医工連携人材育成プログラムの研究

文献情報

文献番号
201212026A
報告書区分
総括
研究課題名
医工連携人材育成プログラムの研究
課題番号
H24-医療機器-指定-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
竹之下 誠一(公立大学法人福島県立医科大学 先端臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小原 勝敏(公立大学法人福島県立医科大学附属病院内視鏡診療部長)
  • 小山 善久(公立大学法人福島県立医科大学 医学部器官制御外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医療機器の開発試作工程を、「医工連携OJTモデル」としてモデル化した「医工連携人材育成プログラム」を開発することである。本研究の特徴的な視座は、「医療研究seedsの産業化」の視点ではなく「医療現場のneedsを、工学的視点から製品へと展開・再構成する医療機器の製品化アプローチ(医工連携OJTモデル)」である。すなわち、医療現場のneedsを、産業界の技術seedsにより、医療機器として製品化するための手法の構築であり、この視点が、本研究の独創的な点である。具体的な試作活動として、医療現場における治療機器のneedsの一例である消化管内視鏡改良型鉗子の開発試作、及び内視鏡鉗子と関連する内視鏡洗浄システムの効率化にも寄与しうる内視鏡鉗子孔の新たな洗浄手法を評価する実験装置の試作を実施し、人材育成プログラムとして最終的に構成する。
研究方法
「医療現場needs」から「製品開発過程」を経て「安全性評価・動物実験」にまで至る開発工程を、製品企画段階から試作・安全性評価・動物実験にいたるまでの製品化プロセスとして、実際の試作事例をふまえて「ニーズ/要求実装技術/設計指針(背景技術、解決課題、実現形態)/特許事項/薬事事項」まで、医工連携OJTモデルの中核として定義・作成し、電子カリキュラムとして構築する枠組みを作成した。実際の試作事例として、「消化管内視鏡改良鉗子の方式設計・評価」と、「鉗子孔の洗浄手法の実験装置の試作」を、「製品要求(ニーズ)→利用技術(要求実装技術)→製品仕様(設計指針前段階)→製品試作(設計指針後段階)」の各段階における医工連携OJTモデルの製品試作の実施手順にもとづいて並行的に実施した。
結果と考察
洗浄実験装置の試作として、内視鏡鉗子孔内壁を(鉗子孔を貫通する)洗浄ブラシにより直接洗浄する手法の実験・評価装置の製作を完了した(①処置後の内視鏡の鉗子孔内壁をブラシにより洗浄するための極細洗浄ブラシの製作、②洗浄実験後に鉗子孔パイプを切断・開いて洗浄効果を確認するための装置、および③洗浄ブラシが鉗子孔内壁に与える影響を評価する耐性実験装置)。静脈瘤穿刺・止血鉗子は、食道静脈瘤の内視鏡的治療法である食道静脈瘤硬化療法(EIS)のデバイスの問題点を解決する「食道・胃静脈瘤処置時の止血鉗子と静脈瘤穿刺針との機能が統合された改良型鉗子」である。EIS時の「穿刺針がシースごと静脈瘤内へ入り込みやすい」、「抜針後、出血時の止血が困難な場合がある」という課題を解決する具体的なニーズ(「穿刺針がシースごと静脈瘤の深部へ入り込まない」、「穿刺孔からの出血を止血できる」、「(蠕動により瘤が大きく動く状況においても)硬化剤の注入中に針が静脈瘤から抜けない」)を実現する改良型鉗子の複数の方式設計を実施し、次年度の第1次・第2次試作の方式を決定した。
 試作工程において、医工連携OJTモデルとの比較検証を行ったが、「知識データベースを作り、知識を伝達すべき」という考え方、すなわちデータベースを効果的に設計したとしても、その効果は、情報の「伝達・共有・仲介」という人間が介在するネットワークに依存することが、本研究の育成プログラム構築の過程でも強く意識された。すなわち、「共有すべき知識」の仲介機能(組織のネットワークとコミュニティー)の構築が非常に重要である。さらに重要な事項として、実際の失敗を仮想的ではあっても体験しうるプログラムである必要がある。「共有すべき知識」の仲介機能として、具体的な失敗を通じたコミュニケーションほど有効なものはなく、こうしたチームとしての議論に耐えうるためには、製品化を前提とした実際の試作にもとづいた事例を基本とした人材育成プログラムであることが重要である。
結論
当研究により期待される成果は、医工連携の教育促進を科学的に推進するための人材育成プログラムであり、その研究過程のなかで福島県立医科大学に経験的的事例としても蓄積される「医工連携OJTモデル」による人材育成ノウハウである。この研究成果によりもたらされるメリットとして、今後の医療機器開発・事業化において重要となる医工連携分野の大学教育・社会人教育・企業教育において標準的カリキュラムとしても利用可能な育成プログラムの確立がある。またそれらは、医療従事者、および企業における技術・製品開発・市場展開の従事者の今後の教育を、大学カリキュラムおよび企業内教育と関連付けて効果的に実施していくための事例・材料を提供していくこともできる。また、あわせて試作事例の製品化・上市に向けた活動を、積極的に推進する。

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201212026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
34,000,000円
(2)補助金確定額
33,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,906,792円
人件費・謝金 9,334,449円
旅費 2,543,750円
その他 12,214,126円
間接経費 4,000,000円
合計 33,999,117円

備考

備考
自己資金117円

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-