脳内留置型微細内視鏡の開発と前臨床試験研究

文献情報

文献番号
201212014A
報告書区分
総括
研究課題名
脳内留置型微細内視鏡の開発と前臨床試験研究
課題番号
H23-医療機器-指定-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 憲治(岩手医科大学 医歯薬総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学 医学部 脳神経外科学)
  • 人見 次郎(岩手医科大学 医学部 解剖学)
  • 佐藤 洋一(岩手医科大学 医学部 解剖学)
  • 平 英一(岩手医科大学 医学部 薬理学)
  • 弘瀬 雅教(岩手医科大学 薬学部 分子細胞薬理学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、岩手医科大学とリコー光学株式会社による脳内留置型微細内視鏡の共同開発と前臨床試験研究であり、臨床応用へ橋渡しをすることにある。脳内留置型微細内視鏡の径は従来の内視鏡イメージを革新する細さで、急性脳血管障害や脳外傷の開頭手術時に脳内留置し、術後の脳血管攣縮をモニターするものである。従って内視鏡自体を脳内に挿入する為の侵襲を必要とせず、留置した患者への負担も少なく、不要となれば抜去が容易であるのが大きな特色である。これまでに類似の製品は報告がなく、従来の内視鏡イメージを革新する使途を目指す。日本国内において、脳外科領域で対象となる脳血管動態の観察を必要とする症例は、年間20,000例にも及ぶ。
研究方法
微細ファイバーを束ねて高精細画像の取得を可能としながら、外径3 mm径以下の細く柔軟な形状の微細内視鏡を開発する。微細ファイバーは細く柔軟な機器形状のため、狭く限定された頭蓋内脳周辺部においても圧迫負荷を与えることがなく、また照明光もファイバーによって引き込み、光源から発する熱の影響も排する形状とする。今年度は蛍光色素を用いた観察を可能とする機能の追加を始め、イメージファイバーの解像度の向上および照明ファイバーの改良を中心とした開発を行った。
材質・仕様の異なるイメージファイバーの撮像性能比較を実施した。照明も白色LED光源からファイバーによって被写部まで引き込むことによって光源による熱や電磁波の影響を避ける構造とした。微細な照明用ファイバーの先端部にはレンズおよびフィルターを組み込む、被写部への均一な照明を開発した。
さらに、脳血管・血流動態を鋭敏かつ選択的に可視化するため、蛍光色素の導入について検討した。脳外科領域での血管可視化に用いられる蛍光色素インドシアニングリーン(ICG)を選定し、ICG励起に必要な近赤外光光源および検出用高感度EM-CCDセンサーを搭載した。
微細内視鏡の脳内留置に関する安全性を確認するため、機器の材質や形状、表面処理および撮像条件などについて検討を行った。
結果と考察
微細内視鏡試作機では、撮像性能の改良に向けて径10 μmの素線を7,500本束ねた径1 mmのプラスチックファイバーあるいは径4 μmの素線を10,000本束ねた径0.5 mmのグラスファイバーを搭載し、それぞれの機能について比較検討を行った。グラスファイバーを用いた方が近接の解像度が高いが被写部が狭く、プラスチックファイバーを用いた方が視野が広く明るい撮像が可能であった。蛍光検出に関しても検出感度に関してプラスチックファイバーで良好な結果を得た。また、照明ファイバー先端部に照明光を分散させる仕様とすることにより被写部に均一な照明を可能とした。また近赤外波長による励起光によりICG蛍光の検出が可能となった。
これらの検出系を用い、可視光およびICG蛍光によってラット脳における微細な脳血管まで精細かつ選択的に可視化することができた。今後の微細内視鏡の脳内留置試験は、脳溝の乏しく構造の小さいラットでは困難であるため、シルビウス裂の存在を始めヒトにより近い構造を持つイヌを用いた脳血管攣縮モデルなどを用いて実施する予定である。
さらに微細内視鏡の素材への細胞付着性、ICG色素の安全性および蛍光観察における細胞・組織の障害性について検証を行った。また、内視鏡先端部をディスポーザブルとし、留置時の安全のための光学ジョイントを持たせて着脱可能とするなど構造的、衛生面における安全性についての開発も行った。
本研究に関しての薬事承認のためのプロセス、必要とされる安全性試験についてはPMDAに相談を行っている。その過程で上がった課題も含めイヌを動物モデルとして今後さらに機能性・安全性試験を実施していく。
結論
脳内留置型微細内視鏡はこれまで困難であった脳外科手術閉頭後の頭蓋内環境を正確にモニターし、より迅速かつ的確な処置を可能とする画期的なアプローチとなり得る。本年度は前年度に完成させたプロトタイプを基盤として、基本的撮像機能の改良・改善および蛍光撮像機能を始めとする新たな機能の追加によって、動物モデルを用いたより高度な前臨床試験を実施することが可能となった。優れた医療機器としての完成を目指し、今後、さらなる機能の洗練と安全性の確認を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201212014Z