自動追尾・照準捕捉を可能とする超高精度“HIFU超音波銃”の開発による、低侵襲・低コストの腫瘍性病変治療(子宮内胎児から小児・成人まで)

文献情報

文献番号
201212001A
報告書区分
総括
研究課題名
自動追尾・照準捕捉を可能とする超高精度“HIFU超音波銃”の開発による、低侵襲・低コストの腫瘍性病変治療(子宮内胎児から小児・成人まで)
課題番号
H22-低侵襲-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 敏雄(独立行政法人国立成育医療研究センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 北角 権太郎(独立行政法人国立成育医療研究センター 臨床研究センター )
  • 木原 泰三(日立アロカメディカル株式会社 東京事業所)
  • 土肥 健純(東京電機大学 工学部機械工学科)
  • 正宗 賢(東京大学大学院 情報理工学系研究科)
  • 梅村 晋一郎(東北大学 医工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
47,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,“HIFU超音波銃”,すなわち,画期的な集束超音波(High-Intensity Focused Ultrasound)の画像誘導・照射治療装置を統合したシステムの開発を目指す.本技術は,生体内の深在血管(腫瘍組織への栄養血行あるいは生体組織・臓器に障害をきたしうる異常血行等)を非接触性に,体表からの短時間・深部HIFU照射にて超高精度に凝固閉塞・遮断するものである.HIFUは患部周辺の組織を傷つけることなく,目標部分のみを焼灼・凝固する技術として注目されているが,呼吸や拍動,脈動により対象が動いてしまう場合は,その焦点位置を正確に制御し,安全に治療を行うことは難しい.そこで手がかりとして用いる超音波診断データ上から対象の位置を捕捉し追尾させることで,HIFU照射の焦点が常に治療個所に合うように制御をおこなう.本研究で用いるHIFUのプローブは,アレイ状の振動子を球面上に配置したものであり,駆動回路の制御によって焦点を結ぶ位置を変えことができるが,これに加えてさらにプローブの位置と姿勢を機械的に,高速・高精度に動かすことで,より幅広い対象の動きにも対応できるようなシステムの構築を進める.
研究方法
本システムは,①128ch電子アレイ型のトランスデューサ,②3Dエコーデータ高速転送(3D音波診断装置から患部周辺の3Dボリュームデータを高速・確実に照射位置追尾用のワークステーションへと送るアルゴリズム・プロトコルの作成),③HIFU照射の制御装置(FPGAによる専用基板・電源装置),④照射位置追尾用ソフトウェア(受け取ったボリュームデータから患部(HIFU照射により焼灼すべき血管)の位置を特定し,リアルタイムに追尾するソフトウェア),⑤ロボットアーム(焦点位置の粗調整用)の5つの基盤技術で構成している.H24年度は特に,トランスデューサと超音波プローブを同軸状に組合せ,臨床でも使える形として,水袋を装着可能な保持装置の試作を行なった.また,3D超音波データから取得した複数のスライスデータを用いて,リアルタイムでターゲットを追尾する機能を実装した.ターゲットの移動に合わせてトランスデューサを動かすための位置決め装置については,各自由度の最適設計に基づき試作を行った.動物実験としては,妊娠ウサギを用いて,子宮内深部の胎仔の血流に対してHIFU照射を行い,血管の閉塞性能およびHIFU照射条件の検討を進め,システムとしての評価を行った.
結果と考察
ハードウェアについては,トランスデューサと超音波プローブ,水袋の組合せが可能になったことで,臨床でも使用できるような環境が整いつつある.HIFU駆動装置についても,より高効率なHIFU照射を可能とするTrigger PulseとHeating Wavesの組合せの照射シーケンスを実現するための新しい駆動装置を作成し,より安全性の高いHIFU治療を行なえる準備が整った.トランスデューサ位置決め装置については,3D超音波データを取得しながら,動的なオブジェクトに対する位置決め精度評価を進める必要がある.ソフトウェアについては,子宮内胎児の3D超音波データを用いて,ターゲットに指定した部位の3D motion tracking の精度評価を進める必要がある.また,容易にHIFU治療を操作できるようなユーザインタフェースに改良するため,複数の医師のヒアリングを実施する必要がある.HIFU照射シーケンスについては,物理的な焦点位置の手前に加熱効果が表れやすいことから,Trigger PulseとHeating Wavesの組合せによりターゲット以外に与える影響を最小限に抑える条件の抽出が必要である.以上の個々の要素技術の評価検証を進めることで,システム全体のみならず,部分的にでも,臨床で使用可能なレベルにまで完成度の向上を目指していく.
結論
最終年度であるH24年度は,前年度までの評価実験で明らかになった課題を解決すべく,構成要素技術ごとの改良を行なった.特に妊娠ウサギを用いた実験では,仙尾部奇形腫部の栄養血管を想定し,子宮内胎仔の臍帯付着部へのHIFU照射を行なった.今後は,より安全に,焦点部分のみを焼灼するためのHIFU照射シーケンスの確立を進め,システム全体のみならず,部分的にでも,臨床で使用可能なレベルにまで完成度の向上を目指す.

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201212001B
報告書区分
総合
研究課題名
自動追尾・照準捕捉を可能とする超高精度“HIFU超音波銃”の開発による、低侵襲・低コストの腫瘍性病変治療(子宮内胎児から小児・成人まで)
課題番号
H22-低侵襲-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 敏雄(独立行政法人国立成育医療研究センター 臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 北角 権太郎(独立行政法人国立成育医療研究センター 臨床研究センター )
  • 木原 泰三(日立アロカメディカル株式会社 東京事業所)
  • 土肥 健純(東京電機大学 工学部機械工学科)
  • 正宗 賢(東京大学大学院 情報理工学系研究科)
  • 梅村 晋一郎(東北大学 医工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,“HIFU超音波銃”,すなわち,画期的な集束超音波(High-Intensity Focused Ultrasound)の画像誘導・照射治療装置を統合したシステムの開発を目指す.本技術は,生体内の深在血管(腫瘍組織への栄養血行あるいは生体組織・臓器に障害をきたしうる異常血行等)を非接触性に,体表からの短時間・深部HIFU照射にて超高精度に凝固閉塞・遮断するものである.HIFUは患部周辺の組織を傷つけることなく,目標部分のみを焼灼・凝固する技術として注目されているが,呼吸や拍動,脈動により対象が動いてしまう場合は,その焦点位置を正確に制御し,安全に治療を行うことは難しい.そこで手がかりとして用いる超音波診断データ上から対象の位置を捕捉し追尾させることで,HIFU照射の焦点が常に治療個所に合うように制御をおこなう.本研究で用いるHIFUのプローブは,アレイ状の振動子を球面上に配置したものであり,駆動回路の制御によって焦点を結ぶ位置を変えことができるが,これに加えてさらにプローブの位置と姿勢を機械的に,高速・高精度に動かすことで,より幅広い対象の動きにも対応できるようなシステムの構築を進める.
研究方法
本システムは,①128ch電子アレイ型のトランスデューサ,②3Dエコーデータ高速転送(3D音波診断装置から患部周辺の3Dボリュームデータを高速・確実に照射位置追尾用のワークステーションへと送るアルゴリズム・プロトコルの作成),③HIFU照射の制御装置(FPGAによる専用基板・電源装置),④照射位置追尾用ソフトウェア(受け取ったボリュームデータから患部(HIFU照射により焼灼すべき血管)の位置を特定し,リアルタイムに追尾するソフトウェア),⑤ロボットアーム(焦点位置の粗調整用)の5つの基盤技術で構成する.
結果と考察
本研究課題では,生体内の深在血管(腫瘍組織への栄養血行あるいは生体組織・臓器に障害をきたしうる異常血行等)を非接触性に,体表からの短時間・深部HIFU照射にて超高精度に凝固閉塞・遮断するためのHIFU照射システムの開発を行い,構成するハードウェア及びソフトウェアの基盤技術の完成度を高めつつ,一つのシステム化を進めた.ハードウェアについては,トランスデューサ,超音波プローブおよび水袋の保持装置,HIFU駆動装置の完成度が高まったことから,固定式のロボットアームに搭載しての照射においては,現在の構成でも高い精度でのHIFU照射が可能と考えられる,トランスデューサの位置決め装置については,水袋を取り付け,患者の体表に押し付けた状態での位置決め精度およびターゲットの動きに対する追従性の評価を進める必要がある.HIFU駆動装置においては,HIFU照射パラメータについては,Trigger PulseとHeating Wavesを利用した照射シーケンスにより,効率のよい組織凝固を行なえることがわかってきた.今後様々な対象に対してex vivo実験およびin vivo実験を重ねることで,ターゲット以外の部位への熱的影響を最小限に抑えた照射シーケンスを導出できると考えられる.主に超音波画像転送と超音波画像解析に関するソフトウェアについては,現行の超音波診断装置における最小の遅延時間(1ボリュームの取得にかかる時間),最高のフレームレート(約10ボリューム/秒)での,外部のPCへのリアルタイム転送が可能となった.また,超音波ボリュームデータを受け取りながら,9面の2Dスライスデータへのデータ変換とそれぞれのスライスにおけるターゲット同定のための画像解析をリアルタイムで行うことが可能となった.本研究期間内では,動物をターゲットとした実験にとどまったため,今後はヒトの子宮内胎児に対して,3D超音波データを取得しながら,ターゲットに見立てた様々な部位を追尾可能かどうかの検証を重ねていく必要がある.
結論
本研究課題では,非接触性に,体表からの短時間・深部HIFU照射にて,超高精度に体内のターゲットとなる部位を凝固し,治療を行なうためのHIFU照射システムの開発を進めた.システムを構成するハードウェア及びソフトウェアの基盤技術の完成度を高めつつ,一つのシステム化を進めた.残る課題としては,ヒトの体表にトランスデューサを押し当てた場合の位置決め装置の動作精度検証と,ターゲット以外の部位への熱的影響を最小限に抑えた照射シーケンスの導出,およびヒトの子宮内胎仔に対して,3D超音波データを取得しながら,ターゲットの追尾可能かどうかの検証を重ねることが挙げられる.個々の要素技術とそれぞれの組合せに対してさらなる検証を行うことで,システム全体のみならず,部分的にでも,臨床で使用可能なレベルにまで完成度の向上を目指していく.

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201212001C

収支報告書

文献番号
201212001Z