キャンディン系抗真菌化合物の生合成経路を利用した新規抗真菌化合物の創出のための基盤的研究

文献情報

文献番号
201210010A
報告書区分
総括
研究課題名
キャンディン系抗真菌化合物の生合成経路を利用した新規抗真菌化合物の創出のための基盤的研究
課題番号
H22-政策創薬-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
星野 泰隆(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬マッチング研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 深在性真菌症は、診断、治療、予防が困難であり、さらに免疫力の低下した患者の増加などにより、問題となっている。また、治療に関しては、アゾール剤、アンホテリシンBリポソーム製剤、キャンディン系抗真菌薬等が主に利用されているが、アスペルギルス症の増加、アゾール剤への感受性の低下や耐性化などの問題点があり、既存の薬剤での効果は、十分に満足できるものではない。このような状況から、新たな抗真菌薬の臨床導入が待たれている。そこで我々は、キャンディン系化合物の生合成機構を解明し、生合成経路の改変による新たなキャンディン系抗真菌化合物の創製を目指すことを目的としている。
研究方法
 キャンディン系抗真菌化合物アクレアシンを生産するアスペルギルス アクレアタスのゲノム情報から、アクレアシンの生合成経路を明らかにするために、生合成に関与すると予想される遺伝子の破壊を用いて生合成経路の解析を行った。また、これまでの成果によって生合成に関わる遺伝子を特定したことから、生合成経路を改変による新たな化合物の生産を試みた。
結果と考察
 1、2年目の成果によって予想された遺伝子に関して、母骨格に取り込まれるアミノ酸の修飾を行う酵素(酸化酵素)をコードする遺伝子の破壊を行った。破壊株のアクレアシンの生産性をLC-MSにより確認したところ、生産は確認されなかった。相補株では、アクレアシンの生産性が回復することが明らかになった。したがって、破壊を行った遺伝子は、アクレアシンの生合成に関与していることが明らかになった。また、生合成経路の改変による新たな化合物の生産に関しては、生合成経路の改変に関しては、生合成に関与する遺伝子の破壊株を用いて、生産を行った。結果、アクレアシンと比較して、分子量16小さい化合物の生産を確認した。このころから、生合成経路の改変によりキャンディン系の新しい化合物の生産が可能であることを示すことができた。
結論
 本研究において我々は、アクレアシンの生合成に関与するいくつかの遺伝子を見出すことができた。また、生合成遺伝子の改変によって、新たなキャンディン系化合物の生産が可能であることを示すことができた。今後、生合成経路の改変による新規キャンディン系化合物の生産の、創薬への応用の可能性を示すことができたといえる。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-11-18
更新日
-

文献情報

文献番号
201210010B
報告書区分
総合
研究課題名
キャンディン系抗真菌化合物の生合成経路を利用した新規抗真菌化合物の創出のための基盤的研究
課題番号
H22-政策創薬-一般-014
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
星野 泰隆(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬マッチング研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
深在性真菌症は、診断、治療、予防が困難であり、さらに免疫力の低下した患者の増加などにより、問題となっている。また、治療に関しては、アゾール剤、アンホテリシンBリポソーム製剤、キャンディン系抗真菌薬等が主に利用されているが、アスペルギルス症の増加、アゾール剤への感受性の低下や耐性化などの問題点があり、既存の薬剤での効果は、十分に満足できるものではない。また、新たな抗真菌薬の臨床導入が待たれている。
そこで我々は、キャンディン系化合物の生合成機構を解明し、生合成経路の改変による新たなキャンディン系抗真菌化合物の創製を目指すことを目的とした。キャンディン系化合物の生合成機構を解明し、生合成経路の改変による新たなキャンディン系抗真菌化合物の創製を目指した。実際にキャンディン系抗真菌化合物であるアクレアシンの生産株であるアスペルギルス アクレアタスを使用し、ゲノムスキャニングの手法と次世代シークエンサーを用いたゲノム解析によって行い、アクレアシンの生合成経路にかかわる遺伝子の推定を行う。その結果を踏まえて、アクレアシン生合成経路を解明し、その応用として生合成経路の改変による新規キャンディン系抗真菌化合物の取得を目的とし本研究を進めた。
研究方法
キャンディン系抗真菌活性物質アクレアシンを生産するとことが報告されているA. aculeatusのゲノム情報から、アクレアシンの生合成遺伝子の情報を得るためにゲノム解析を行った。ゲノムシークエンスは、迅速かつ大量の配列が得られる次世代シークエンサーを利用して行った。得られた配列情報は、バイオインフォマティクス的手法を用いて解析を行った。また、配列情報から得られた各酵素の機能ドメイン解析により、アクレアシン生合成遺伝子を推定した。生合成経路に関わると推定した遺伝子に関しては、遺伝子破壊を用いて解析した。得られた生合成の情報から、生合成経路の改変を行い、新たな化合物の生産を試みた。また、本研究を進めるために、本菌株での遺伝子操作系の開発も行った。
結果と考察
バイオインフォマティクス的手法を用いて、得られたゲノム情報からアクレアシンの生合成経路に関わる候補遺伝子を予想することができた。得られた情報から各候補遺伝子(非リボソームペプチド生合成酵素および酸化酵素等をコードする遺伝子)の解析を遺伝子破壊株を用いて解析した。それらの破壊株のアクレアシンの生産性をLC-MSにより確認したところ、生産は確認されなかった。相補株では、アクレアシンの生産性が回復した。 したがって、破壊を行った遺伝子は、アクレアシンの生合成に関与していることが明らかになった。また、生合成経路の改変による新たな化合物の生産に関しては、生合成経路の改変に関しては、生合成に関与する遺伝子の破壊株を用いて、生産を行った。結果、アクレアシンと比較して、分子量16小さい化合物の生産を確認した。このころから、生合成経路の改変によりキャンディン系の新しい化合物の生産が可能であることを示すことができた。
結論
カビの二次代謝産物の生合成の情報は、放線菌などのバクテリアと比較すると、非常に少ないのが現状である。本研究において我々は、新しい解析手法であるゲノムスキャニングを利用することにより、アクレアシンの生合成遺伝子を迅速に特定することができた。さらに、バイオインフォマティクスを利用した詳細な解析によって、生合成遺伝子を以外のいくつかの遺伝子を見出すことができた。この情報を用いて、人為的に生合成経路の改変を行うことにより、野生株の生産していない新たなキャンディン系化合物の生産を行うことができた。さらに、生産菌の薬剤耐性の解析や、生合成遺伝子の改変に必要である遺伝子操作系の開発も行った。今後、本研究の成果により新しいキャンディン系抗真菌化合物のさらなる開発に貢献できるといえる。

公開日・更新日

公開日
2013-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-11-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201210010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
カビの二次代謝産物の生合成の情報は、放線菌などと比較すると非常に少ないことから、本研究の成果は今後の研究面で有用に利用されるであろう。抗生物質の生産菌である放線菌では、人為的生合成経路の改変による新規物質の創出の事例が見受けられるが、真核生物ではほとんど報告がない。したがって、この分野における創薬研究の進展に寄与するといえる。
臨床的観点からの成果
深在性真菌症に多くの問題点としてあげられる、アスペルギルス属による真菌症の増加、アゾール薬に低感受性・耐性を示すカンジダ属菌の分離率の変化やガッティ型クリプトコックス症などを克服するためキャンディン系抗真菌化合物の創薬の観点から少なからず本成果は寄与することであろう。
ガイドライン等の開発
現在までに、審議会等で参考にされていない。
その他行政的観点からの成果
現在までに行政施策に反映されてはいない。
その他のインパクト
深在性真菌症の治療において多くの問題点があることから、新規の薬剤が求められている。このことから、日本医真菌学会の総会において、”抗真菌薬:その現状”というシンポジウム内で”抗真菌薬の創薬”に関して講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201210010Z