文献情報
文献番号
201209014A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫疾患治療に資する小分子医薬創出を指向した核内受容体モデュレーターの創出と評価
課題番号
H23-政策探索-若手-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
加来田 博貴(国立大学法人岡山大学 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 大橋 俊孝(国立大学法人 岡山大学 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬探索研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は,クローン病や乾癬などの免疫疾患治療に有効な新たな小分子型医薬候補物質を創出,化合物ならびに創薬手法を提示することを目的に実施した.分子標的としては,申請者らが研究対象としてきたレチノイドX受容体(RXR)を選び,そのパーシャルアゴニストを創出し,マウスおよびラットを用いた薬効評価までを一貫して行った.平成24年度は,前年度に見出した新規RXRパーシャルアゴニストCBTF-PMNのラット28日間反復投与による副作用発現について詳細に調べた.また,CBt-PMNおよびCBTF-PMNが互いに分子構造が類似していることから,全く構造の異なる新規なRXRパーシャルアゴニストの創出を行った.さらに,自己免疫モデル動物としてNBD-Cl誘発クローン病モデルマウス,およびimiquimod誘発乾癬モデルマウスを作成し,これらにおける創出化合物の薬効を評価した.
研究方法
CBt-PMNおよびCBTF-PMNが互いに分子構造が類似していること等から,全く構造の異なる新規なRXRパーシャルアゴニストの創出を行った.具体的には,申請者らの見出していたRXRフルアゴニストであるNEt-3IP (6-[ethyl-(3-isopropoxy-4-isopropylphenyl)amino]pyridine-3-carboxylic acid)のイソプロピル基とイソプロポキシ基を互いに入れ替えたNEt-4IPをリード化合物として,そのアルコキシ基を種々変換した化合物について調べた.新規に創出したRXRパーシャルアゴニストのラット28日間反復投与を行うために,それらの大量合成を実施した後,30 mg/kg/dayでの経口投与による副作用発現について詳細に調べた.さらに,自己免疫モデル動物としてNBD-Cl誘発クローン病モデルマウス,およびimiquimod誘発乾癬モデルマウスを報告論文にしたがい作成し,これらのモデル動物に,経口投与することで創出化合物の薬効を評価した.
結果と考察
NEt-3IP をリード化合物とした構造展開により,CBt-PMNよりefficacyを弱めた新たなRXRパーシャルアゴニストNEt-4IB (6-[ethyl-(4-isobutoxy-3-isopropylphenyl)amino]pyridine-3-carboxylic acid)を見出した.ラット28日間反復投与により,CBTF-PMNはわずかながら肝肥大が認められたが,RXRフルアゴニストに比べると,明らかに弱いものであった.一方で,NEt-4IBでは顕著な副作用は確認されなかった.NBD-Cl誘発クローン病モデルマウス,およびimiquimod誘発乾癬モデルマウスを用いた創出化合物の薬効評価を行ったところ,NEt-4IBが顕著な薬効を示しながら,RXRフルアゴニストに見られる副作用発現を回避することを見出した.
結論
本研究により,研究当初に取り扱っていたRXRパーシャルアゴニストCBt-PMNよりRXRに対するefficayを抑えながら,動物モデルで顕著な薬効を示し,RXRフルアゴニストに見られる副作用発現を回避した新規RXRパーシャルアゴニストNEt-4IBの発見に至った.さらに,NEt-4IBはCBt-PMNと分子構造が明らかに異なりながら,クローン病モデルマウスでの有効性が示されたことから,RXRパーシャルアゴニストであれば一般的に副作用を回避しつつ薬効を示すことが示唆された.さらに,乾癬モデルマウスでの有効性も示唆された.
公開日・更新日
公開日
2013-09-02
更新日
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