難治性腸疾患等に対する安全かつ有効な非侵襲性経口ナノDDSの開発

文献情報

文献番号
201212019A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性腸疾患等に対する安全かつ有効な非侵襲性経口ナノDDSの開発
課題番号
H24-医療機器-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
堤 康央(大阪大学 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 巧(大阪大学大学院工学研究科)
  • 青島 央江(ビタミンC60バイオリサーチ株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超微細加工技術を活用した疾患の予防・治療戦略/技術の確立は、知財技術立国・健康立国を目指す我が国の最重要課題であり、特に原因不明で、根本的な治療法が確立されていない難治性疾患への応用はライフ/医療イノベーション5ヶ年戦略の観点からも期待されている。炭素原子60個が切頂二十面体構造に結合したC60フラーレン(直径1 nm)は、従来薬とは全く異なった作用点での抗ウイルス活性や抗菌活性、さらには圧倒的な抗炎症活性(抗酸化活性;活性酸素・ラジカル消去活性)を有するなど、エイズや肝炎、がん、炎症性疾患に対する画期的ナノ医薬として期待されている。しかし、主薬としてのC60フラーレンを実用化するには、分散性・吸収性の改善や標的指向性の付与、さらには薬効メカニズムの解明といった多くの克服課題が残されている。そこで本研究では、医用工学的にC60フラーレンの腸内放出型プロドラック化や糖・アミノ酸修飾など、腸管デリバリーの最適化に叶う「ナノ薬物送達システム(ナノDDS)」を新規開発し、これを炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)を標的とした、非侵襲的(経口投与)で、しかも安全かつ有効な予防・治療戦略/技術の確立へと展開する。
研究方法
当初計画通り、1)各種官能基で修飾したC60フラーレン誘導体の創製、2)C60フラーレン誘導体の有効性・安全性評価の推進を目指した。また、3)C60フラーレン誘導体の異性体の解析といった物性・品質保証に関する評価、4)吸収性、分布、代謝、蓄積・排泄といった体内動態(ADME)の評価、5)抗炎症メカニズムの解明についても、次年度計画を前倒して取り組んだ。
結果と考察
平成24年度は、1)C60フラーレンの有用機能を損なうことなく分散性を改善できる4種類の水酸化フラーレン誘導体に加え、異性体が存在しない、もしくは分離可能であり、抗酸化・抗炎症活性を向上可能な7種類の官能基修飾誘導体(メチルマロン酸修飾体やプロリン修飾体など)の創製にも成功し、2)粒子径・凝集性といった物性を精査したうえで、抗酸化・抗炎症活性をin vitroで評価した。その結果、4種類の水酸化C60フラーレン誘導体に関して、修飾水酸基数の違いにより、分散性や抗酸化・抗炎症活性が異なることを見出し、特に、水酸基が36個付与された水酸化C60フラーレン誘導体(C60OH36)が、分散性や抗酸化・抗炎症活性に優れることを明らかとした。さらに、我々の検討で、これまで最も強い抗炎症活性を有していたC60OH36よりも、20倍以上も強い抗炎症活性を有するプロリン修飾C60フラーレン誘導体を見出した。また4)C60フラーレン誘導体の経口投与・静脈内投与における一般毒性試験を実施すると共に、遺伝毒性といった特殊毒性試験も実施し、各種C60フラーレン誘導体が、治療効果を発揮し得る投与量・作用量において、安全性も担保されていることを明らかとした。さらに、研究計画を前倒しして、4)水溶性や大腸送達性を改善可能なグルコース修飾C60フラーレン誘導体の創製に加え、5)体内動態評価を可能にするリチウム内包C60フラーレン誘導体・RI標識C60フラーレンの創製にも成功すると共に、体内動態評価に資するLC-MSによる定量解析系をも構築した。また6)C60フラーレンの抗炎症活性について、抗酸化活性以外のメカニズムも関与する可能性を明らかとした。さらに、臨床研究に向けて、7)GMPグレードのC60フラーレン誘導体の合成を進めつつある。
結論
本年度は、C60フラーレンを最適粒子設計することで、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)を標的とした、非侵襲的(経口投与)で、しかも安全かつ有効な予防・治療戦略/技術を創成可能であることを見出した。

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201212019Z