特異性・汎用性に優れた動脈硬化不安定プラーク分子イメージング剤の開発

文献情報

文献番号
201212017A
報告書区分
総括
研究課題名
特異性・汎用性に優れた動脈硬化不安定プラーク分子イメージング剤の開発
課題番号
H23-医療機器-若手-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小川 美香子(浜松医科大学 メディカルフォトニクス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 梅田泉(国立がんセンター東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
動脈硬化病変に生じる不安定プラークは、破綻し血管を閉塞させ脳梗塞・心筋梗塞などを引き起こすため、早期に検出し治療を行うことが重要であるが、従来の形態画像診断では不安定性の評価は困難であった。そこで本研究では、簡便で特異的なスクリーニングから詳細な病態評価までを可能とする、包括的な不安定プラーク検出法の確立を目指す。このために、分子イメージング剤として、不安定プラークを標的する部位・放射性標識部位・環境反応性光標識部位・MRIのための金属標識部位を導入した、ナノ粒子(機能性リポソーム)を開発する。
研究方法
平成23年度までに定量評価のための放射性標識、特異的イメージングのための蛍光標識機能性リポソームを開発した。そこで、平成24年度は、より詳細な病変の評価を目指し、分解能にすぐれたMRイメージングのためのGd標識機能性リポソームの作成をおこなった。このために、臨床にて広く使われているMRイメージング剤、Gd-DTPA(マグネビスト)を高濃度にてリポソーム内に内包した。得られたリポソームは、培養マクロファージ、動脈硬化モデル動物(WHHLウサギ)を用い、インビトロ、インビボの両面から評価を行った。
結果と考察
MRIは核医学イメージングや光イメージングに比較し感度が劣るため、高濃度の造影剤を内包する必要がある。今回我々は、Gd-DTPAを高濃度にて内包することに成功した。さらに、このリポソームは、細胞内でリポソーム膜が破壊されたのちにシグナルを出すアクチベータブルプローブであることが示された。これは、病変の特異的検出に有効である。つぎに、培養マクロファージへの取り込みをインビトロで検討した。この結果、PS(ホスファチジルセリン)修飾リポソームはマクロファージへ取り込まれシグナルを出すことが確認できた。さらに、動脈硬化モデル動物であるWHHLウサギに投与し、MRイメージングをおこなったところ、動脈硬化不安定プラークを描出することに成功した。
結論
以上により、昨年度の結果をもとに、MRIにて、詳細な病変検出を可能にする、イメージングプローブを作成することに成功した。さらにこれは、アクチベータブルプローブであることが確認され、高い特異性を持ったイメージングが可能であると示唆された。

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201212017B
報告書区分
総合
研究課題名
特異性・汎用性に優れた動脈硬化不安定プラーク分子イメージング剤の開発
課題番号
H23-医療機器-若手-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小川 美香子(浜松医科大学 メディカルフォトニクス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 梅田 泉(国立がんセンター東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、脳梗塞・心筋梗塞を発症する前に、危険性の高い動脈硬化病変を発見する方法を開発するものである。
動脈硬化病変に生じるプラークには、安定なものと不安定なものがある。不安定プラークは、破綻し血管を閉塞させ脳梗塞・心筋梗塞などを引き起こすため、早期に検出し治療を行うことが重要である。そこで本研究では、簡便で特異的なスクリーニングから詳細な病態評価までを可能とする、包括的な不安定プラーク検出法の確立を目指した。
研究方法
このために、分子イメージング剤として、不安定プラークを標的する部位・放射性標識部位・環境反応性光標識部位・MRIのための金属標識部位を導入した、ナノ粒子(機能性リポソーム)の開発を行った。作成したリポソームは、培養マクロファージ、動脈硬化モデル動物を用い、インビトロ、インビボの両面から、不安定プラークイメージングの可能性についての評価を行った。
結果と考察
放射性標識においてアクティブローディング法を用いることにより、効率よくPSにより修飾した111In標識リポソームを作成することに成功した。次に、リポソームをPS修飾することにより、マクロファージへのターゲティングが可能となった。また、111In標識リポソームを用いて動脈硬化モデル動物にて、不安定プラークを画像化することに成功し、PSリポソームがインビボにおいても不安定プラークイメージング剤として機能することが示された。また、簡便なイメージングを目指し、近赤外蛍光物質であるICGを高濃度にて封入したアクチベータブルプローブを作成することにも成功し、蛍光イメージング剤としての有効性も示唆された。さらに、詳細な病変検討のためのMRI造影剤であるGd-リポソームは、リポソーム膜が壊れ内包Gd-DTPAが放出された後に初めてMRI信号を放出する『アクチベータブルプローブ』であり、また、マクロファージへの標的性についても確認された。また、インビボにてWHHLウサギを用い、動脈硬化病変を画像化することに成功した。
結論
本研究にて開発した、簡便で特異的な光イメージングにてリスク患者を拾い上げ、核医学イメージングにより定量評価・深部探索をし、さらに、発見された病変部を高分解能のMRIにて詳細に評価するシステムを用いることにより、効率的、効果的な不安定プラークの検出が可能になると考える。

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201212017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
動脈硬化病変に生じるプラークには、安定なものと不安定なものがある。不安定プラークは、破綻し血管を閉塞させ脳梗塞・心筋梗塞などを引き起こすため、早期に検出し治療を行うことが重要である。このために、分子イメージング剤として、不安定プラークを標的する部位・放射性標識部位・環境反応性光標識部位・MRIのための金属標識部位を導入した、ナノ粒子(機能性リポソーム)を開発した。この結果、プラークの不安定性を指標にした定量評価、特異的な検出と、詳細な病変検討を可能にするイメージングが可能となった。
臨床的観点からの成果
本研究では、脳梗塞・心筋梗塞を発症する前に、危険性の高い動脈硬化病変を発見する方法の開発を行った。また、本イメージング剤により、新規薬剤の治療効果を経時的にモニタリングすることで、プラーク安定化作用を指標とした創薬への貢献も期待できる。さらに、このような組織選択性の高いプローブが開発されれば、将来、治療薬を内包したDDSシステムとして利用し、診断と同時に治療を可能とする分子標的薬への展開も期待される。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ogawa M., Umeda I.O., Kosugi M et al.
Development of 111In-Labeled Liposomes for Vulnerable Atherosclerotic Plaque Imaging.
J Nucl Med , 55 (1) , 115-120  (2014)
原著論文2
Ogawa M., Uchino R., Kawai A et al.
PEG modification on 111In-labeled phosphatidyl serine liposomes for imaging of atherosclerotic plaques.
Nucl Med Biol , 42 (3) , 299-304  (2015)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2015-06-16

収支報告書

文献番号
201212017Z