腫瘍血管内皮細胞への薬物送達システムによる耐性癌の化学療法と臨床応用へ向けた製剤化

文献情報

文献番号
201212029A
報告書区分
総括
研究課題名
腫瘍血管内皮細胞への薬物送達システムによる耐性癌の化学療法と臨床応用へ向けた製剤化
課題番号
H24-医療機器-若手-011
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
畠山 浩人(北海道大学 大学院薬学研究院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤耐性は癌の化学療法を困難にする深刻な問題である。がん細胞ではなく腫瘍血管を標的とした血管新生阻害が注目され耐性癌にも有効であるが、消化管出血など重篤な副作用も報告されている。疾患部位に選択的な薬物送達システム(Drug Delivery System: DDS)は治療効果の増強と副作用の軽減に有用な手段の一つと考えられる。これまでに腫瘍血管内皮細胞を標的化可能なDual-ligandリポソーム(DL-LP)の構築に成功している。DL-LPは、標的分子への選択的リガンドと、細胞内取り込みを飛躍的に向上させる細胞膜透過性ペプチドが修飾され、腫瘍血管への親和性を向上させるため直径を300nmに制御している。既に承認されているリポソーム製剤Doxilではまったく効果のない薬剤耐性腎細胞癌担癌モデルで、DL-LPは腫瘍血管を破壊し抗腫瘍効果を示した。投与量も通常よりも低く抑えられ、体重減少や肝毒性などの副作用は見られず安全性も高いことが示されている。本研究では、薬剤耐性癌治療への臨床応用に向けて、適応可能な癌種の拡大に向けた新規DL-LPリポソーム開発およびGMP基準の製剤化に向けたDL-LPリポソームの大量調製法の確立を目的として研究を行った。
研究方法
1.適応可能な癌種の拡大に向けた新規DL-LPリポソーム開発
適応可能な癌種を広げるために、ドキソルビシン耐性癌の探索を行った。17種類の癌細胞について、in vitro培養細胞においてドキソルビシン―細胞毒性試験を行った。様々な癌種に対応するため、標的分子とリガンドの探索を行い、インテグリン(Integrin)や血管内皮増殖因子受容体(VEGF-R2)に選択的に結合するペプチドモチーフをDL-LPに修飾し、腫瘍組織から単離した腫瘍血管内皮細胞やin vivo担癌モデルにおける選択性や抗腫瘍効果を評価した。
2. GMP基準の製剤化に向けたDL-LPリポソームの大量調製法の確立
非臨床試験にむけ調製容量のスケールアップとGMP基準の製造を目的に、バイオメッドコア社との連携を開始し、閉鎖系の連続流路マイクロインラインアセンブラー技術によるDL-LPの大量製造法の検討に着手した。DL-LPは通常よりも大きい300nmとする必要があり溶媒濃度、脂質濃度、加温の温度時間等のパラメータの検討を行い、300nmのリポソーム調製条件の探索を行った。
結果と考察
1.適応可能な癌種の拡大に向けた新規DL-LPリポソーム開発
適応癌種は研究開始時、腎細胞癌OSRC-2細胞のみであったが、肺癌(H69AR)、乳癌(MDA-MB-231)、膵癌(PANC-1)、卵巣癌(SKOV-3)を新たにドキソルビシン耐性癌として見出した。また、Integrin標的化DL-LPはin vivo腎癌モデルにおいて腫瘍血管内皮への移行と抗腫瘍効果に関して既存の剤Doxilと比較し有効性を示した。一方、VEGF-R2標的化DL-LPは、in vitro腫瘍血管内皮細胞でリガンド、CPPの修飾密度など製剤処方を最適化した。今後はin vivo耐性癌モデルでの標的性・抗腫瘍効果について検討を行う。
2. GMP基準の製剤化に向けたDL-LPの大量調製法の確立
 バッチ製造の段階ではるが、至適溶媒濃度や流速を見出し300nmのリポソームを調製することに成功した。従来の単純水和法ではDL-LPの調製スケールが1mL/hrであったが、10mL/hr以上と10倍程度調製スケールを向上させることに成功した。今後は閉鎖系流路を用いた大量製造を検討することで、製造スケールを100mL/hr、当初の100倍以上とすることが見込まれる。
結論
新たなドキソルビシン耐性癌種を4種類見出すことに成功した。今後はin vivoモデルの作出とDL-LPを用いた抗腫瘍効果試験を行う。またDL-LPの標的分子―リガンドについて2種類追加することに成功した。今後は、先に見出した耐性癌モデルを含むin vivo担癌モデルを用い癌種によるリガンドの最適化と、適応癌種の拡大を行う。
製剤化研究では、当初の予定を前倒ししバイオメッドコア社と連携しGMP製造にむけた大量調製法の条件検討により、300nmのリポソームの調製条件を見出すことに成功し、調製スケールを10倍程度向上させることに成功した。以上より当初の予定を概ね達成した。

公開日・更新日

公開日
2013-09-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-11-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201212029Z