文献情報
文献番号
201210005A
報告書区分
総括
研究課題名
新規な機序による抗HIV薬剤の開発研究
課題番号
H22-政策創薬-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
杉浦 亙(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター、感染・免疫研究部)
研究分担者(所属機関)
- 野村 伸彦(富山化学工業株式会社綜合研究所第三研究部)
- 田中 晴雄(いわき明星大学薬学部薬学科)
- 明里 宏文(京都大学霊長類研究所人類進化モデル研究センター)
- 岩谷 靖雅(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター、感染・免疫研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬マッチング研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在多くの抗HIV薬剤が使用され優れた治療効果を挙げているが、既存の薬剤だけでは治療に難渋する薬剤耐性症例が少なからず存在する。このため既存の抗HIV薬剤と交差耐性を呈さない新規薬剤の需要は高い。更に予防ワクチンが実現しない現状を踏まえた新たな潮流として、抗HIV薬剤をmicrobicideとして使用することが検討され始めており、そのための薬剤開発も活発に行われている。本研究班では既存の抗HIV薬剤と交差耐性を示さない新規な抗HIV薬剤の開発を目指す。
研究方法
以下の研究を進める。
(1) 低分子抗HIV薬剤実用化研究:本研究で実用化に取り組むT-Y化合物はIC50値が10nM以下でのHIVの複製を阻害する強力な抗HIV活性を呈する有望な化合物であり、今までの作用機序の解析から初期転写 (Pre-initiation Complex for Transcription (PICT))の阻害をすると推測されており、既存の逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤と交差耐性を示さない。本年度は、T-Y化合物の抗HIV活性の増強および毒性の軽減を目的に類縁化合物の探索を行うとともに、T-Y化合物の作用機序を解明するために詳細な解析を行う。また小動物における長期投与毒性評価、霊長類における薬物代謝の分析を行う。
(2)アクチノヒビン(AH)実用化研究:AHの投与経路の検討とそれに対応したAH化合物の最適化に取り組む。霊長類を用いた感染予防効果の検討を行う。AHに関しては投与経路の検討とそれに対応した化合物の最適化が課題である。AHのmicrobicideとしての可能性については、カニクイザルを用いたSIV経直腸感染系を用いてAH二量体(AH dimer/RTB-L)の有効性を評価する。
(3)霊長類評価研究:AHの感染予防効果の評価を、昨年度構築したカニクイザルの経直腸SHIV感染モデルを用いて行う。1%ヒドロキシエチルセルロース(HEC)のみのプラセボ群(3頭)と1%HEC+1%AH投与を行ったAH群(3頭)それぞれにSHI-KS661を2000TCID50の攻撃接種を行い、その後26週まで血中SHIV量とCD4+細胞数の推移を観察する。
(1) 低分子抗HIV薬剤実用化研究:本研究で実用化に取り組むT-Y化合物はIC50値が10nM以下でのHIVの複製を阻害する強力な抗HIV活性を呈する有望な化合物であり、今までの作用機序の解析から初期転写 (Pre-initiation Complex for Transcription (PICT))の阻害をすると推測されており、既存の逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤と交差耐性を示さない。本年度は、T-Y化合物の抗HIV活性の増強および毒性の軽減を目的に類縁化合物の探索を行うとともに、T-Y化合物の作用機序を解明するために詳細な解析を行う。また小動物における長期投与毒性評価、霊長類における薬物代謝の分析を行う。
(2)アクチノヒビン(AH)実用化研究:AHの投与経路の検討とそれに対応したAH化合物の最適化に取り組む。霊長類を用いた感染予防効果の検討を行う。AHに関しては投与経路の検討とそれに対応した化合物の最適化が課題である。AHのmicrobicideとしての可能性については、カニクイザルを用いたSIV経直腸感染系を用いてAH二量体(AH dimer/RTB-L)の有効性を評価する。
(3)霊長類評価研究:AHの感染予防効果の評価を、昨年度構築したカニクイザルの経直腸SHIV感染モデルを用いて行う。1%ヒドロキシエチルセルロース(HEC)のみのプラセボ群(3頭)と1%HEC+1%AH投与を行ったAH群(3頭)それぞれにSHI-KS661を2000TCID50の攻撃接種を行い、その後26週まで血中SHIV量とCD4+細胞数の推移を観察する。
結果と考察
(1)低分子抗HIV薬剤実用化研究:今年度新たに合成した15化合物のうち、3化合物にIC50 < 10 nMの抗HIV活性が認められた。このうちの一つの化合物(化合物G)について、ラットにて2週間反復投与したが、血液学、血液生化学検査結果を含めて、とくに重篤な毒性所見は認められなかった。T-Y化合物の阻害機序に関しては、今までの解析から作用点がインテグレーション直後から遺伝子発現初期の過程である事が明らかとなっている。本年度はより理解を深めるため、昨年度より濃度幅を広げ既存の薬剤との比較も併せて行った。その結果T-YおよびT-Y3は転写因子の活性化からマチュレーションが起こるまでの過程に作用ポイントがある事が確認された。作用起点を同定するために、多角的に解析を行いその立証を行ったが、特定の分子標的の同定には至らなかった。その強力なHIV複製阻害活性と高い選択性は間違いなく初期転写に関わる因子に作用しており、かつ複数の標的が存在していることを示唆している。今後実用化に駒を進める上で複数の動物種での反復投与による確認が必要である。
(2)AH実用化研究:AHの直腸感染予防実験の準備を行った。成熟型AHの調整法の改良を行いN末にリンカーが残っているAHの除去に成功した。PEG化修飾AHの調整、さらに抗HCV活性についても評価を行った結果、AHはHCVにも阻害効果を示すことが明らかになった。AHに関して標的はHIVのenvelope gp120の高マンノース型糖鎖であることがはっきりしており、その構造学的な作用機序も仔細に解析され明らかにされている。AHの実用化に向けての課題は、AHをどのような目的で用いるかということであり、予防剤として使用するのかあるいは治療薬剤として用いるのか熟考が必要である。
(3)霊長類評価研究:AHによる感染予防効果をサルモデルにおいて評価を行った。プラセボ群(3頭)およびAH投与群(3頭)にSHIVを攻撃接種したところ、プラセボ群では全個体がSHIVに感染したが、AH投与群の一部の個体で感染防御が認められた。
この実験結果はAHの予防剤としての可能性を指示するものである。
(2)AH実用化研究:AHの直腸感染予防実験の準備を行った。成熟型AHの調整法の改良を行いN末にリンカーが残っているAHの除去に成功した。PEG化修飾AHの調整、さらに抗HCV活性についても評価を行った結果、AHはHCVにも阻害効果を示すことが明らかになった。AHに関して標的はHIVのenvelope gp120の高マンノース型糖鎖であることがはっきりしており、その構造学的な作用機序も仔細に解析され明らかにされている。AHの実用化に向けての課題は、AHをどのような目的で用いるかということであり、予防剤として使用するのかあるいは治療薬剤として用いるのか熟考が必要である。
(3)霊長類評価研究:AHによる感染予防効果をサルモデルにおいて評価を行った。プラセボ群(3頭)およびAH投与群(3頭)にSHIVを攻撃接種したところ、プラセボ群では全個体がSHIVに感染したが、AH投与群の一部の個体で感染防御が認められた。
この実験結果はAHの予防剤としての可能性を指示するものである。
結論
T-Y化合物およびAHの実用化研究に取り組んだ。また新たな標的としていずれの研究も計画通りに進んでおり、早々に実用化の是非について結論を出したい。我々の研究班が取り組んでいる二つの候補化合物、T-Y化合物とAH、はそれぞれ「cure」と「eradication」を実現させる可能性を秘めた今までに無い新規な化合物である。
公開日・更新日
公開日
2013-08-27
更新日
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