グロメルロイド血管制御ナノsiRNAによる膠芽腫の革新的治療戦略開発

文献情報

文献番号
201212028A
報告書区分
総括
研究課題名
グロメルロイド血管制御ナノsiRNAによる膠芽腫の革新的治療戦略開発
課題番号
H24-医療機器-若手-010
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
狩野 光伸(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 岸村 顕広(九州大学大学院工学研究院)
  • 松崎 典弥(大阪大学大学院工学研究科)
  • 西原 広史(北海道大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトのもっとも悪性な脳腫瘍である悪性膠芽腫における特徴的血管構造であるグロメルロイド血管(GV)の妥当な実験系は現在存在しないため、これをヒト病理学的所見に照らしながら確立し、この実験系を用いてGV形成の責任分子を探索し、これら分子群に対するsiRNA配列を特定し、そのsiRNAを搭載したナノDDSをヒトにおける適用可能性を視野に入れつつ開発して、その効果を本研究において確立した実験系において確認する。
研究方法
本研究で用いる膠芽腫モデル細胞株の選定にあたっては、その細胞由来の分泌性因子が壁細胞分化を促進することを指標とした。結果、ヒト膠芽腫病理像をよく反映する新たなモデル細胞株(TS-GFP細胞)を見出した。H24年度はこのTS-GFP細胞を用いた膠芽腫動物モデルの作製や、GV形成を司るシグナル分子の候補特定とGV制御に最も効果的な治療標的分子群の同定を進めた。治療標的分子群としては、GV形成に対し促進的に働く腫瘍由来因子に着目し、特に老化関連分泌因子群(Senescence-associated secretory proteins, SASPs)に着目して解析した。さらに、GV構成細胞に対し適切なsiRNA搭載用ナノ粒子を構築するため、治療標的候補分子に対する発現抑制効率の高いsiRNA配列の決定を行った。
結果と考察
TS-GFP細胞の同所腫瘍の病理組織はGV様構造を呈するが、既報においてPCマーカー発現までは解析されていなかった。そこで、まずin vitro実験を行った結果、同細胞の培養上清により10T1/2における各種PCマーカーの発現上昇が認められた。一方、in vivo、すなわちTS-GFP細胞の同所移植標本を組織学的に解析した結果、GV様の構造はヒト同様にSMA陽性細胞が他モデルに比較し厚く血管周囲を覆っていることが示された。TS-GFP細胞における各種SASPsの発現についても定量的PCRにより評価を行った結果、TS-GFP細胞ではSASPs遺伝子群が高く発現していることが示された。さらに既存データベースを用いたin silico解析により、膠芽腫予後と各種SASPs分子発現量の相関について解析を行った結果、SASPs分子の発現量が膠芽腫予後と有意に相関することが示唆された。以上より、TS-GFP細胞中から分泌されるSASPsが壁細胞分化に影響をもたらしうること、すなわちSASPsがGV抑制の標的候補として妥当であることが改めて示唆され、GV抑制による膠芽腫予後改善を試みるモデル細胞としてTS-GFP細胞が有用であることも確認された。そこで主にこれらSASPsの発現を抑制するsiRNA配列の決定を行った。また、既存データベースを用いたin silico解析をさらに進めた結果、膠芽腫予後に優位に相関する壁細胞関連分子を複数見出している。本研究のアプローチ、すなわちSASPsと関連する病巣血管構築の制御を通じた治療法開発の試みは他に類を見ないものであるが、SASPs自体は腫瘍のみならず各種難治炎症性疾患への関与が指摘されており、本研究を通じ得られる知見は他難治疾患に対しても将来的に応用性を示しうるものである。
結論
本年度は下記の進展があった。1. GV形成責任シグナル分子群の同定:TS-GFP細胞により10T1/2にて一般的にPCマーカーとされる各種分子の発現上昇が認められた。さらにTS-GFP細胞における各種SASPsの発現について定量的PCRにより評価し、SASPs遺伝子群がTS-GFP細胞では高く発現していることが示された。以上よりSASPsがGV抑制の標的候補であることが改めて示唆された。2. GV実験系の確立:TS-GFP細胞による同所腫瘍の病理組織はGV様構造を呈し、ヒト同様にSMA陽性細胞が他モデルに比較し厚く血管周囲を覆っていることが示された。これに基づき三次元培養系の構築にも着手した。 3. siRNA搭載PICsomeの開発:本年度は、siRNAを用いて作るPICsomeの作製(siRNAsome)と、VEGFノックダウン効果のin vitro実験系における確認がなされた。またsiRNAsome安定化に寄与するポリマーの新規開発および細胞に大量導入しうるためのsiRNAsomeの物性の検証を行った。

公開日・更新日

公開日
2013-09-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-11-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201212028Z