インフルエンザ等の呼吸器感染症に関する研究

文献情報

文献番号
199800053A
報告書区分
総括
研究課題名
インフルエンザ等の呼吸器感染症に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
木村 宏(名古屋大学小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 森島恒雄(名古屋大学保健学科)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生科学特別研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
インフルエンザ関連脳炎・脳症の有効な予防法・治療法の確立のために本症の発症のメカニズムを解析すること
研究方法
1997-1998年にウイルス学的にインフルエンザ関連脳炎・脳症と診断した小児例11例について、臨床的経過、RT-PCR法によるウイルスゲノム局在の解析、EIA法による血清・髄液中のサイトカインの測定を行い、合併症のなかったインフルエンザ小児31例と比較した。
結果と考察
1.脳炎・脳症は、ワクチン歴のない小児にインフルエンザ発病早期に主にけいれん・意識障害を主要症状として発症し、約40%に神経学的後遺症を残し、10%が死亡していた。2.臨床的には、急性壊死性脳症を呈したものが1例、ライ様症候群,hemorrhagic shock and encephalopathy(HSE)の経過をたどったものが3例であった。
3.脳炎・脳症患者中の1例の血中にインフルエンザRNAを認めた。4.1例の髄液中にウイルスRNAを認めた。5.11例中、6例の血清中に何らかの炎症性サイトカインの上昇を認めた。特にIL-6は3例に高値例が認められコントロール群との間に有意差を認めた。6.11例中、5例の髄液中に何らかの炎症性サイトカインの上昇を認めた。
本研究の目的は、インフルエンザ脳炎・脳症の発症のメカニズムを解析し同疾病の有効な予防法・治療法の確立に役立てることである。本研究により示された炎症性のサイトカインの上昇が脳炎・脳症発症の原因なのかを明らかにすることが急務である。近年、IL-6は血管の透過性を高め血液脳関門を破壊することが報告されている。ウイルス血症によりインフルエンザが血管内皮細胞に感染し、そこで産生された炎症性サイトカインが脳炎・脳症の発症に直接関与している可能性がある。本研究で得られた結果は今後本症の発症メカニズムを考える上で重要な知見となり、将来的には本症の治療法の開発・確立につながることと考えられる。
結論
インフルエンザ関連脳炎・脳症では、中枢神経系内へのウイルスの侵入、増殖は主たる病態ではなく、脳血管の透過性亢進・血管障害による脳浮腫・脳虚血が本態であると考えられる。本症の発症のメカニズムとして炎症性サイトカインの関与が示唆される。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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