腹腔内視鏡に搭載可能な組織吸引MEMSデバイスを用いた低侵襲かつ安全な新規核酸送達法の難治性腎臓・心臓疾患治療への応用

文献情報

文献番号
201212027A
報告書区分
総括
研究課題名
腹腔内視鏡に搭載可能な組織吸引MEMSデバイスを用いた低侵襲かつ安全な新規核酸送達法の難治性腎臓・心臓疾患治療への応用
課題番号
H24-医療機器-若手-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
清水 一憲(京都大学大学院 薬学研究科 )
研究分担者(所属機関)
  • 川上 茂(京都大学大学院 薬学研究科)
  • 木下 秀之(京都大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は非常にシンプルで安全なDDSキャリアを用いないin vivoネイキッド核酸導入法(吸引圧法)の開発に成功した。吸引圧法とは、腹腔内視鏡に搭載可能な組織吸引MEMSデバイスを用いて低侵襲かつ安全に吸引部位特異的な核酸導入を可能とすることができる技術である。ネイキッド核酸とシンプルな医療機器を用いた簡便な方法であるため、医薬品添加物の毒性等の問題を考慮することなく、速やかな臨床応用への展開が期待される。これまでに吸引圧法により健常マウス腎臓、心臓、肝臓、脾臓へのプラスミドDNA送達による吸引部位特異的な遺伝子導入に成功してきた。本研究は研究期間を2年間とし、“核酸医薬品”と“MEMSデバイス”を利用した“革新的なDDS手法”を腎臓と心臓の難治性疾患治療へ応用することを目標とする。吸引圧法は低侵襲性や安全性に優れていることから、スムーズな臨床展開が可能であると予想され保健医療に大きく貢献すると考えられる。本年度(1年目)は、疾患治療のための吸引圧法の最適化を進める。まず吸引圧を制御するためのシステムを構築する。システムを用いることで広範囲な施設で再現性良く吸引圧法を実施できるようになることが期待される。次に、構築したシステムを用いて腎臓や心臓への吸引圧法の最適化を行う。すなわち腎臓や心臓を吸引するための最適な圧力の大きさや吸引圧の波形を調べる。得られた結果を分担者と共有し、吸引圧法による疾患治療へと展開する。
研究方法
吸引圧制御システムの構築
LabVIEW(National Instruments)で電子式真空レギュレーター ITV(SMC Corp.)を制御し、それにより真空ポンプで発生させた陰圧を制御した。吸引デバイスに印加される陰圧の大きさは圧力センサ(株式会社センシズ)を用いて実測した。圧力センサによる陰圧の測定値はLabVIEWで収集した。
吸引デバイスの製作
吸引デバイスはポリジメチルシロキサン(PDMS)製である。作製方法は以下のとおりである。まず三次元光造形装置を用いて鋳型を作製した。その鋳型にパリレンを厚み10μmでコーティングした。PDMSの主剤に硬化剤を10:1の割合で加え、鋳型に流し込んだ。減圧下で脱泡後、75度で4時間加熱し硬化させた。硬化したPDMSを鋳型から剥離し、吸引圧印加用の穴をあけた。
吸引圧法による核酸導入
麻酔下のマウスを開腹し、目的の臓器を必要最低限だけ露出させた。尾静脈から100 µgのプラスミドDNAを含む200 μlの生理食塩水を投与した。目的の臓器表面に生体組織吸引デバイスを軽く接触させた後に、吸引圧制御システムを用いて、デバイスに吸引圧を印加し、目的臓器を吸引変形させた。プラスミドDNAとしてCMVプロモーター制御下にルシフェラーゼ遺伝子をもつプラスミドDNAを用いた。臓器を吸引した6時間後にマウスを安楽死させて臓器を取り出し、臓器中のルシフェラーゼ活性を測定した。
結果と考察
まず健常マウス腎臓への吸引圧法の最適化を進めた。健常マウスとpDNA-Lucを用いて、腎臓での核酸発現量が最大となる条件を調べた。吸引圧印加条件、最小到達圧力、吸引デバイス形状、吸引回数などを検討した結果、最小到達圧力-30kPa以下で最低一回吸引するという腎臓への吸引法最適条件を見出した。またその際、血中尿素窒素濃度、血清クレアチニン濃度を測定したが、顕著な腎障害は観察されなかった。続いて病態モデルマウスとして輸尿管閉塞モデルマウス(UUOマウス)を作製した。また健常マウス心臓への吸引圧法の最適化として、吸引による新機能への障害性の有無を調べた。最小到達圧力-75kPaで最低一回吸引するという条件を健常マウス心臓に対して適用した。その後、心拍数測定や血圧測定などを行ったが、心機能に顕著な障害は観察されなかった。
結論
本研究では吸引圧法による腎臓と心臓の疾患治療法の開発を目指して研究を進めた。本年度は吸引圧制御システムを構築し、腎臓と心臓への吸引圧法の最適化を進めた。腎臓においては-30 kPaより小さい圧力で吸引する、また心臓においては-75 kPaより小さい圧力で吸引するという適正吸引圧を見出した。来年度はこれらの条件を用いた吸引圧法の疾患治療への応用を研究分担者と共に進める。

公開日・更新日

公開日
2017-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201212027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,500,000円
(2)補助金確定額
6,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,226,249円
人件費・謝金 0円
旅費 400,380円
その他 373,371円
間接経費 1,500,000円
合計 6,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
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