験・臨床研究の推進となるものと考える。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
臨床研究・治験活性化5か年計画2012でも提言されている、治験の症例集積性の向上、治験業務のIT化、治験・臨床研究に携わるスタッフの人材育成に取り組み、早期探索的臨床試験やICH-GCP準拠の臨床研究実施の体制整備および実施につなげたことは、今後の当該領域の中核を担うべき基盤を整備したものと考える。
その他のインパクト
研究倫理審査に関する電子システムの開発.第2回日本臨床試験研究会学術集会.2011.2.4.大阪
筋ジストロフィー臨床試験ネットワーク発足式 2013.2.1 学士会館
医薬品/医療機器の医師主導治験における治験実施計画書等の記載事例集[ebook]2013.7発行予定.サイエンス&テクノロジー株式会社

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
中林哲夫, 中村治雅, 岡本長久
本邦における国際共同治験の現状と課題–抗うつ薬開発の最近の動向
臨床精神神経薬理 , 13 , 255-263  (2010)
原著論文2
玉浦明美, 山岸美奈子, 中林哲夫 他
精神・神経関連の治験における中止理由に関する傾向分析
臨床薬理 , 41 , Suppl S202-  (2010)
原著論文3
中林哲夫, 一丸勝彦, 宇山佳明
うつ病研究における海外の動向 –抗うつ薬開発の国内外の動向
Depression Frontier , 7 (1) , 82-89  (2009)
原著論文4
山田光彦
特集-大規模臨床研究の意義と限界-
分子精神医学 , 10 (4) , 261-  (2010)
原著論文5
中川敦夫,山田光彦
特集-大規模臨床研究の意義と限界-うつ病治療における大規模臨床研究の意義と課題
分子精神医学 , 10 (4) , 262-268  (2010)
原著論文6
大槻露華,稲垣正俊,山田光彦
特集-大規模臨床研究の意義と限界-大規模臨床研究を利用した遺伝子解析研究の意義と限界
分子精神医学 , 10 (4) , 291-298  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2018-05-21

収支報告書

文献番号
201214002Z