総合医療を主軸とした臨床研究・治験推進モデルの形成と臨床研究基盤整備に関する研究

文献情報

文献番号
201214001A
報告書区分
総括
研究課題名
総合医療を主軸とした臨床研究・治験推進モデルの形成と臨床研究基盤整備に関する研究
課題番号
H22-臨研(機関)-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
新保 卓郎(独立行政法人国立国際医療研究センター 臨床研究センター医療情報解析研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 上村 直実(国立国際医療研究センター国府台病院 院長)
  • 清水 利夫(国立国際医療研究センター 副院長)
  • 野田 光彦(国立国際医療研究センター糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 木村 昭夫(国立国際医療研究センター 副院長)
  • 加藤 規弘(国立国際医療研究センター研究所遺伝子診断治療開発研究部)
  • 溝上 哲也(国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学予防研究部)
  • 菊池 嘉(国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター)
  • 伊藤 俊之(国立国際医療研究センター臨床研究センター臨床研究支援部)
  • 宮木 幸一(国立国際医療研究センター臨床研究センター臨床疫学研究室)
  • 川崎 敏克(国立国際医療研究センター臨床研究センター治験管理室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
59,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では国立国際医療研究センターで臨床研究を推進する基盤を整備する。当センターは200名の研修医、後期研修医を要する総合教育病院である。このような総合教育病院において臨床研究の基盤を整備し、臨床研究推進体制を構築することを目的とした。
研究方法
24年度の重点的に以下の活動を行った。
1)人材育成:新たに着任する生物統計家を中心に統計セミナーを強化する。
2)倫理委員会:研究者に対する研修と支援、倫理委員会審査の質の向上、倫理委員会事務局業務の強化、承認済み研究の点検体制整備をはかった。
3)支援体制の整備:PMDA経験者や生物統計家からなるプロトコール作成ユニットを構築し、医師主導治験などの研究計画作成を支援する。またコンサルテーションや臨床研究コーディネーター(Medical Research Coordinator: MRC)による研究支援を継続的に行う。データセンターでの多施設共同研究のデータマネージメント体制の強化を図り、標準業務手順書(SOP) をさらに充実させる。
4)患者レジストリー整備:24年度はData Warehouse (DWH)の利用が安全にかつ実際に研究に活かせる運用体制を完備する。また診療現場での患者登録支援ツールを開発する。
5)治験環境の整備:24年度は出来高払い制度をさらに見直し、症例集積性を向上させる。
6)継続的多施設共同研究ネットワーク整備:生活習慣病領域での研究ネットワークで患者登録を開始する。また多施設共同研究の推進のため、職域コホートでのデータ標準化を目指す。
結果と考察
1)臨床研究に関する知識を持ち、研究を自ら実施できる人材、支援する人材が育成された。このために多様な内容のセミナー・講習会を開催した。本年度は新しい生物統計家の着任に伴い、統計学セミナーを充実させた。教育体制整備の一環としてセンター内で利用可能なe-learning systemを構築した。
2)倫理審査の体制が整備され、倫理性・科学性が担保され、臨床研究の質の向上に資することが期待された。このために、研究者に対する研修と支援、倫理委員会審査の質の向上、倫理委員会事務局業務の強化、承認済み研究の点検体制整備をはかった。臨床研究認定対象講習会の実施、研究計画書雛形の作成、小委員会の副委員長の増加、IT化を目指した審査申請システムの構築、他施設とのモニタリングの相互実施を行った。
3)PMDA経験者や生物統計家などの専門家による支援体制が構築された。臨床研究センター内に専門家によるプロトコール作成ユニットを組織横断的に構築した。
4)臨床研究レジストリー、DWHなどの研究基盤が構築された。このために戸山病院、国府台病院でDWHを利用する体制が整備され、また国府台病院では患者レジストリーを整備して25年3月までに4025例を登録した。外来や診療現場での患者登録を容易とする端末やシステムが開発された。
5)治験以外の研究に対する支援を行うMRC、データセンター、治験管理室など実務的支援を行う体制が整備された。このためにJCRACデータセンターではSOPを充実させた。治験管理室では出来高払い制度のさらなる見直しを行った。
 このような中で24年度に、医師主導治験、先進医療のプロトコールが作成された。
 本研究により臨床研究センターが整備される中で、若手医師の研究参加は向上した。また最終年度には、医師主導治験や先進医療などの研究計画を専門的に支援できる体制が構築でき、研究計画が作成できた。しかし多施設共同研究ネットワークの構築は容易ではなく、さらに臨床研究に関する興味とスキルのある人材の確保が必要と思われた。多くの研修病院で臨床研究を指導できる人材の欠如が問題となっている。臨床研究に関する教育を臨床研修の中に取り入れていくシステムをつくっていく必要がある。
 医師主導治験や先進医療などICH-GCP準拠の研究も実施できる体制が構築できた。近年、臨床研究の質の確保は喫緊の課題となっている。データセンターの品質管理の体制をより強化する。データマネージメントにおける実務的な課題の解決能力を蓄積し、臨床医と共有することが、アカデミックな施設におけるデータセンターの意義である。これにより臨床研究の質の向上につなげられることを期待している。
結論
 人材が育成され臨床研究の裾野を広げるモデルが示された。倫理委員会の機能を充実させることで、研究の倫理性と科学性を高められると考えられた。研究計画の段階で、専門的スキルを有するプロトコール作成ユニットが有効であった。また実際の研究の遂行には、DWHや患者レジストリーが有用と思われ、実務的な支援を行う機能としてのMRC、データセンター、治験管理室などが効果的にサポートできると思われた。

公開日・更新日

公開日
2013-08-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201214001B
報告書区分
総合
研究課題名
総合医療を主軸とした臨床研究・治験推進モデルの形成と臨床研究基盤整備に関する研究
課題番号
H22-臨研(機関)-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
新保 卓郎(独立行政法人国立国際医療研究センター 臨床研究センター医療情報解析研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 上村 直実(国立国際医療研究センター国府台病院 院長)
  • 清水 利夫(国立国際医療研究センター 副院長)
  • 野田 光彦(国立国際医療研究センター糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 木村 昭夫(国立国際医療研究センター 副院長)
  • 加藤 規弘(国立国際医療研究センター研究所遺伝子診断治療開発研究部)
  • 溝上 哲也(国立国際医療研究センター臨床研究センター疫学予防研究部)
  • 菊池 嘉(国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター)
  • 伊藤 俊之(国立国際医療研究センター臨床研究センター臨床研究支援部)
  • 宮木 幸一(国立国際医療研究センター臨床研究センター臨床疫学研究室)
  • 川崎 敏克(国立国際医療研究センター臨床研究センター治験管理室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究基盤整備推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 当センターは200名の研修医、後期研修医を要する総合教育病院である。本研究では、このような総合教育病院において臨床研究の基盤を整備し、臨床研究推進体制を構築することを目的とした。臨床研究センター内に臨床研究支援部(臨床研究支援室、臨床研究相談室、臨床研究推進室、治験管理室など)や医療情報解析研究部(医学統計研究室、JCRACデータセンターなど)を設置し活動を行った。
研究方法
重点的に取り組んだのは以下であった。
1)人材育成
2)倫理委員会:研究者に対する研修と支援、倫理委員会審査の質の向上、倫理委員会事務局業務の強化、承認済み研究の点検体制整備をはかった。
3)支援体制の整備:専門家からなるプロトコール作成ユニットを構築し医師主導治験などの研究計画作成を支援した。また臨床研究に対する一般的なコンサルテーションが実施された。臨床研究コーディネーター(MRC)による研究支援を継続的に行うこととした。データセンターでの多施設共同研究のデータマネージメント体制を強化し、標準業務手順書(SOP) を充実させた。
4)患者レジストリー整備:Data Warehouse (DWH)の利用が安全にかつ実際に研究に活かせる運用体制を整備した。また診療現場での患者登録支援ツールを開発した。
5)治験環境の整備:前払い制から出来高払い制に移行し、症例集積性向上を目指した。
6)継続的多施設共同研究ネットワーク整備:生活習慣病領域での研究ネットワークを構築した。また多施設共同研究の推進のため、職域コホートでのデータ標準化を目指した。
結果と考察
1)臨床研究に関する知識を持ち、研究を自ら実施できる人材、支援する人材が育成された。このために多様な内容のセミナー・講習会を開催した。24年度は新しい生物統計家の着任に伴い、統計学セミナーを充実させた。教育体制整備の一環としてセンター内で利用可能なe-learning systemを構築した。
2)倫理審査の体制が整備され、倫理性・科学性が担保され、臨床研究の質の向上に資することが期待された。このために、研究者に対する研修と支援、倫理委員会審査の質の向上、倫理委員会事務局業務の強化、承認済み研究の点検体制整備をはかった。臨床研究認定対象講習会の実施、研究計画書雛形の作成、小委員会の副委員長の増加、IT化を目指した審査申請システムの構築、他施設とのモニタリングの相互実施を行った。
3)PMDA経験者や生物統計家などの専門家による支援体制が構築された。臨床研究センター内に専門家によるプロトコール作成ユニットを組織横断的に構築した。
4)臨床研究レジストリー、DWHなどの研究基盤が構築された。このために戸山病院、国府台病院でDWHを利用する体制が整備され、また国府台病院では患者レジストリーを整備して25年3月までに4025例を登録した。外来や診療現場での患者登録を容易とする端末やシステムが開発された。
5)治験以外の研究に対する支援を行うMRC、データセンター、治験管理室など実務的支援を行う体制が整備された。このためにJCRACデータセンターではSOPを充実させた。治験管理室では出来高払い制度のさらなる見直しを行った。
 このような中で24年度に、医師主導治験、先進医療のプロトコールが作成された。
 本研究により臨床研究センターが整備される中で、若手医師の研究参加は向上した。また最終年度には、医師主導治験や先進医療などの研究計画を専門的に支援できる体制が構築でき、研究計画が作成できた。しかし多施設共同研究ネットワークの構築は容易ではなく、さらに臨床研究に関する興味とスキルのある人材の確保が必要と思われた。多くの研修病院で臨床研究を指導できる人材の欠如が問題となっている。臨床研究に関する教育を臨床研修の中に取り入れていくシステムをつくっていく必要がある。
 医師主導治験や先進医療などICH-GCP準拠の研究も実施できる体制が構築できた。近年、臨床研究の質の確保は喫緊の課題となっている。データセンターの品質管理の体制をより強化する必要がある。データマネージメントにおける実務的な課題の解決能力を蓄積し、臨床医と共有することが、アカデミックな施設におけるデータセンターの意義である。これにより臨床研究の質の向上につながることを期待している。
結論
 人材が育成され臨床研究の裾野を広げるモデルが示された。倫理委員会の機能を充実させることで、研究の倫理性と科学性を高められると考えられた。研究計画の段階で、専門的スキルを有するプロトコール作成ユニットが有効であった。また実際の研究の遂行には、DWHや患者レジストリーが有用と思われ、実務的な支援を行う機能としてのMRC、データセンター、治験管理室などが効果的にサポートできると思われた。

公開日・更新日

公開日
2013-08-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201214001C

収支報告書

文献番号
201214001Z