骨髄単核球を用いた細胞治療の一般普及を目指した簡便且つ細胞調製施設が不要な幹細胞分離デバイスの開発

文献情報

文献番号

201212025A

報告書区分

総括

研究課題名

骨髄単核球を用いた細胞治療の一般普及を目指した簡便且つ細胞調製施設が不要な幹細胞分離デバイスの開発

課題番号

H24-医療機器-一般-007

研究年度

平成24(2012)年度

研究代表者(所属機関)

山原　研一(独立行政法人国立循環器病研究センター　再生医療部)

研究分担者(所属機関)

田口　明彦(財団法人先端医療振興財団先端医療センター・再生医療研究部)
妙中　義之(国立循環器病研究センター研究所（研究開発基盤センター）)
山本　晴子(国立循環器病研究センター先進医療・治験推進部)
長束　一行(国立循環器病研究センター脳神経内科)
赤川　英毅(国立循環器病研究センター知的資産部)

研究区分

厚生労働科学研究費補助金厚生科学基盤研究分野医療機器開発推進研究（医療機器［ナノテクノロジー等］総合推進研究）

研究開始年度

平成24(2012)年度

研究終了予定年度

平成26(2014)年度

研究費

30,000,000円

研究者交替、所属機関変更

-

研究報告書（概要版）

研究目的

我々は、2009年より厚生労働省ヒト幹細胞指針に基づく承認を経て、脳梗塞患者に対する自己骨髄単核球移植による臨床試験を実施している。同様の手法を用いた細胞治療は、心筋梗塞患者において有効であることが、欧米における二重盲検試験やメタアナリシスでも明らかにされているが、日本同様、セルプロセシングセンター（CPC）構築や煩雑手技の問題により、骨髄単核球移植による細胞治療は一般的な医療としては普及していないのが現状である。
　そこで本研究では、このような問題点を解消するため、安全かつ確実な、特殊な手技や知識を必要としない完全閉鎖系の単核球分離デバイスを開発し、普及させることをその目的とする。我々は、これまでに細胞治療実施のため、プロトコール作成・ヒト幹指針の承認・CPC運用管理・インフォームドコンセント取得・CPCでの細胞分離調整など、再生医療の実施に必要不可欠な非常に多くの事項を経験・実践してきた。本デバイスの作成には、これら実際の臨床試験での経験や知識を全て反映させ、国立医薬品食品衛生研究所スーパー特区対応部門や薬事承認審査経験のある分担研究者と共同で、本デバイスの速やかな医療機器承認及び一般普及を目指す。

研究方法

本年度は、単核球分離デバイス開発に向けた環境整備、試作品作成とその医療機器承認に向けた活動として下記のことを行った。
①脳梗塞患者を対象にした自己骨髄単核球移植の第1/2a相臨床試験
②単核球分離デバイス本体の周辺特許出願及び試作品作成
③医薬品ベースの単核球分離液の作成
④単核球分離デバイスの医療機器としての早期承認促進を目指した研究
⑤PMDAとの協議を踏まえた単核球分離デバイスの開発展開
⑥単核球分離デバイスの事業化に向けた研究

結果と考察

本年度は、単核球分離デバイス開発に向けた環境整備、試作品作成とその医療機器承認に向けた活動を展開した。我々が単核球分離デバイスを用いた治療目標としている脳梗塞症例において、自己骨髄単核球移植の安全性を確認し、将来のデバイスを用いた治療応用に道筋がついた。デバイス本体の開発は、共同研究企業と共に、周辺特許取得を含め精力的に行った。同時に、本デバイスの早期の医療機器承認を目指し、PMDA薬事戦略相談に諮り、各種問題点の洗い出しを行った。PMDAとの協議を早期から行ったことは、今後の本デバイス開発に非常に有用であったと考えており、PMDAとの対面助言では、(1)本デバイスの医療機器認可には臨床的有用性を示す必要性がある、(2)本デバイスのクラス分類はクラスII、(3)医薬品ベースの単核球分離液分離液を用いるには、既承認医薬品の新規適応取得をする必要がある、との指摘を受けた。そこで、これら指摘を解決可能な単核球分離デバイスを開発するため、新たな発想に基づくデバイス作成を考案した。結果、新規特許を出願すると共に、新たな企業パートナーと共同研究契約を結び、来年度以降の本研究にその新しい内容を反映させていくことにしている。

結論

本年度の活動により、特にPMDA側との協議により、単核球分離デバイス開発の方向性がより明確となった。本研究にて開発された単核球分離デバイスを用いることで、①全国の全ての地域で、②全ての心筋梗塞患者および脳梗塞患者を対象に、③安全な最先端医療を、④低コストで、提供することが可能になると考えており、今後、分担研究者と共に精力的にデバイス開発を行っていきたい。